タクシー運転手の賃金について

タクシー運転手の賃金は歩合給であることが多いです。そしてその仕組みは複雑です。

これは、事業所外の労働で、かつ、営業活動まで運転者にゆだねていることから、いかに自発的な労働を彼らから引き出すかを基本的な考えとして設計されてきた「知恵の結晶」ともいえる(「総合研究 日本のタクシー産業」p133)

どういうことかというと、

「事業所外の労働で、かつ、営業活動まで運転者にゆだねている」

この「運転手にゆだねている」ということが、タクシー運転手が自由だと言わる所以です。例えば、出勤し出庫したらひとりです。そして、駅の乗場に行こうが海の見える港に行こうが運転、いや、タクシーの中にいれば「営業活動」という労働をしている/しているとみなされるます。

「いかに自発的な労働を彼らから引き出すか」

このように、自由なのです。そして、一日中タクシーの中で寝ていて売上0円の人もいます。ですから、少しでも売上を上げるようにするために知恵を絞ったのが今の賃金制度、と言えます。その知恵が複雑な歩合給として業界を潤しました。そしてまた業界を腐敗させる宿痾として今に及んでいます

例えば、

働きたくない人たち

月給制の固定給で乗務していたAさんという運転手がいるとします。そのAさんが、駅の乗り場でロング(長距離)のお客様をお乗せしました。おおよそ3万円の距離です。

歩合球で働いている運転手ならば「よっしゃ~、これで15,000円ゲット(歩率50%の場合)」と喜ぶところです。ところが固定給月給制のAさんは「お客様、わたし、勤務時間が終わりますので、後ろの車にお乗りください」と、他社のタクシーに譲ったのです。

また違う例では、1時間待って駅の乗り場の先頭に来たのですが、その直後「17時になったんで帰ります」と帰庫してしまいました。

忙しい時間に休憩をする人もいます。「事業所外の労働で、かつ、営業活動まで運転者にゆだねている」ことから起因する損失です。性悪説に基づいた歩合給というよりも罰則給になってしまったのが現在のタクシー業界の賃金なのです。

つづいて、タクシー運転手の賃金がどれほど複雑か、次に考えてみます。

参考:特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法等の一部を改正する法律の附帯決議を踏まえた累進歩合制度の廃止に係る指導等の徹底について

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