閣議決定はライドシェア全面解禁に「慎重」なだけです
「ライドシェア全面解禁に慎重」という政府の閣議決定ですが、これは立憲民主党の水野素子参院議員提出の「ライドシェアに関する質問主意書」に対する答弁書の内容が閣議で決定された、ということです。
よって、ライドシェアが解禁されない、ということではありません。
運行管理なしの参入否定 ライドシェア全面解禁に慎重―政府:時事ドットコム
政府は2日、一般ドライバーが自家用車を使い有償で客を運ぶ「ライドシェア」について、IT事業者などの参入も認める全面解禁に慎重な立場を重ねて示した。同日の閣議で決定した答弁書に「運行管理や車両整備に責任を負う主体を置かないまま運転者のみが運送責任を負う形態は、安全の確保、利用者の保護等の観点から問題があり、導入すべきではない」と記した。
その「ライドシェアに関する質問主意書」で、3つの質問をしていました。その中の「二」に対しての見解だと思われます。1
二 自家用車などによる白タクだけでなく、タクシー会社と異なり運転手や車両の管理責任を負わない「プラットフォーマー」などが運営するライドシェアは、海外で事件・事故が多発しており、導入すべきではないと考えるが、政府の見解を示されたい。
この閣議決定と、今後のライドシェアについて考えてみます。
閣議決定の内容
閣議決定の内容は次の通りです。2
二について
お尋ねの「運転手や車両の管理責任を負わない「プラットフォーマー」などが運営するライドシェア」も含めて、運行管理や車両整備等について責任を負う主体を置かないままに、自家用自動車の運転者のみが運送責任を負う形態の有償の旅客運送については、安全の確保、利用者の保護等の観点から問題があると考えており、導入すべきではないと考えている。
運行管理や車両整備の責任
つまり、責任主体が存在すれば、現在行われている日本型ライドシェアを拡大できる、との解釈が可能です。
さらに、「自家用自動車の運転者のみが運送責任を負う形態の有償の旅客運送については…導入すべきではない」ということも同じです。運行管理と車両管理を負う責任主体が存在すれば、日本型ライドシェアを離れることも可能になります。
今後のライドシェアの動き
国交省は6月28日に「日本版ライドシェアで雨天時のタクシー不足の解消を目指します!~日本版ライドシェアのバージョンアップの実施について~」を発表しました。3
これにより7月から「時間5mm以上の降水量が予報される時間帯に日本版ライドシェアの車両を使用可能」になりました。
確かに、雨が降るとタクシーが「傘」になるので需要が逼迫します。そのため供給不足解消の一手かもしれません。しかし、これも呼水になってさらに大きくなリマス。
つまり、この手を使っても不足は解消されません。そして、マッチング率が90%を超えることはありません。足りない状態が続きます。さらに、次は、猛暑日バージョン、台風や雪の日…。
自民党総裁戦
今回の回答をした内閣も9月には終わりそうです。そして、仮にライドシェア推進派と言われる茂木氏、河野氏が総裁になると、一気にバージョンアップされるはずです。
誰がなろうとも、「日本型」という小さく生んだライドシェアは、「バージョンアップ」という栄養を摂り、成長しています。
タクシー不足と公共の福祉、という大義が成長を促します。そして、もう元には戻りません。
結局、運行管理、車両整備という課題をクリアするために、保険会社やIT企業等の他業種の参入が始まります。配車アプリ、プラットフォーマーだけが儲かる仕組み、ではなく、最大多数の最大幸福、となるのではないでしょうか…。