積算歩合給について
2.Ⅰ-② 積算歩合給制(基本給のある)について
前回の一律歩合給制につづき、今回は積算歩合給制(Ⅰ型 基本給がある)について考えてみます。
図2は基本給のある積算歩合給をグラフ化したものです。
この図は1‐①と同じく基本給150,000円、基準額500,000円です。その500,000円を越えた分についての歩合給が積算方法によって算出されます。
下の「表1 図2積算歩率」表の歩率で算出します。すると賃金カーブが図1のように直線を描くのではなくて、基準額変更点で段階的に上昇します。(「段階的」が解かりにくいので、下にイメージ図を掲載しています)
図2を解かりやすいしたのが「図2-3 積算歩合給イメージ図」です。
この図表の基準をもとに、基本給が150,000円で売上が800,000円だった場合の賃金を計算します。
売上600,000円までは歩率50%の歩合給①、700,000円までには歩率60%の歩合給②、800,000円までは70%歩合給③に設定しています。
積算歩合給制 計算例
(600,000-500,000)×50%=50,000円 歩合給①
(700,000-600,000)×60%=60,000円 歩合給②
(800,000-700,000)×70%=70,000円 歩合給③
- =50,000+60,000+70,000
- =180,000円 歩合給
- =150,000円+180,000円
- =330,000円
になります。ちょうど図2-3の青いグラフの部分です。
売り上げが高いほど有利な仕組み
これは、非常に高い歩率のように見えます。しかし、売上800,000万円周辺までは、前回の一律歩合給制の歩率50%とあまり変わりません。このように、高営収のドライバーには有利な設計になっています。つまり、歩合給制本来の意図するところで、タクシー会社の思惑と一致する制度なのかもしれません。
タクシー会社の経営は、ドライバーひとりひとりの売上、営業活動にかかっています。しかし「事業所外の労働で、かつ、営業活動まで運転者にゆだねている」ので、どうしても営収差が出ます。ですから、会社は、やる気のないドライバーに対しては「どうしてくれよう」「どうしたらやる気をおこしてくれるか」を考えます。その結果、いろいろな施策をしている、そう言えます。「いかに自発的な労働を彼らから引き出すか」ということです。
賃金設計の工夫
そのため支払い賃金設計を工夫しました。そして足切、ノルマ、というものを設定しました。しかし、全てのドライバーが自発的な営業をするとは限りません。それどころか、消極的、能動的なドライバーに対して、例えば売上0円でも最低賃金は支払わなくてはなりません。
B型は固定給がなく、営業収入に対する一定の歩合給だけが支払われる方式で、完全歩合ともいわれます。営業収入がゼロの場合は、賃金はゼロです。当然ですが。
なんてことは、ないはずです。
営収の高いドライバーに対しては歩率で優遇します。それも売上に累進するような仕組みのほうが、正しいと考えています。ところが、累進する仕組みの累進歩合給は廃止されて(廃止される方向になって)います。
その累進歩合給については、次回考えてみます。
国土交通省の「タクシー運転者に係る賃金規制の概要 」に掲載されている図も併せて掲載しておきます。
これによると、積算歩合給制は「運賃収入等を数区分し、区分毎の歩率が変動(一般的には逓増する。)し、歩合給は各区分間の運賃収入等にその対応する比率を乗じた金額を合計する制度」と説明されています。基準額変更点(B、C)での急激な賃金変化はないにしろ、その地点周辺になると頑張ってしまうドライバーが多くなるようです。