newmoが岸交と提携した理由
newmoが岸交と提携した理由は、タクシー事業とライドシェア事業の展開です。それには、大阪市域交通圏の改正タクシー特措法1の準特定地域指定解除が必要です。
なぜならば、指定解除されると増車が可能(届出制)になります。そうなると、今は「40台しかない」車両数を、100台、200台…。資本力を持って増やすことができます。
さらに、配車アプリが普及すればするほど、タクシーが選べるようになります。そうなると、市場の寡占化が始まります。
これまでは、タクシーの自由化による供給過剰は、いろいろな弊害を引き起こすと言われていました。ところが、選ぶ時代は寡占や独占を可能にします。企業淘汰により、共有地の悲劇は起こらず、私有地になる、ということです。
もう少し踏み込んで、newmoが岸交と提携した理由、目的について考えてみます。
newmoが岸交と提携した理由
準指定解除後の増車とライドシェア事業の展開
これまで述べてきたように、解除後の増車は行うでしょう。そして『「タクシー事業」と「ライドシェア事業」の双方を展開』を始めます。2
さらに、全国展開、しかし、その前に一つだけ問題があります。それは、ライドシェアが解禁されなかったら、ということです。
日本型ライドシェア(NRS)への参入
日本型ライドシェアは解禁されましたが、TNC(Transportation Network Company)サービス型の解禁は不透明な状況です。TNC型の解禁に至らないことも考えられます。そうなると、全国展開も困難になります。
なによりも、現行法の営業圏が大阪の外に出ることを拒みます。さらに、急激な増車による供給過剰の影響が出ないことはないでしょう。つまり、大阪だけ、岸交の営業区域だけでしか動けません。そうなると、酸素欠乏になってしまいます。全国展開が困難になるだけではなく、倒産ということも考えられます。
規制改革推進会議の答申
newmo新法
大阪でしか展開できない場合、酸欠状態になることはnewmoの青柳氏も予想しています。その対処法が、実は「規制改革推進会議の答申」の中にあります。
それがnewmo新法、この酸欠状態になることを防ぐ法律の改正です。
移動の足不足を解消できない場合は、令和6年10月1日以降、タクシー事業者(当該営業区域と同一の都道府県内であって当該営業区域と隣接していない区域に営業所を有し、又は同一の都道府県と隣接する都道府県内に営業所を有するタクシー事業者(ただし、輸送の安全又は旅客の利便の確保に支障を及ぼすおそれがあると国土交通省が認めるタクシー事業者を除く。))について、当該営業区域における自家用車活用事業への参入を可能とすることとし、令和6年7月に通知等の所要の改正を行うとともに、適切な周知を行う。
隣接地域への参入
まとめると、ライドシェア(TNCサービス型)の解禁がなかった場合、次のタクシー会社の日本型ライドシェアの運行を可能にします。
- 移動の足不足を解消できない場合
- その営業区域と同じ都道府県
- 隣接していない区域に営業所があるタクシー会社
- その営業所がある都道府県と隣接する都道府県
- 営業所のあるタクシー会社
- その営業区域と同じ都道府県
つまり、大阪に営業所のあるnewmo岸交は、兵庫県、京都府、奈良県、和歌山県での自家用車活用事業(NRS)参入が可能になるということです。
だから、newmo新法なのです。
newmo岸交の野望
交通権の問題
規制改革推進会議の答申では「(国交省は)令和6年7月に通知等の所要の改正を行うとともに、適切な周知を行う」としています。7月に道路運送法の改正が行われた場合、移動の足不足の地域にnewmo岸交のタクシーが近畿圏内を走ることになります。
それは、移動権の確保、地域の足不足には良いことかもしれません。そして、自家用自動車活用事業へ参入しない事業者、不足車両数を満たすことができない事業者、つまりタクシー業界の怠慢でもあります。
それに、業界外の人たち、一般の方たちの気持ちは「あったら良いよね」です。それも「いっぱいあったら良いね」なんです。加えて「安いほうが良いね」です。
多くの人は「他人事ではないが、自分ごとではない」というのが本音でしょう。タクシーが来ない過疎地では、日本型だろうがアメリカ型だろうが歓迎されます。
タクシー業界の課題
というところで、全国ハイヤー・タクシー連合会川鍋会長の「そうやって全員の力でタクシー業界が必死に汗をかいて、自分たちで地域の足を守るんだという気概を見せてこそ闘える。いつまでも文句ばっかりで動かないというのでは困るんです。そしてその前にオンデマンド交通でも良い、お出かけ交通でも良い、やってほしい。そしてタクシー乗務員を増やしてほしい3」が聞こえてきます。
もう、遅いかもしれません。そんな気もします。newmo、確かに新しいモビリティ、New Mobility vs Old Mobility ということなんでしょうね……。

