キャリアアップ助成金について
雇用関係助成金、キャリアアップ助成金が悪いのではなく、どう使われているかが問題なんです。
例えば、キャリアアップ助成金の本来の目的は有期雇用労働者の正規化や待遇改善です。したがって、非正規雇用を減らすためにのも有効な施策です。今回は、この雇用関係助成期について概観します。なお、資料として『令和6年度 雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)』1、それと『キャリアアップ助成金の ご 案 内(令和6年度版)』2を使用します。
雇用関係助成金について
まずどのような助成金があるかみてみます。
- 雇用調整助成金
- 産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)
- 早期再就職支援等助成金
- 特定求職者雇用開発助成金
- トライアル雇用助成金
- 地域雇用開発助成金
- 産業雇用安定助成金(産業連携人材確保等支援コース)
- 障害者作業施設設置等助成金
- 障害者福祉施設設置等助成金
- 障害者介助等助成金
- 職場適応援助者助成金
- 重度障害者等通勤対策助成金
- じゅ度障害者多数雇用事業施設設置等助成金
- 障害者雇用相談援助助成金
- 人材確保等支援助成金
- 通年雇用助成金
- 65歳超雇用推進助成金
- 高年齢労働処遇改善促進助成金
- キャリアアップ助成金
- 両立支援等助成金
- 人材開発支援助成金
- 障害者能力開発助成金
- 職場適応訓練費
23項目の助成金があります。
キャリアアップ助成金とは
さて、この23項目の中で、タクシー事業者の需給が問題視された「キャリアアップ助成金」について、その中でも「正社員化コース」について考えてみます。
次の図は正社員コースの概要です。
これによると、「有期雇用労働者等を正社員化した事業主に対して助成」とあります。
その内容は次の通りです。
- 有期雇用を正規雇用に転換
- 1人当たり80万円(中小企業以外は60万円)
- 無期雇用を正規雇用に転換
- 1人当たり40万円(中小企業以外は30万円)
さらに、次のような場合は加算されます。
- 派遣労働者を派遣先で正社員として直接雇用=1人当たり28.5万円加算
- 支給対象者が母子家庭の母等または父子家庭の父の場合
- 9.5万円の加算
- 4.75万円の加算
- 人材開発支援助成金の特定の訓練終了後に正社員化した場合
- 自発的職業能力開発訓練・定額制訓練以外
- 9.5万円の加算
- 4.75万円の加算
- 自発的職業能力開発訓練・定額制訓練
- 11万円の加算
- 5.5万円の加算
- 自発的職業能力開発訓練・定額制訓練以外
- 通常の正社員への転換制度または直接雇用制度を新たに規定し、転換等した場合
- 事業者当たり20万円
- 勤務地限定・職務限定・短時間正社員制度を新たに規定し、転換等した場合
- 事業所当たり40万円
キャリアアップ助成金支給例
例えば、
パート勤務の母子家庭のAさんを、正規雇用に転換すると80万円に9.5万円で、89.5万円が支給されます。
加えて、
正規雇用への転換制度や直接雇用制度を新たに(就業規則などで)規定し、Aさんを正社員にした場合は、20万円加算されます。
さらに、
勤務地限定・職務限定・短時間正社員制度を新たに規定し、Aさんを正社員にした場合は、40万円加算されます。
つまり、Aさんを正社員に転換させるために就業規則を変更し、勤務地限定を規定すると、149.5万円の助成金が支給されるということです。
また、賃金、賞与・退職金、社会保険の同一化、導入、改善を行うと加算されます。
タクシー事業の場合
パート勤務で雇用して、というケースが考えられます。しかし、これが常態化すると不正受給に当たりませんか?これは制度の悪用です。
さらに、「新たに規定」に対する加算は1度だけです。有期雇用で大量に雇入し、一気に正規化する、なんてことをタクシー事業者がするとは考えられません。(たぶん)
この制度を活用し正社員化することは、非正規雇用労働者数を減らし、社会の安定につながるのではないでしょうか。その社会正義のために補助金を受給し、労働環境の改善を図ること、そのことも求められています。
働き方の多様化は、労働者が正社員にもなれるということです。多様化という美辞を使用者の便利な道具に使ってはなりません。労働者のために雇用関係助成金を活用し、働きやすい職場作りを、そして、生きがいのある社会作りを、そう願っています。