大失業時代 – 失業のすすめ

現行の職業訓練にはいくつか不公平さがあって、たとえば前回の「大失業時代 – セーフティネットを使い倒せ」で書いたように離職した時期によって受講できる講座が限定されてくるというという時期的なもの、地域によっては講座数が少なく受けたい訓練がないという地域的なもの、そして35歳以下限定という若年者訓練という年齢的なもの、定員があって不合格になる人がいる、などがあります。
4月に入校出来るように離職するのが職業訓練を受講するにはベストシーズンだとすると、それをはずすと「受けたい講座もないしなあ」なんてことになって「取りあえずなんでもいいから受講しとくか」という状態になりはしないかと思っています。
6ヶ月の離・転職者向けの職業訓練(アビリティコース)を3ヶ月ごとに開講しているポリテクセンターもあるのですが、1年コースについては4月開講、3月終了という形しかないようです。
失業保険を受給中に働いたことにして受給期間を延ばしたり、あるいは失業申請を入校に合わして遅らせたり(たとえば90日の受給期間がある人は{派遣や期間工の場合はほとんど90日でしょうが}4月に受講したいのならば、そこから逆算して1月に失業申請をするなど)する方法もあるのですが、それにしてもその遅延させた期間に仕事があって収入があればいいのですが、ほとんどは受講のために無収入期間を故意に作るということをしなければならないのでしょう。(あるいは、日雇い派遣やアルバイトをする例もあるでしょうが)
今回民主党が提出した雇用安全網案は、この不公平感も解消できるものだと思います。

新たな雇用安全網、国会で論議へ 与党対策に民主独自案: asahi.com(朝日新聞社)
一方、民主党は雇用保険の失業手当の受給期間が終わっても再就職できない失業者らが、教育訓練を受けた際に生活費を支給する求職者支援法案を検討中だ。教育訓練を受ければ、月10万~12万円を上限に支援する。

「失業手当の受給期間が終わっても」ということもあるのですが、離職時期に関係無く受講したい職業訓練を受けることが出来る、ということの意味が大きいと思います。「受けられる」と書いたのは、不合格になる人がかなりの数いて、その人たちは訓練を受けることも出来ずに、受給期間が終わってしまっていましたから。そういう意味ではセーフティネットとして職業訓練はかなり目が荒いものでした。多くの人がこれで本当に救われるのではないかと思っています。
ただ、職業訓練がセーフティネットとして効果的であり、失業対策に有効であるようなことばかりが語られていますが、その先(卒業してから)のことを考えないと、「失業給付が延長してもらえるから」「資格が取れるから」あるいは信じられないかもしれませんが「出逢いを求めて」なんて、本来の目的から逸れた動機で雇用保険を使い職業訓練を受ける人がこれからも増えるだろうと思います。
ボクも職業訓練を受講したのですが、ここでも書いたように終了式の日に就職が決まっていた人が僅か2人でした。ポリテクとしてはその後の3ヶ月での就労状態を「成績」として考えているようで、「就職状況報告書」というのはその3ヶ月後までに提出するようになっていました。
そしてその3ヶ月が過ぎると関係がなくなるようです。教育訓練と就職というものがまるで別のもののようにも感じました。本来はセットで考えられるべきものでしょう。若年層訓練の一部にはポリテクなどの教育機関での訓練を3ヶ月、そして1ヶ月は企業での実地訓練というものもあります。そこからそのまま就職とう人もいるようです。
そういった形のほうが就職に結びつくのではないかと思います。あるいは、もう最初から失業給付を受給しながら職場訓練をするとか、就職が先にあって、企業に籍を置いて教育訓練施設に通学するなどの方法を考えないと、訓練は終了したけれど仕事がない、あるいは、訓練した内容とは全く違う職種に就くという状況のほうが多いように感じます。

 両者の大きな違いは、政府は雇用保険の受給資格がない人だけを支援するのに対し、民主案は雇用保険の受給者にも、受給終了後の生活費を最長3年間支援する点だ。

デンマークでは48ヶ月支給されるそうです。そして下の図のように職業訓練を受けないと失業給付を受給できない、ということは日本と違って「受けたいのに受ける機会がない、講座がない、失業時期が悪い」などという不公平、不平等ということもなく、まず初めに受講ということが大前提にあるということ、それが労働力の質の向上、しいては国力の向上になるのでしょう。
「失業が恐怖ではない」どころか「たまに失業したほうがいい」のでしょうね。それは企業にとっても好都合なシステムなのですから。

デンマークとオランダが先鞭、EUが目指す柔軟な労働市場と雇用保障(1) | 国際 | 投資・経済・ビジネスの東洋経済オンライン
ただ朝日新聞の記事の濱口氏の言うとおりだと思います。

 労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎統括研究員は「欧州では就職せずに手当を受給し続けるモラルハザードも起きている。失業扶助の制度は必要だが、職業指導を徹底し、できるだけ早期に就労させる仕組みに重点を置くべきだ」と話す。

「早期に就労させる仕組み」があって、そこから考えることが大切だろうと思います。ただ失業給付の受給期間を延長するだけだと、生活保護と同じでしょうし、せっかく半年なり1年なりかけて習得した技術も忘れてしまうでしょうから、なんらかの形で職業訓練が活かされる場を提供してもらいたいと思っています。ボクも使いけれど使えない、そして「すっかり忘れてしまったよ」という状態ですし…。
地方自治体が臨時職員を応募していましたが、訓練終了後に就職が決まらない場合は失業給付を延長するかわりそういった場所で働くなり、ボランティア活動を義務付けるなりしないと、3年間ブラブラして終わりという人も必ず出てくるでしょうし、失業者得をする社会になりはしないかと思ったりしています。
逆にそういった不公平感や不平等感が生まれる、モラルハザードが起きる、社会にそういった退廃的な思考が蔓延する不利益のほうが問題だろうと思います。失業対策が失業者を生むのでしょうし、昨年からの状況を考えると「弱い者勝ち」な面もあって、ワーキングプアと呼ばれる人たちのような、あるいは多くの失業者のように、失業給付も貰えない、給付期間が終わった、あるいは生活保護をもらえないというギリギリのところで生活している人たちは、それこそ絶望しているのだろうと思います。
そして早く法案を決めるなり、ビジョンを明確にしてくれないから、働くに働けないという人も多いのだろうと思います。「今働くよりも、もう少し待ったら職業訓練を受けられるのだろう」とか「3年貰えるかもしれないのなら、今は待ち」なんて人もかなりいるのだろうし、そういった気分があって求人があっても「ちょっとなあ」なんて応募しなかったりするのだろうと思っています。果報はまだ寝て待て、と、本当に寝て待っている(ま、ボクもそうですが)人も多いだろうし…。
労働=消費ということならば、消費しなければ働かなくて良いということだろうと思ったり、それなら月に10万でも貰って生きていけばいいや、なんてことになるだろうし、現に絶望的な将来ならばそういう退廃的な生き方を選ぶ人も多い、いや、家も車も結婚もな~んもいらんもんね、失業者になったほうが楽じゃんね、なんて人が増えてくるのだろうし…。
失業対策だけにセーフティネットとしての予算を使うわけにはいかないだろうし、財源の問題もあるだろうし、などと考えると、やっぱり仕事を作ることが重要なことだと思います。職業訓練の本来の目的なり意味なりを取り違えるとね。それはボクたちにも言えることなのですが。
ま、普通の当たり前の結論になったのですが…。さてと、失業者飯でも作るか。
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果報は寝て待て、なのかなあ…

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