二種免許は必要ですか?
映画「コラテラル」、ジェイミー・フォックス演じるタクシードライバーマックスのように、分単位で到着時間を予想できるほど地理に精通し、運転も上手いタクシードライバーがどれほどいるのでしょうか?
6月26日付 東京交通新聞に全国ハイヤー・タクシー連合会の川鍋会長の二種免許取得前のタクシー乗務という記事が出ていました。二種免許不要論とも言える、一種免許でのタクシー乗務について考えてみます。
二種免許取得前のタクシー乗務について
川鍋会長の提案している内容をまとめると次のようになります。
- 一年以内に二種免許を取る意思がある人
- 1の人を対象に5時間の講習を義務付ける
- タクシー車両で配車専門に営業(流しはなし)
- 1年の限定雇用
- 雇用数は一般乗務員の半分
- 運賃はタクシー運賃の5%引
二種免許取得前のタクシー乗務とは、一種免許でのタクシー乗務、二種免許のないタクシー運転手、です。
次にもう少し一種免許と二種免許の違いを考えてみます。
タクシー運転手になるまで
- 二種免許取得(自動車学校)
- 10日間の講習(旅客自動車運送事業運輸規則36条の2)
- 地理・法令試験(地域によっては効果測定)
つまり、自動車学校の実技検定を合格し、免許センターでの学科試験に合格すればプロドライバーとしてデビューできるということです。。その間1か月。
二種免許合格率は90%以上、ボクが知っている限りでは100%です。とすると、それほどプロの条件は厳しくありません。。桃栗三年柿八年どころかタクドラ1か月なのです。
ということは、一種も二種もそれほど腕に違いがない、ということになりそうです。
運転の質と安全性
二種免許を取ったからと言って「運転が上手い」ということではありません。さらに「安全」との相関関係もなさそうです。
ただし二種免許取得と「安全」の因果関係はあるでしょう。二種免許の重み、と言ったものがボクたちにさらなる安全運転をさせるからです。それは単にタクシー運転手だから、ではなく、タクシー会社の中のタクシー運転手という意識からのものだと考えています。会社が不安全行為の抑止力になっているとも言えます。
二種免許の重み
つまり、二種免許そのものではなく、タクシー運転手としてのプロ意識やタクシー会社が安全意識を高めるのです。二種免許取得に関しては特別な能力や技術が必要なわけではありません。そして免許取得≠プロであって、二種免許の重み=プロなのです。
タクシーとしての使命感
プロとしての意識もですが、タクシー事業の使命というものもあります。「公共交通」を意識しているドライバーも多い、いえ、ほとんどでしょう。
二種免許ではなく、公器としての使命感がボクたちにあるからこそ、さらに安全が担保されるのでしょう。そしてなによりもその使命感こそ公正公平の源なのです。要するに、職業観がプロをつくっています。
裏返せば、二種免許の重みがなくなり、公器としての使命感を失えば、合理的に打算的になります。その結果、弱者が見捨てられます。お金にならないことはしない、ということです。
業務独占資格
二種免許取得≠プロで、二種免許の重み=プロ、そしてプロ=意識や職業観だとすると、では二種免許取得の効用や目的はなんなんでしょうか?これは、タクシー業界や運送業界という許可認可制事業がさらに資格によって独占するための便法ではないのでしょうか。タクシーという独占事業を行うため、その労働者にも資格を必要とする。そしてそれが入職基準となる。つまり、はじめに業界あり、なのです。
タクシー規制について
そのタクシー事業は国による参入規制のほか需給調整もあります。これは、安定した供給、安全性と品質、それらの維持と確保が目的です。
なぜなら、タクシー運転手が増えすぎると、供給過多になり売上が減少する。そして、そのことが運転手の長時間労働を誘発し乗車拒否などのサービスの低下と交通事故を増やすからです。タクシー事業を取り巻く規制はここに集約されます。
二種免許よりもタクシーが必要なのです
そのタクシーという枠のなかに入って、タクシー運転手として雇用されていれば、二種免許の有無はそれほど問題にならない、というのがボクの考えです。つまり、必要なのは二種免許ではなく、タクシーそのものだからです。
今、「タクシーがない」「タクシーが来ない」「予約が取れない」と言われています。需給ギャップは縮小されません。その問題の解決をどうするのか、ということが課題です。
その問題は昨日今日始まったことではありません。その解決にむけて、二種免許取得要件緩和、GO Reserveなどの迎車専門車の運行開始、運賃値上げでの賃上げ、ありとあらゆることを試みています。
それでも足りないのならば、この手も良いのかもしれません。
プロの不在
考えてみると、つまり、タクシー運転手の専門性が失われつつあるのでしょう。いえ、その専門性こそ就職の壁で、それを取り除くことを業界が行ってきたからです。
その結果、地理はナビをいかに使いこなすかの問題になりました。そして、事前確定運賃は、経路や運賃の問題まで解消しました。キャッシュレス決済は釣銭の問題解消です。言い換えれば、運転者の熟練度よりも設備の使い方の上手さが求められる時代になった、ということです。
そうしてついには営収までデザインできる時代になったのです。それこそ業界が求めていたIT化だったのでしょう。
トップの二種免不要論
ここまで考えてきたように、専門性の排除を業界自身が行ってきました。そしてその結果、タクシー入職の壁が低くなり、熟練度を必要としなくなり、新人でも稼げるようになってきました。。
そして二種免不要というところまでになった、ということです。二種免取得も会社経費だということを考えると、企業にとっては本当は「いいね!」なのです。そして、これはシナリオだったのです。