昔話

田原にて

田原にて

2016年3月2日
真夜中、ボクはぼんやりとあの頃のことを想い出していた。 駅周辺は切ないほど深刻にその頃とボクたちの距離を遠ざけていた。 あの日の夕方、ボクが座っていたベンチも、キミが哀しみの涙を流していた駐車場も、いまは遺跡のため息の中[…]
タクシードライバー

タクシードライバー

2016年2月27日
美雪は2学年下でボクの通っていた高校から少し離れた同じ市内の商業高校で、そんなに楽しくもない毎日を送っていた。 思春期の女性の自意識からのものではなくて、育った環境からなのだろう、いつも下を向いて恥ずかしそうに、聞き取り[…]
ethiopia1987

ethiopia1987

2016年2月20日
ボクたちはkenya国境沿いの街、ethiopiaのmoyaleにいた。 正確にはその街の警察に拘束されて取り調べを受けていた。 ボクもMもかなり不利な状況であることは分かっていたのだけれど、撃たれたりはしないだろうと思[…]
10年

10年

2016年2月13日
2006年2月に田原にやって来て10年が過ぎた。 そうしてこのブログを書き始めて10年が過ぎた。あたりまえのことなんだけれど、10歳老いた。老いた、という表現を使うような年齢になった。 2006年2月、リーマンショックの[…]
命日

命日

2016年2月8日
父の命日に母親から荷物が届く。 米とか乾麺とか餅とか・・・。 「ちゃんと食べているのか」、父親の口癖だった。ボクたちが子供の頃には、結婚式やお祝いの席の料理を持ち帰ってくれていたりもした。 「届いたら電話をください」とい[…]
初雪や

初雪や

2016年1月20日
疲れすぎて眠れない夜、いつもの窓の外には垂直の時間が流れている。時間という過去に沿って雪も落ちてゆく。 2008年2月9日の雪の日にボクは豊橋市内を歩いていた。今住んでいるこのアパートの契約のために田原駅から渥美線に乗っ[…]
寝台列車

寝台列車

2015年8月27日
昔の駅弁の、あの杉の木かヒノキの木を模造した箱は、今と違って米粒がずいぶんとくっ付いて、というか、こびりついていて、食べにくかった。お米の炊き方が変わったのかもしれないけれど(コンビニのおにぎりのように食用油を足して炊く[…]
ひきこもりのボクへ

ひきこもりのボクへ

2015年8月24日
東京のホテルでボクは眠れないでいた。過去のことが次々と想い出されて、そうしてそれを現在と言う端切れでかけつぎをする、そんな作業のようなことを繰り返していた。隅田川の近くのホテルだった。 旅に出たとしても、ほとんど日常の生[…]