運転手の賃金について考えたこと

賃金が低いことが運転手不足の原因だとしても、どれくらいが適正なのでしょうか。実際ボク自身、低いと感じます。ただ、タクシー業界については出来高制歩合給という制度が、賃金を自己責任に収斂させてしまうことがあります。確かに、同じ条件で乗務したとしても倍ほどの賃金格差が生じます。そして長時間労働や危険な運転を誘発する原因に…。

賃金が低い、という議論の前に、運転手の賃金額について先日発表された全国ハイヤー・タクシー連合会の『タクシー運転者賃金・労働時間の現況』1を元に、概観します。

バス・タクシー運転手の賃金

令和5年度タクシー運転者(男)と全産業労働者(男)の年間給与の推移

タクシー運転手の年間給与は全産業労働者の平均に近づいています。(東京では超えました)とは言え、「年間推計額で比較するとタクシー運転者は全産業労働者の82.7%」でしかありません。

次の図は、月間給与の自動車運転者(男性)の推移です。コロナ後の2022年、2023年と急激に上がっています。この理由は、高需要と低稼働率です。つまり、供給不足から個々の運転手は忙しくなり、営収が高くなっているのです。

自動車運転者(男)の賃金の推移

運転手の年齢階級別月間給与の比較

固定給、歩合給、賞与…

タクシーとは反対に、バス運転手の月間給与は30万円を下回り、自動車運転者(男)で最下位になりました。バスはタクシーと違って、出来高制歩合給ではないので、単純に賃金が下がったということです。それも令和2年から4万円ほど急落しています。

だたし、この数字には賞与が含まれていません。タクシーと違ってバス乗務員の多くは、固定の月給で賞与がある賃金制度でしょう。その賞与を含む年間賃金は次の図のようになります。

自動車運転者の賃金、年間推計額

つまり、年収にすると結局タクシー運転手が最下位になる…。

とは言え、東京では585万円と全産業労働者の推計年収を5万円ほど上回り、タクシーバブルだったのでしょう…。そして、その東京の高さとは裏腹に、地方では相変わらずの低賃金職です。年収300万円を割っている地域もあります。

タクシー運転者年間賃金推計額

運転手の賃金

と言っても、地域間、業種間で大きな差があります。そして、賃金が低いのは旅客運送の運転手たちです。賃金が低いから運転手が集まらない。確かにそうなんですが、一体どれぐらいが適正なのでしょうか?

他の業態や業種と比較して賃金の多寡が決まるのでしょうか?あるいは、最低賃金よりも高く支払えばそれで済むのでしょうか?

そうではないのです。生活給というような思想、そこを業界、いえ国で考えていかないと、この国は衰退するばかりです。賃金が低い高いではなく、健康で文化的な生活をパートナーと共に送ることができる賃金。そして、安心安全に働ける労働条件、職場環境、それらを全て含めての賃金考察が求められています。

そう言った包括的な賃金思想がない限り、運転手不足どころか人不足になり国が消滅すると思います。

  1. タクシー運転者賃金・労働時間の現況

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