自家用車活用事業の制度について

いよいよ、日本型ライドシェアと言われる「自家用車活用事業の制度」が4月から始まります。その方針について国土交通省から発表がありました。

自家用車活用事業の制度を創設し、今後の方針を公表します。

短くまとめると

  1. 国土交通省が指定した地域時間帯で
  2. 2年以上無事故の人が
  3. 年次検査を行い、道路運送法の保安基準」に適合する車両で
  4. タクシー会社の運行管理と
  5. タクシー会社の運送責任の下
  6. 管理者、遠隔での点呼、車両点検を行い
  7. 発着地確定の事前確定運賃のキャッシュレスで
  8. 区域内営業で利用者を運送する

になります。

その「自家用車活用事業の制度」について、もう少し詳しく概観してみます。最初に通達文を項目ごとに引用し、その後ろにボクの解説を書いてみます。

1.許可申請手続

自家用車活用事業に係る許可申請手続は、同事業を実施しようとする法人タクシー事業者(以下「事業者」という。)が行うものとし、許可申請書は、別紙「様式1」の申請書を管轄の運輸支局長 (運輸監理部長及び陸運事務所長を含む。)あてに提出するものとする。

別紙「様式11を使い、事業者が申請します。添付書類についても、別添されています。この申請書を記入するにあたって、次の「2.許可基準」を満たし、数値を挙げることが求められます。

自家用自動車有償運送(自家用車活用事業)許可申請書

2.許可基準

上記1.の許可申請があったときは、以下の基準に適合するかどうかを審査し、適合する場合にあっては、公共の福祉を確保するためやむを得ないものと認めて許可するものとする。

(1)対象地域、時期及び時間帯並びに不足車両数

タクシーが不足する地域、時期及び時間帯並びにそれぞれの不足車両数を、国土交通省が指定 していること。

(2)資格要件

法第4条第1項に基づき、一般乗用旅客自動車運送事業の許可を受けていること。

(3)管理運営体制

①運行管理規程に、下記(ア)~(エ)の事項が記載されていること。

(ア)事業用自動車及び稼働させることが可能な自家用車の合計が5両以上の営業所において は、当該合計車両数の40両ごとに1名以上の有資格の運行管理者が選任されていること。

(イ)運行管理を担当する役員等が選任され、運行管理に関する指揮命令系統が明確であるこ と。

(ウ)点呼、指導監督及び研修が実施される体制が確立され、設備が備えられていること。

(エ)事故防止についての教育及び指導体制が確立され、かつ、事故の処理及び自動車事故報告規則(昭和26年運輸省令第104号、以下「事故報告規則」という。)に準じて行う報告等の責任体制その他緊急時の連絡体制及び協力体制が確立されていること。

②自家用車活用事業に係る運転者(以下「自家用車ドライバー」という。)に対し、旅客自動車運 送事業運輸規則(昭和31年運輸省 令第44号、以下「運輸規則」という。)第36条第2項、第38条及び第39条に定められたものと同等の指導等を行う体制が確立され ていること。

③整備管理規程に、自家用車活用事業に用いる自家用車の整備管理体制に関する事項が記載されて いること。事業用自動車及び 稼働させることが可能な自家用車の合計が5両以上の営業所においては、原則として、常勤の有資格の整備管理者が選任されてい ること。

④輸送の安全上支障のないよう、自家用車ドライバーの他業での勤務時間を把握すること。

(4)損害賠償能力 自家用車活用事業について、対人8,000万円以上及び対物200万円以上の任意保険若しくは共済に加入していること又は運行業務開始までに加入する具体的な計画があること。

対象地域、時期及び時間帯並びに不足車両数は、

  1. 営業区域(営業が認めれれている交通圏になります)
  2. 時期については、国土交通省の指定されている期間です。そして、この事業が2年間ですので、最長2年間です。
  3. 時間については、「国土交通省の指定している」時間になります。
  4. 不足車両数も同じです。

つまり、「タクシーが不足する地域、時期及び時間帯並びにそれぞれの不足車両数」という限定的なものになります。4月からは、東京、京阪、名古屋、京都の4地区で始められます。その後、4月中に指定地域や不足する時間や車両数を算出・公表します。その地域が、以下の8地域です。

  • 札幌交通圏
  • 仙台市
  • 県南中央交通圏(埼玉)
  • 千葉交通圏
  • 大阪市域交通圏
  • 神戸市域交通圏
  • 広島交通圏
  • 福岡交通圏

3.許可に付する条件

許可に当たっては、以下の条件を付するものとする。

(1)使用する自家用車について

1事業者ごとに使用可能な車両数は、地方運輸局長等が通知する範囲内であること。通知する車両数は、許可地域ごとに2.(1)の車両数の範囲内であり、かつ、営業所の事業用自動車の車両 数(許可対象地域の営業所の車両数が著しく少ないなど、地方運輸局長等が必要と認める場合に ついてはこの限りではない。)の範囲内とする。

2事業者は、契約関係にある自家用車ドライバーが自家用車活用事業の用に供する自家用車を登録 し、同車両(以下、登録車両という。)に係る情報を適切に管理すること。なお、登録車両の数に制限は設けない。

3自家用車活用事業の用に供する間、自家用車活用事業の用に供する車両である旨を自家用車の外部に見えやすく表示すること。また、事業者の名称を外部から把握できるよう措置を講ずること。

4自家用車は、乗車定員十人以下であること。

使用可能な車両数

  • 国土交通省の指定する「対象地域、時期及び時間帯並びに不足車両数」
  • 営業所の保有台数
  • 自家用車を登録する場合は制限なし

車両の表示

  • 事業者名と自家用車活用事業が分かるように見えやすく表示する

車種

  • 自家用車は乗車定員十人以下

この5項目です。

 

(2)自家用車ドライバーについて

1第一種運転免許(初心運転者期間にあるものを除く。)又は第二種運転免許を保有し、自家用車活用事業に従事する日前2年間において無事故(自動車の転覆、転落など、事故報告規則第2条に定める「事故」をいう。)であり、かつ、運転免許の停止処分を受けていないこと。

2事業者は、運輸規則第36条第2項の規定に基づき行うものと同様の研修(大臣認定講習を含む、ただし接遇等必要な研修科目の受講が必要)及び運輸規則第38条に基づき行うものと同様の指導監督を行うこと。

3事業者は、事業者の名称、自家用車ドライバーの氏名、運転免許証の有効期限及び作成年月日が記載された運転者証明(電磁的記録でも可)を自家用車ドライバーに対して発行し、携行させる こと。

自家用車ドライバーについて

  • 2年間無事故かつ停止処分を受けていない
  • 運輸規則第36条第2項研修(選任前講習)と同様の研修が必要
  • 同じく38条(従業員に対する指導監督)同様の指導監督を行う
  • 運転者証明(電磁的記録も可)を発行し携帯

 

(3)運行管理及び車両整備管理

事業者は、関連通達(「自家用車活用事業における運行管理について」(国自安第182号)及び「自家用車活用事業における自家用車の車両整備管理について」(国自整第283号)に基づき、運 行管理及び車両の整備管理を行うこと。

運行管理について

自家用車活用事業における運行管理について

運行管理についてはタクシーと同じです。「運行記録計による記録」が困難な場合は、「GPS を搭載したスマートフォン等※による距離と時間の記録をもって代えることができる」とされています。

指導監督も同じですが、

旅客自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行 う指導及び監督の指針を、次の期間で実施

第一種運転免許を保有する自家用車ドライバー・・・四半期毎

第二種運転免許を保有する自家用車ドライバー・・・毎年

となっています。

さらに、運行管理者の選任数は「事業用自動車及び稼働させることが可能な自家用自動車 の合計を40で除して1を加えた数以上とする(1未満の端数は切り捨て)」。自家用自動車数を合算しての運行管理者数になります。

車両管理について

1.点検整備

(1)法人タクシー事業者は、自家用自動車について、自動車点検基準(昭和26年運輸省令第70号)に基づき、以下の点検を行い、必要な整備を行うこと。

①運行前点検(1日1回、自家用車活用事業の用に供する前に実施する点検)

②中間点検(3か月ごとに行う基本的な点検)

③年次点検(12か月ごとに行う詳細な点検)
④開始前点検(自家用自動車を自家用車活用事業の用に供する前に行う点検)

2.年次検査

自家用自動車については「直近の継続検査等の日から起算して11か月 が経過する日から12か月が経過する日までの間に、年次検査を行い」、つまり1年毎の検査になります。

 

道路運送車両の保安基準(以 下「保安基準」という。)に適合することを確認すること。

(4)運送形態・態様について

以下の形態・態様で実施されるものであること。

1利用者と事業者の間で運送契約が締結され、事業者が運送責任を負うものであること。

2運送の引受け時に発着地が確定している運送であること。

3運送の引受けに当たって、自家用車活用事業による運送サービスが提供されることについて、利用者の事前の承諾を得ていること。

4運賃及び料金は、事業者の事前確定運賃制度に準ずること。

5運賃及び料金の支払い方法は、原則キャッシュレスによる方法であること。

6運送サービスの発地又は着地のいずれかが、事業者が許可を受けている営業区域内に存するものであること。ただし、地域の旅客輸送需要に応じた運送サービスの提供を十分に確保することが 困難であると認められる場合は、隣接する営業区域に営業所を有するタクシー事業者による運送 サービスを認めることができる。

運送形態・態様について

どのように利用者を運送するかです。

  1. 利用者と事業者間の運送約款が締結され、事業者が運送責任を負う
  2. 発着地確定の事前確定運賃
  3. 自家用自動車活用事業の事前承認
  4. 支払いはキャッシュレス
  5. 営業区域内営業(発地・着地が営業区域)

になっています。

 

(5)稼働状況の報告

事業者は、使用可能な自家用車の稼働状況について記録し、運輸支局からの求めに応じて報告すること。

(6)許可の取り消し等許可に付する条件に違反した場合には、「一般乗用旅客自動車運送事業者に対 する行政処分等の基準について(平成21年9月29日通達 国自安第60号・国自旅第128 号・国自整第54号)」に準じて許可の取り消し等を行うこととする。

4、5は、許可期間と取り消しについてです。

 

4.許可期間

許可期間は2年間とする。

5.その他

下記(1)~(3)に該当することとなった場合の許可の取扱いについては、それぞれに定めるところによるものとする。

(1)事業者が法第38条第1項の規定に基づき、その事業の休止又は廃止の届出を行った場合 当該事由が発生した日に許可を取消す。

(2)事業者が法第40条の規定に基づき、その事業の許可の取消処分を受けた場合 当該処分の日に許可を取消す。

(3)事業者が法第40条の規定に基づき、その事業の停止処分を受けた場合 当該処分期間中は、自家用車活用事業に係る許可の効力を停止する。なお、停止中の期間は、許可期間に含まれるものとする。

以上、駆け足でまとめてみました。

全体の感想としては、これはライドシェアではない、ということです。タクシー事業者によるアルバイト募集です。

ただ、この方法で応募があり、安心安全が担保され、タクシー不足が解消されるなら、それは良いことでしょう。この問題の本質は「タクシー不足解消」ですから。

しかし、都市部だけではなく地方でもタクシーの需給ギャップは解消されません。なぜなら、需給ギャップがゼロになると、ピークに合わせると、供給過多が起きるからです。ということもあり、この自家用車活用事業、いわゆる日本型ライドシェアは良い方法だと思います。

また、都市部と地方都市、僻地、交通政策はもう少し細かく分けて考えないと、いよいよ崩壊する、そう考えています。

自家用車活用事業

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日本型ライドシェア 自家用車活用事業について考えたこと

  1. (別添3別紙)自家用自動車有償運送(自家用車活用事業)許可申請書

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