運行管理のありかた – 知床観光船沈没事故から考える
運行管理のありかたを考えると、運航管理者と社長が同じだったことも事故の原因だろう。事業者と管理者が同じでは、運航管理を適切に行うことは難しいのではないのか。安全の確保よりも利益を優先してしまうのではないのか。
「運行管理補助者」の有無よりも中小零細事業者で起こりやすい、社長=管理者という安全管理の機能不全が問題だと思う。たとえ補助者がいたとしても運航管理者である社長の決定を誰が止められるのだろうか?そして、なにができたのだろうか?
知床観光船「運航管理補助者」定めず、社長不在は違法…国交省は処分検討
タクシー事業の運行管理体制
タクシー事業においては、運転手の乗務前点呼が義務付けられている。例えば、アルコールチェックをはじめ対面での体調管理を行っている。それにより、不安があれば出庫(勤務)させないはずだ。加えて、車両の出庫前点検と車両管理者による確認が行われている、はずだ。
運行管理者がその運行前点呼を行う。運行中も「乗務員に対する必要な指示その他輸送の安全のための措置を講じなければならない」。
ただ、その措置を講ずること、特に運行中止や出庫停止を判断し命令することは難しい。しかも、異常気象の判断、体調の判断、その基準が明確化されていないことが、判断を困難なものにしている。
法と運行管理
道路運送法では、事業者と運行管理者の関係を定めている。それによると、事業者は運行管理者に「権限を与え」その「助言を尊重」しなければならない。さらに、旅客自動車運送事業運輸規則では、「運行管理規定」で、運行管理者の権限を定めるよう規定されている。
道路運送法
(運行管理者等の義務)
- 第二十三条の五 運行管理者は、誠実にその業務を行わなければならない。
- 2 一般旅客自動車運送事業者は、運行管理者に対し、第二十三条第二項の国土交通省令で定める業務を行うため必要な権限を与えなければならない。
- 3 一般旅客自動車運送事業者は、運行管理者がその業務として行う助言を尊重しなければならず、事業用自動車の運転者その他の従業員は、運行管理者がその業務として行う指導に従わなければならない。
旅客自動車運送事業運輸規則
(運行管理規程)
- 第四十八条の二 旅客自動車運送事業者は、運行管理者の職務及び権限、統括運行管理者を選任しなければならない営業所にあつてはその職務及び権限並びに事業用自動車の運行の安全の確保に関する業務の実行に係る基準に関する規程(以下「運行管理規程」という。)を定めなければならない。
- 2 前項の運行管理規程に定める運行管理者の権限は、少なくとも前条各号に掲げる業務を行うに足りるものでなければならない。
規定されているのだけれど、運行管理者も事業者に雇われている。喧嘩してまで「運行の中止」を訴えるのは難しい。(そんな管理者もいますが)
運行中止や出庫中止、その判断自体が困難だ。そのうえ独立性が担保されていない状況では、異常気象時だろうが体調不良だろうが出庫させる。「ご安全に」という自己責任の挨拶とともに。
安全安心ですか
安全安心がなによりも優先される。とは言え、そのためのシステムは旧態依然とした精神論と神がかり的な祈りだけなのだ。配車アプリは山ほど開発され、人々は簡単にその安全安心な柩にいとも簡単に乗込んでしまう。
配車アプリ「GO」には「STOP」という運行停止アプリを、「S.RIDE」にも「SAFTY.RIDE」という安全運行アプリを、配車アプリと対で安全管理アプリを。
そして警報がなった時点で、即時停止、安全確保できるような運行管理システムを構築をしないと、また同じような事故が起きる。人の判断には利益という偏向が存在するからだ。