らくだ(ウイルス男の死)

らくだが死んだ。

「えっ、らくだが死んだ。おい、おばあさん、らくだが死んだとよ。昨夜。ハハハハハ。どうして死んだんだ。ふぐで、ふぐだとよ。ああ、アハハハハ、死んだかい、そうかい。そりゃなんにしても、めでたいことだ」

長屋に住む、本名を「馬」、あだ名を「らくだ」という男が死んだ、という屑屋の久六の知らせに喜ぶ大家。落語「らくだ」の1場面。

円生師匠の声のトーンを上げての「アハハハハ」、松鶴師匠の「ほんまに死によった・・・・・・」たっぷりと間を取ってからの喜びの嗚咽、この場面の喜び方が序盤を盛り上げる。身体の大きな、暴れ者(引っ越してきてから一度も店賃を納めていない)のらくだの死は長屋の人たち、屑屋や商店の人たちにはめでたいことだった。

蒲郡のらくだが死んだ。

「えっ、らくだが死んだ。そうかい、そりゃなんにしても、めでたいことだ」

ウイルスばらまき男が死んだニュースを聞いた時に、その場面が頭に浮かんだ。街の人たちは、損害賠償を請求したところで「仕返し」が怖かったに違いない。あのらくだ、いや、ばらまき男だ。前科持ちだ。

悪いと思いながらも、良かったと、そう思った人が多いに違いない。

というか、死ねば良いのにと思った人も多いはずだ。営業停止に追い込まれた飲食店の関係者は、そう思ったに違いない。いや、死ぬと損害賠償を請求できないか・・・。

殺された。そんなことも思ったけれど、なんせらくだだ。「ふぐなんざ当たるもんか、こっちから当ててやる」と嘯く男だ。そして「やれるもんならやってみろ」と誰もが思うことを「やる」「やった」男だ。
あっけなく死ぬもんだ。

らくだのような男でも、あっけなく死ぬもんだ。

「ウイルスばらまく」と外食の50代男性が死亡 愛知・蒲郡

新型コロナウイルス感染が判明した後に「ウイルスをまく」と話して外食した愛知県蒲郡(がまごおり)市の男性(57)が18日、入院先の医療機関で死亡したことが捜査関係者への取材で分かった。店では12日に女性従業員の感染が判明。愛知県警が業務妨害容疑で店からの被害届を受理し、捜査を始めていた。

感染隠し感染隠しが始まる。としても、そんなに驚くことでもない。 わずか18キロメートルの隣街でCOVID-19感染者が出た、というニュースには驚かなかったんだけれど、そのうちの1人が「ウイルス…
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感染隠し

新型コロナ感染症が拡大し静まり返っている豊橋市内らくだ ウイルス男の死

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