19歳からのタクシードライバー、2種免許受験資格緩和
19歳からのタクシードライバー。それが、哀しい物語にならなければいいのだけれど…。
5月13日から道路交通法が改正され、19歳から二種免許を取得することが可能となる。
- 業界の深刻な運転者不足
- 第二種免許等の受験資格の緩和を求める関係業界の要望(21歳以上・普通免許3年以上等)
つまり、業界の「第二種免許等の受験資格の見直しの要望」があったからだ。けっして、国民からの、まして若者からの声があったからではない。業界の主人は、二種免許不要論を唱えるはずだ。なぜならば、コストだからだ。
最初に、警視庁のサイトに掲載されている「改正道路交通法(高齢運転者対策・第二種免許等の受験資格の見直し)の施行に向けた調査研究報告書について」を読んで、5月13日から改正される第二種免許の受験資格要件緩和の特に「19歳取得」について概観してみる。
1.「第二種免許等の受験資格の見直し」概略
第二種免許の受験資格は
- 現行・・・21歳以上かつ普通免許等保有3年以上
となっている。これを、
- 改正後・・・19歳以上かつ普通免許等保有1年以上
に改正される。
2.どうなる二種免許
上の図の概要部だけを抽出した。
この改正で、「特別な教習」を受ければ、普通免許取得後1年以上、最短19歳で二種免許取得が可能になった。「19歳からのタクシードライバー」誕生だ。
2-1. どんな人が受験できる?受験資格の分類
その「特別な教習」は二種免許を取得する人たちを次のように分類している。
- 19歳、20歳での受験する人
- 21歳以上で3年以上の免許保有期間がない人
- 21歳未満の人
- これまで通り、21歳以上3年の経験がある人
どういうことかというと、取得要件が緩和されただけで、大前提として従来の「21歳以上かつ免許保有3年以上」がある。そのうえで受験できる人たちを、
- 1は、18歳で普通免許を取得し19歳~21歳未満で二種免許を受験する人。(年齢、経験なし)
- 2は、21歳になっているのですが、保有期間が3年未満の人。(経験なし)
- 3は、21歳未満で大型か中型免許を持っている人。(年齢なし)
- 4は、これまでの通り。(年齢も経験あり)
に分類したということだ。
3については、21歳未満は「年齢、経験なし」になるが、これは21歳未満の人が別々に2で経験要件を満たし、3で年齢要件を満たすという場合だ。
中型免許(20歳以上2年)を20歳の時に経験なしで「2の経験なし特別講習」を受講し取得、その直後、二種免許(21歳以上3年)を取得しようとする場合、すでに「2の経験なし」を受講済みなので、あとは3を受講すれば年齢要件を満たすことになる。要するに2+3=1というだ。
2-2. どうすれば受験できますか?特別な講習の内容
「特別な教習」を受講することにより「21歳以上3年以上」という要件が免除され、二種免許の受験ができるようになった。
受験する人たちを分類し、そのうえで3つの「特別な教習」の受講を義務付けている。
19歳、20歳で普通免許持っています(年齢なし 経験なし)
1段階(時間) | 2段階(時間) | 合計(時間) | |
技能教習 | 11 | 20 | 31 |
学科教習 | 2 | 3 | 5 |
21歳以上で免許保有期間3年未満(経験なし)
1段階(時間) | 2段階(時間) | 合計(時間) | |
技能教習 | 9 | 18 | 27 |
学科教習 | なし | 2 | 2 |
21歳未満で中型・大型免許もってます(年齢なし)
1段階(時間) | 2段階(時間) | 合計(時間) | |
技能教習 | 2 | 2 | 4 |
学科教習 | 2 | 1 | 3 |
- 36時間
- 29時間
- 7時間
この特別な教習を受講後、自動車学校での二種免許教習や試験場でのいわゆる一発試験を受けることになる。つまり、36時間の講習で、21歳3年以上という二種免許取得要件を2年短縮するものだ。
3.19歳からのタクシードライバー
結局、受験要件が緩和され
- 18歳で普通自動車免許を取得
- 19歳で「特別な教習(年齢・経験なし)」を受講
- 自動車学校で二種免許教習
という人がでてくる。
- 高卒でタクシー会社に就職
- 配車業務、管理業務などの行いながら自動車学校で普通自動車免許取得
- 入社2年目に二種免許取得
- タクシー運転手としてデビュー
なんてことも考えられる。
4.特例免許取得後の若年運転者期間ってなに?
この制度で免許取得した後、本来の受験要件年齢(二種免許は21歳)までの期間を若年運転手期間として指定される。その期間に違反行為をして累積点数3点以上(1回の違反が3点の場合は4点以上)した場合は「若年運転講習」を受講しなければならず、「不受講者または再度一定の基準に達した場合は特例取得免許が取り消し」になる。
5.19歳でデビューできたとしても
それで、タクシードライバーになり、幸せな人生を送ることができればいい。しかし、若くして就いても、事故リスクが減るわけでもなく、危険な職業であることには変わりない。2年短縮されたからと言って、なにかあるわけではなく、事故リスクが増えただけ、かもしれない。
これまでも若者が二種免許取得年齢に達し、満を期してタクシードライバーになった、ということもない。それに、子どもたちの将来なりたい職業ランキングにも入らない。どちらかというと敬遠される職業だ。
ボクが親なら反対するかもしれない。歩合給で事故リスクがあるし、健康的でもないし……。
- 業界の深刻な運転者不足
- 第二種免許等の受験資格の緩和を求める関係業界の要望(21歳以上・普通免許3年以上等)
という業界側の都合で取得要件が緩和されただけで、若い人からの声は聞こえてこない。あくまでも運転手不足解消が目的だ。
例えば、19歳でタクシードライバーになって、その直後に人身事故、交通刑務所、ということにでもなったら?こんなに簡単に犯罪者になる職業があるのか?
そして、このコロナ禍で歩合給での賃金の怖さも分かったはずだ。
6.タクシー会社はケチなのだ
タクシー事業者は基本的にケチだ。例えば、あれしろ、これしろ、と言うだけで、あれやる、これやる、はない。19歳からのタクシードライバーが誕生したとしても、なんだか喜べない。それは、幸せになった人よりも、不幸になった人を多く見たからだろうと思う。そして、このボクも……、考えたところで仕方ないので、酔って寝るのが一番、なのだ。
参考サイト・出典
改正道路交通法(高齢運転者対策・第二種免許等の受験資格の見直し)の施行に向けた調査研究報告書について
令和4年5月13日施行改正道路交通法について 警視庁
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