A型、B型、AB型賃金とはなにか

国際自動車裁判で考える賃金の複雑さ」の賃金算出方法の複雑さを考えてみました。国際自動車だけではなく、ハイタク業者の賃金はどこも解かりにくいようです。これから数回に分けて、タクシー運転手の賃金について考えてみます。

「うちは歩率70%だから良いぞ」とか「ボーナスがあるからうちの会社のほうが良いぞ」なんて会話を待機場で聞きます。しかし、実はそうでもないことがあります。例えば、制度の外装だけで判断すると大きな落とし穴があります。なんてこともあるのが、業界の賃金制度です。

前回前々回とその「自発的な労働を彼らから引き出すかを基本的な考えとして設計されてきた『知恵の結晶』」として複雑化した賃金について考えました。そして、今回からは少しだけ掘り下げて、仕組みや内容を考えてみたいと思います。

タクシー運転手の賃金体系

賃金体系は、これまで以下のように、A型、B型、AB型に3つに分類されてきました。

  1. A型賃金:基本給+諸手当+歩合給+賞与+退職金
  2. B型賃金:基本給+諸手当+歩合給
  3. AB型賃金:基本給+諸手当+歩合給+賞与

2のB型賃金を「完全歩合給」としているサイトや書籍もあります。ただ、完全歩合給であっても最低賃金は支給されます。そのことを考えると、基本給+諸手当の部分を最低賃金と置き換えると2のB型賃金も完全歩合給と言えます。

賃金算出方法の一例

完全歩合給は、足切がないので売上×歩率になります。

600,000円×50%=300,000円

歩率が同じ50%でも、足切基準額のある歩合給は(売上-基準額)×歩率+基本給部分になります。か

600,000円-400,000円=200,000円

200,000円×50%=100,000円(歩合給部分)
150,000円(基本給部分)+100,000円=250,000円

このように売上が同じ600,000円で、歩率50%でも、50,000円の賃金差がでます。

実際には、周辺のタクシー会社と同調させていて、これほどまでの違いはないでしょう。歩率の多寡がそのまま賃金に反映されにくい、というのが歩合給の特性です。

1、2、3、これら賃金体系は、基本給+諸手当+歩合給に賞与と退職金が付くか付かないかだけ、のように見えます。しかし、この基本給、諸手当、歩合給の算出方法が複雑で、中には違法なものまであり、裁判になることがあります。そのことを「国際自動車裁判で考える賃金の複雑さ」で解説を試みました。

賞与や退職金

例えば、賞与や退職金があるほうが良いじゃないか、と思う人もいるかもしれませんが、その賞与や退職金も、歩率で調整されプール金として、つまり、50%の歩率を45%に抑えて、5%を賞与と退職金に当てている会社もあるようです。

さらに、その賞与に対しても歩率で支払っている会社もあって、難解な月例給がさらに難解になってしまっている、そんな声も聞かれます。これも知恵の結晶、いえ、もう魔法としか言いようがない、と思っています。

賞与や退職金については、乗務員の定着率を上げ、離職率を下げていることも確かです。しかし、これが「不良社員の居残りの原因になっている」という経営者の声もあります。さらに、退職金制度は定年制とセットで存在するので、定年延長を困難にしている原因にもなっています。

新しいタクシーの賃金体系

一般社団法人東京ハイヤー・タクシー協会編纂の「労務委員会編ではタクシー事業者のためのモデル終業規則」では、これまで説明されてきた3類型とは別に、基本給のあるⅠ型と、基本給のないⅡ型として、以下のように分りやすく5つに分類しています。

  1. Ⅰ-① 一律歩合給制(Ⅰ型 基本給がある)
  2. Ⅰ-② 積算歩合給制(Ⅰ型 基本給がある)
  3. Ⅰ-③ 累進歩合給制(Ⅰ型 基本給がある)
  4. Ⅱ-① オール一律歩合給制(Ⅱ型 基本給がない)
  5. Ⅱ-② オール積算歩合給制(Ⅱ型 基本給がない)

次回からは、この類型をもとに、賃金についてもう少し考えてみたいと思います。

下の図は、Ⅰ-①一律歩合給制、Ⅰ-②積算歩合給制、Ⅰ-③ 累進歩合給制をグラフ化したものです。一律歩合給制のグラフには分かりやすいように基本給部分、最低賃金部分、歩合給部分を色を変えて分けています。次回からはこれらの図表を使い、さらに考えていきたいと思います。

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一律歩合給

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積算歩合給

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累進歩合給

タクシー事業における賃金システムに関する提言

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