ライドシェア問題、タクシーは生き残れますか?

ライドシェア問題を、タクシー運転手、労働組合、事業者の立場で概観してみます。

タクシー運転手とライドシェア問題

タクシー運転手と言っても、地域や雇用関係によって相違があります。それで、都市、地方、個人タクシーに分けて、それぞれの立場で考えてみます。

都市部の運転手

もっともライドシェアの影響を受けるのは都市部のタクシー運転手です。ライドシェア解禁を脅威に感じているはずです。なぜならば、供給量が増えるからです。供給量の増加は実車率を下げ、収入の減少につながります。

運転手の本音はライドシェアを含めて常に「運転手不足のほうが良い」と思っています。効率よく稼ぐためにも「タクシーが足りないほうが良い」のです。

地方の運転手

地方の運転手も影響を受けますが、都市部ほどはありません。影響度は、営業区域の人口が多くなれば増します。なぜならば、人口=需要量=賃金だからです。

賃金が最低賃金×労働時間に近い運転手も多いでしょう。それに、過疎地では時間給や、最賃に近い固定給で乗務しています。仮にライドシェアをする人がいたとしても、需要が少ないため「小遣い稼ぎ」程度になるはずです。つまり、タクシーには影響が少ない/ない、そう考えることができます。逆に、タクシー運転手の中には、アルバイトができると喜ぶ人もいます。地方は利用者も賃金も、そしてアルバイトも少ない、からです。

個人タクシー

影響を受けるのは都市部の法人事業者に雇用されている運転手だけではありません。個人タクシー運転手も同じです。おそらく、ライドシェアドライバーとして収益化できるのは、個人タクシーが開業できる地域1になるでしょう。となると、個人タクシーが開業している地域=ライドシェア主戦場となるはずです。

これまで規制されていた競合他社(台数)が増える、そのことは、法人タクシー運転手よりも個人タクシー事業者のほうが脅威に感じているはずです。

以上、運転手では都市部で、特に個人タクシーがライドシェア解禁の影響を受けます。(地方部での開業許可と80歳定年延長という施策はこの対策かもしれません)

労働組合とライドシェア問題

これも、地方と都市部では温度差があるでしょう。地方の労働組合は、形だけは上部組織に同調しますが、気持ちは「どっちでも」かもしれません。なぜなら地方だからです。理由は運転手と同じです。

労働組合も出来高制の組合費で活動をしています。ですから、問題はタクシー運転手の減少です。組織率が低下傾向にある現状で、さらにに出来高が少なくなります。

しかし、ライドシェアドライバーを組織化できれば、それはそれで「あり」と思うかもしれません。

タクシー事業者

ライドシェアが解禁されるのは、神奈川モデル2のように、タクシー会社の管理運営する方法です。それは、すでにある「事業者協力型自家用有償運送」の地域を拡大することで今でも可能です。

この神奈川モデルは黒岩知事の新しい考え方ではありません。以前から言われ考えられていたことです。タクシー協会の川鍋会長も同じような方向で考えています。例えば、2種免許取得要件緩和、地理試験解除、GO Crewという迎車専門の運転手。ライドシェア対策は、タクシーのライドシェア化だったのです。3

なぜなら、タクシー事業存続のためです。そして、タクシー事業者の収益の最大化と事業継続のためです。それにはライドシェアは都合の良いツールなのです。理由は、ライドシェア解禁により(タクシーを含む移動サービスの)運転手が増えるからです。つまり、全ての移動サービスをタクシーが仕切ることになります。タクシー会社は実働率を増加させることができます。

鵜飼の鵜を増やし、漁獲量を増やす、ということです。その鵜への賃金は安いほうが良いのです。

次にタクシー事業の今後を少し考えてみます。

タクシー事業は永遠です

配車アプリやカーナビの進化がライドシェアを可能にしました。Uber反対からタクシーをライドシェア化しようとしたこの国のタクシー事業は、すでに「誰が運転するか」だけの問題になっているのです。

労働集約型産業であるタクシーでは、原価構成比の70%近くを人件費が占めます4。その人件費をいかに抑えるかが、これまでも、そして、これからも課題なのです。とすると、雇用関係のないライドシェアドライバーを歩合給で雇用する、この労働ダンピングの方法が最適なのです。

タクシー事業の目標は、自動車による移動サービスの一元化なのです。ドアツードア、ワンマイルの移動全てがタクシー事業のものになります。(GO化と言ってもいいでしょう)

そして、その後は自動運転です。つまり、どう転んでも(大手)タクシー会社は生き残るのです。ですからタクシー事業者は、ライドシェア問題をそれほど深刻に考えていません。今よりも儲かるはずです。70%の人件費を50%に抑えるだけで良いのですから。

以上、3者の立場で考えてみました。いずれにしても、タクシー事業は存続します。そしてその移動サービスはさらに発展するでしょう。ただ、運転手のタクシーバブルは消えます。10年後、タクシー運転手はどうなっているかは、わかりません。

どう考えても、ライドシェア、あるいはライドシェアのようなものは、解禁されます。だってタクシー不足も永遠だからです。

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10月9日13時の豊橋駅タクシープール ライドシェア問題

自家用有償旅客運送ハンドブック 国土交通省

  1. 開業要件として、人口30万人以上がある
  2. 「神奈川版ライドシェア」県が検討 タクシー不足で地域・時間限定で:朝日新聞デジタル
  3. ライドシェアの始まり
  4. 運賃値上げと運転手の賃金について – タクシー業界

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