ライドシェア対策、タクシー業界において新たに取り組む11項目
ダイナミックプライシング
11項目には「閑散期においては、利便性の向上と需要増、繁忙時においては営収の増加」が期待できる効果としてあります。
下の図は、全国ハイヤー・タクシー連合会の「タクシー業界において今後新たに取り組む事項について」に掲載されているダイナミックプライシングのイメージ図です。
今年2021年8月に実証実験に参画する事業者の募集が行われました。これも、従来のメーターでは運用できないので、事業者負担になるところから積極的に参加する事業者も少ないようです。
これは要するに暇な時には運賃を下げて、忙しい時には運賃を上げるシステムです。タクシー運転手からの反対の声が多い理由の根源は、私たちの賃金が歩合給制だからです。繁忙時だけ仕事をやっているわけでもないので、値下げということに対して反応するのはしかたないことだと思います。
公共性の毀損
価格弾力性が低い、そいういう特性の中、どれぐらいの値下げで需要増になるのかも分らない状況では、単なる値下げになるという警戒感があるのと、その値下げに繁忙時の値上げが追いつくのか、と言う問題と、閑散時が多い乗務形態の運転手は?など、運転手の不安はつきないと思います。さらに繁忙時の値上げについては、公共交通の利用が貧富の差で利便性が異なるということへの違和感を感じている人も多いようです。
需給ギャップ解消に効き目が薄い
「値段で乗るのか」という、タクシーの本質論になるとも考えると、★★☆☆☆です。ライドシェアに実装されていて、ライドシェア対策でしょうが、需給ギャップ解消と言われると、台数制限があるタクシー事業では、効き目がありません。
定額運賃(乗り放題)タクシー
「ビジネスマン等のヘビーユーザーの更なる利用増及び定期利用による新たな顧客の獲得。高齢者や子育て世代が運賃を気にすることなく、日常の足として『ドアtoドア』のタクシーの利用が可能になる」を期待できる効果としています。
(全国ハイヤー・タクシー連合会「タクシー業界において今後新たに取り組む事項について」)
mobiの登場
サブスクリプション(subscriptio)と言えば、映画見放題ということが浮かぶのですが、タクシー業界も提案11項目の中にこのサブスクリプション、定額乗り放題タクシーの提案を行っています。すでに映画、音楽、雑誌の読み放題などで馴染み深いものになっているサブスクですが、タクシーではWILLER社が「mobi(モビ)」という名称で今年に入って、京丹後市や東京で、タクシーの定額乗り放題をはじめました。
この12月6日より、名古屋市においても、名鉄交通第三とあんしんネットなごやの2社で運行が開始されました。
名古屋市千種区を例にすると、下の地図の範囲内での利用が、「家族の⼀⼈⽬の加⼊者は30日間5,000円、⼆⼈⽬からは30日間500円で」、7時から22時の間乗り放題になるというものです。また、定額ではないワンタイム乗車では、1乗車大人300円、こども150円で利用ができます。
mobiの運行範囲の対角線上にある鶴舞駅から今池駅は、地図上2.7kmでタクシー運賃は870円~1,200円、5回程度の利用で元が取れる計算になります。名古屋市内の初乗運賃が450円なので、短い距離でも11回の利用で元が取れることになります。
オンデマンドの喪失
タクシーの利便性はというと、即時性と即地性です。いつでもどこでもだれでも、というオンデマンド交通を担ってきたのが私たちタクシー業界です。そして、タクシーの欠点はというと、運賃が高いということです。
路線定時制のバスは、時間と場所の制約を受けながら、値段が安い(安全であるということはもちろんなのですが)移動サービスでした。電車になると、さらに場所の制約を受けます。そのようなバスや電車の持つ時間と場所の制約をなくし、運賃を安くしたのですから、使い勝手の良い移動サービスと言えます。
使い勝手の良い移動サービスですが、このような運行方式は、そもそも法律で規制されてきました。それはタクシー業界を守るものでもありました。確かに、私自身も、拡大するとタクシー利用者が減るだろうなあ、と考えています。しかし、タクシーの規制が、国民の移動の妨げになるのならば……、そうも考えています。タクシー運転手も、そして利用者も、幸せになれる制度が最も良い移動サービスに決まっています。
モビリティで、あたしたちに、明るい未来を、示しておくれ。というMaaSであってほしいと思っているということで、★★★☆☆です。