実車率 53%は供給不足なのか?

実車率とは、実車距離/走行距離です。タクシー利用者が乗車してメーター走行した距離/全走行距離ですから、この数値が高いほど高効率だとも言えます。例えば、駅の待機場所からA地点まで行き、そこからまた駅に戻ると、実車率は50%になります。

その実車率、タクシー事業では53%が「もっとも運送効率が高い状態1と言われています。そして、53%を超えると供給不足になるとも言われています。

今回は、この実車率53%について考えてみます。

実車率53%という効率の悪さ

地方の客待ち等の営業形態の場合

この53%(正確には52.8%)と言われる数値は、実はそれほど高いものではありません。最初に述べたように、駅→目的地→駅で50%になります。地方の営業方法、いわゆる「客待ち等の営業形態」では、需給量に関係なく常に50%程度になります。ですから、地方のタクシー事業では時間実車率、つまり、時間の概念を取り入れます。

タクシー実車率50%イメージ図

都市部の場合

また、都市部の市場も大きく変化しています。これまでの流し主体という営業形態に、アプリでの配車が急増しています。このことから、以前よりも実車率が高くなる傾向にあります。

実車率100%の時代

配車アプリの普及を背景に、実車率はさらに高くなります。そして、最終的には100%にしようと考えます。それは無理、という人も多いでしょう。しかし、下の図を見てください。これだけのことなのです。タクシーのDX化の最終着地点はこういう形でしょう。AIによる予約と予測による配車主体の営業方法による超効率化です。

これにより、次のことが実現します。

  1. 走行距離の短縮
  2. 事故の削減
  3. 燃費の削減(GX化)
  4. 労働時間の短縮
  5. 全体の経費の削減

タクシー実車率100%図

距離から時間実車率へ

つまり、配車アプリが実車率を押し上げている現状では、53%の信ぴょう性も低くなります。

いえ、違った見方をすれば、空車率が低くなっている/なっていく状況では、この数字はもう使えないのではないではないでしょうか?

時間実車率という考え方

そうなると、距離ではなく、稼働時間に対する実車時間、時間実車率という考え方が需給量や経営効率を考える上で重要になっていると言えます。

実車率の問題なのだ実車率の話をしたいと思います。 結果から先に言うと、タクシーの収益には実車率が重要な要素になります。 稼働時間に対する実車率(実車時間/稼働時間)、稼動距離に対する実車率(実…
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実車率の問題なのだ

53%だから足りない、ということではなく、その数値は変化しているのではないか?ということを多角的に再度検証する必要があるのです。

太田和博先生の「タクシー運賃の規制制度と課題」2が発表されたのが2014年です。この論文に53%が出てきます。もう10年前です。一昔前から、ずいぶんとタクシー事業は変化してきたと思うのですが、それでもまだ53%なのでしょうか?

55.7%、44.3%、48.5%

さて、最後に、過去のデータを見てみます。

1989年、バブル絶頂期にはタクシーの実施率は55.7%でした(株価も史上最高値でした)。これが2001年には44.3%になります。規制緩和されてからは、42%〜43%台です。そして、コロナ禍で39%になりました。

それが、コロナ禍後の2023年3月には48.5%まで回復しました。しかし、この数字でも「タクシー不足」「ライドシェア解禁」になっていきます。48.5%でタクシー不足なのです。

 

タクシー 実車率推移

 

実車率、実働率、運転者収入の変化

タクシー不足には、そしてタクシー事業の経営は、実車率だけではなく実働率が関係します。その上で、いったいどれくらい不足しているのか、その目安は、となると、やはりマッチング率、それも、時間を加味したセッションベースでの算出しかないのか、なんて考えているところなんです…。

  1. 太田和博(2014)「タクシー運賃の規制制度と課題」『運輸政策研究 Vol.19 No.4 2017 Winter』運輸総合研究所
  2. 太田和博(2014)「タクシー運賃の規制制度と課題」『運輸政策研究 Vol.19 No.4 2017 Winter』運輸総合研究所

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