都知事選とタクシー業界
都知事選で起きたタクシーの労働組合とその上部組織のことを少し考えてみます。
その前に、タクシー運転手の労働組合は大きく分けて、日本労働組合総連合会(以下連合)1、全国労働組合総連合(以下全労連)2、全国中立労組政策推進会議(以下全中連)3の3つの産業別労働組合と、それらに属さない企業内労働組合があります。
その組合員数は、連合系が最も多く45.2%になります。次いで、企業内と全中連を合わせて42.9%、全労連系が11.9%です。そのうち全国自動車交通労働組合東京地方連合会(以下全自交東京)は18565人、21.6%という組合員数で、最も大きい組織と言えます。
労働組合組織実態調査結果 一般社団法人 全国ハイヤー・タクシー連合会
今回の都知事選で、その連合傘下である、連合東京と全自交東京で支持候補が異なるという「事件」が起きたのです。「事件」ではなく「反乱」と言えるかもしれません。
連合VSタクシー
連合東京は小池百合子氏を支持し、全自交東京は蓮舫氏を支持しました。連合東京が告示前の6月19日に「小池百合子支持」を打ち出しました。それに対抗するように、全自交東京は翌6月20日に蓮舫氏支持を表明しました。
連合が小池知事を支持したのは「共産党と連携する蓮舫氏への不信感」4という見方が多いようです。それに国民民主党を支持する連合内の(芳野会長の出身JAMを含む)産別を無視することもできなかったのでしょう。
全自交が蓮舫氏を支持する理由
都知事選で、タクシー業界の組合である全自交東京が蓮舫氏を支持した理由は「ライドシェア」にあります。立憲民主党はライドシェア反対の立場です。特に、蓮舫氏の盟友である辻元清美氏はタクシー議連の会長であり、ライドシェア反対を(強く)主張しています。つまり、蓮舫氏も反対派ということです。
ところが国民民主党の玉木代表などはライドシェア推進派です。さらに、小池氏を推薦する自民党の茂木、河野、小泉、菅…、主流と言われる人たちも同じく(超)推進派です。
それが「それ(ライドシェア全面解禁)を推進・同調する政党の支持する候補者を応援することは有り得ません」という文言になった理由です。
「期限を設けない検討はあり得ない」小泉進次郎議員が、岸田総理にライドシェア“全面解禁”に向け「年内に結論を」訴える | TBS NEWS DIG
SNSでは「蓮舫氏はなぜ(ライドシェア反対を)明言しないのか」という意見もありましたが、それが選挙なんです。「察してください」ということなんです。そして、全自交東京のこのメッセージも同じなのです。ボクは「こんなことさせんなよ」と思いながら、タクシー業界の弱さを感じました。
都知事選とタクシー
さて、都知事選は小池氏の圧勝という結果になりました。
今後、小池氏が(応援してもらった)自民党の政策に反対できるのでしょうか。
選挙があるたびに、都知事として自民党を応援するのではないでしょうか。加えて、最後の4年です。次の選挙には出ないでしょう。それが、小池氏を独善的で独裁的な政治にさせはしないですか?
つまり、全自交労連の1万8000人なんて少数派は「排除」されはしないかと心配するのです。(UAゼンセン177万人、自治労79万人、自動車総連78万人、電気連合57万人、JAM39万人)
小池氏の応援する、自民党の総裁選で、茂木 敏充氏、河野太郎氏、あるいは菅氏返り咲き、まさかの小泉進次郎氏、誰がなってもライドシェアは全面解禁に向かって一気に加速するでしょう。
という、タクシー運転手にとっては一大事な選挙だったのです。だから、全自交が反乱を起こしてまで「蓮舫支持」を表明したのです。
産業別労働組合の問題
産別の上にさらに組織がある。産業が違うと利害相反することもあるでしょう。選挙においては、そのことが先鋭化するでしょう。ただね、そこを調整しないと、なんとなく後味が悪くはなりませんか?
都知事選では、芳野会長嫌い、連合嫌いが増えたかもしれません。
いえ、それ以上に、組合に対して「意味ねえ」なんて言ってる人も…。これが組織率の低下の原因だと思います。
「意味ねえ」
「組合費高え」
「賃金上がらねえ」
そして
「ライドシェアも反対できねえ」
なのです。