タクシー不足とライドシェア

タクシー不足を背景にライドシェア解禁の話が多くなってきました。「タクシーが全然来ない」確かにこれは問題です。政治の不作為と業界の怠慢…。

日本の交通は今おかしい。ユーザ目線からこれをどう解決するのか、業界は解決策を打ち出して爆速で打ち出して欲しいし、解消されない場合は、政治の不作為と言いざるを得ない状況だと思います。

Twitter タクシーが全然来ない

川邊健太郎氏のこのtweetは正しいのではないでしょうか。ただ「業界は解決策を打ち出して」はいます。

その解決策であるタクシー業界の施策の多くは反ライドシェアという目的を含んでいました。そのためライドシェアとの親和性が高いものです。例えば、アプリ配車、事前確定運賃、迎車専用車両、一種免許によるタクシー乗務…。すでにライドシェアの装いです。GO Rideが明日にでも誕生できるほど、策は功を奏しています。

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Uber 労働組合論(2)
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ライドシェアの季節

ライドシェアについて再度考えてみます。

タクシーのDX化

これまでタクシー運転手は地理や接客という専門性を必要としていました。ところがナビの出現と進化が地理の専門性を軽減させました。また配車アプリが事業者を越えた営収の分配を可能にしました。つまり、考える力や知識の集積の必要性を低減しました。そして決済システムが釣銭や運賃トラブルを減少させました。この20年でタクシー産業はずいぶんと様変わりしました。

専門性不要の自白

つまりプロの壁が低くなったということです。壁が低くなりさらに業界内から二種免許不要論まで出るようになりました。1

この、業界トップの発言は専門性不要を自白したようなものです。ライドシェアに限りなく近づいたということです。

二種免許は必要ですか?映画「コラテラル」、ジェイミー・フォックス演じるタクシードライバーマックスのように、分単位で到着時間を予想できるほど地理に精通し、運転も上手いタクシードライバーがどれほどい…
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二種免許は必要ですか?

サービスと品質の均質性

タクシー業界がめざしてきたのは、サービスと品質の均質性です。それはプロ集団をつくる、というよりも、入職の壁を低くし熟練度を必要としないということです。それはタクシー産業の工業化、あるいは、生産ライン化と言えます。その結果、GO ReserveやGO Crewが誕生しました。

つまりライドシェアのようなもの、です。

  1. 専門性を必要としない
  2. 経路は事前に決まっている
  3. 配車はスマホ配車
  4. 配車専門(迎車専用車両)
  5. 二種免許不要(これはまだですが)

ライドシェアと違うことと言えば、運行管理と車両管理でしょう。そうなると、交通空白地有償運送(事業者協力型自家用有償旅客運送)と同じです。2

自家用有償運送

すでに自家用有償運送は行われています。例えば、ここ東三河南部交通圏、新城市の「山吉田ふれあい交通」は、運行管理と車両整備管理を豊鉄タクシーに委託して運行しています。

新城市 山吉田ふれあい交通概要図

図1 新城市山吉田ふれあい交通概要図3

 

公共交通空白地が拡大し移動困窮者が増加する地方の過疎地域では、自家用有償運送が頼みの綱になっています。新城市の場合、499.2 km²もの広域を昼間4台〜5台、夜間1台〜2台で営業を行っています。それも22時までです。京都と同じく「タクシーが全然来ない」状況なのです。ところが自家用有償運送は「必ず来る」のです。

規制の失敗の自白

タクシーのDX化はタクシー不足解消のためと、入職率や定着率、収益率改善のために推し進められてきました。つまり生産性や合理性、効率性の追求だったのです。そしてライドシェアUberという黒船対策でもあったことは前項で述べた通りです。

その一方でタクシー規制は意欲ある新しい人たちの参入を妨げ「効率性や進取の意欲の乏しい事業者であっても事業の継続」を容易にしました。4

需給調整規制の下では、臨機に新たな運輸サービスを提供しようとする意欲のある事業者の参入が事実上妨げられる一方、効率性や進取の意欲に乏しい事業者であっても事業の継続が容易となることから、結果的に国民意識・国民生活の変化を反映した消費者のサービス需要多様化への柔軟な対応が困難になるおそれも生じてきていた

 

交通政策審議会 交通体系分科会 地域公共交通部会 最終とりまとめ

この発言こそ、規制の失敗の自白にほかありません。確かにライドシェアの進出を防ぐことができましたが悪質事業者が居残ることにもなりました。労働集約型産業でさらに出来高制歩合給、つまり経営者は運転手の数と歩率だけを考えていれば頭を使わなくて良かったのです。その雑な経営が現在の混乱を招いているのです。

要するに「乏しさ」を招いたことが規制の失敗なのです。

反対する人たち

タクシー事業に従事する人たちは「ライドシェア反対」なのでしょう。経営者が反対するのは理解できます。ところがドライバーの人たちから「賛成」の声が聞こえてきません。現状に満足しているのでしょうか?ライドシェアに未来はないのでしょうか?

ライドシェア解禁のその先

例えば、ライドシェアが解禁になったとすると、

  1. これまでの知識や情報をライドシェアで活かせる
  2. 個人タクシーになれる
  3. ライドシェア会社を作れる
  4. 新しい移動サービスを始められる
  5. 新日本交通、SNに桜を創立できる
  6. 億万長者も夢じゃない

など、タクシー会社の運転手ではできないことが可能になります。例えば、規制がなくなれば、自分たちの手で移動サービスの会社を新しく作れるんです。特に、若い人たちは、移動サービスについて夢を持てるのではないですか?

皆さんが考えているのは、UberEatsの自転車で配達する人たちのことではないですか。それだけではないのです。

例えば、1980年代に通信事業の自由化、電波の解禁がなかったら、Twitterは存在しなかったかもしれません。それと同じなのではないですか?

タクシー不足とライドシェア

ボクが期待しているのは、新しい移動サービスをデザインする人の登場なのです。「タクシーが全然来ない」状況や、地方の交通崩壊を解消するような移動サービスを考える人たちなのです。それにはタクシー事業や規制が邪魔になる時があるんです。今だって、タクシーのルールが邪魔になる時ありますよね?

最後に。問題は「タクシーが来ない」ことなんです。そして地方では交通空白地が拡大し、交通崩壊が起こっているんです。どう解決するかなんです。一種免許でのタクシー乗務もそのためなんです。その方法もありと思います。もう一度言いますが問題は「タクシーが来ない」ことなんですよ。

蒲郡駅北口 タクシー乗り場 平日の午後の2時間、タクシー不足ではありません。そして情報をシェアしているようです。

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