キングタクシー廃業

豊橋市のキングタクシー(保有台数29台)が、この15日をもって廃業することになった。これは、新城市の新城交通(ツジムラタクシー)に次いで、東三河南部交通圏では2社目の廃業になった。新型コロナウイルスの影響力のすさまじさを感じている。

ちょうど一年前にこんなことを書いていた。

感染症が収束するまでどれぐらいかかるかが問題。体力のあるタクシー事業者は時間稼ぎはできても、小さいところ、豊橋で言えばヨシダ交通とかキングタクシーなんてところが、収束までの時間が長くなればなるほど影響を受け、経営を圧迫し、倒産もありえる。

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コロナ禍でのタクシー事業

とうとう、新型コロナウイルス感染症は収束せずに1年を過ぎた。その少し前の2019年10月に消費増税があった。景気動向指数は3か月連続で悪化していた。それでも、その年の豊橋市内のタクシーの売上は少し右上がりだった。そして2020年もそのまま同じか微増といった業績予想をしていた。豊橋4社(東海交通、豊鉄タクシー、ヨシダ交通、キングタクシー)も蓄えは少しあった2020年の始まりだった。

しかし、3月からの営業収入の急落が一瞬にして、その体力を奪ってしまった。そして、4月、5月売上は前年比30%程度だった。それでも、1回目の非常事態宣言が解除された頃から少しずつ忙しくはなった。ただし、前年比50%〜60%程度にしかならなかった。そして、期待された年末の繁忙期でさえ愛知県で62.7%。2度目の緊急事態宣言が発出された今年1月には47.1%と悪化していった。

新型コロナウイルスの影響によるタクシーの営業収入の変化

(東京交通新聞のデータをグラフにしました)

雇用調整助成金

そんな中、タクシー運転手は雇用調整助成金で賃金が保証された。しかし経営は営業収入と比例して悪化していった。賃金が保障されていたとしても、長時間労働による出来高制歩合給で賃金を稼ぎ出していた人たちが最低賃金になってしまった。

そして、最低賃金固定給という仕組みが出来上がった。つまり、最賃での固定給化は、「やらない人たち」を増やした。そうでなくても、そもそも高齢者、年金受給者の労働力に依存している業界には「やらなくていい人たち」も多い。

これまで通りの「足切」歩合給というシステムが崩壊しては、経営が成り立つわけがない。

中小企業が倒産しやすい国

そういったタクシー会社単位の問題もだが、タクシー業界では車両や配車設備などの設備投資にかかる費用が大きい。内部補填のない地方の中小零細タクシー事業者は、ちょっとしたことでつまずきやすい。さらに、労働者個々の売上だけではなく、労働者の減少も倒産リスクを高める。つまり、労働集約型産業特有の労務倒産の危険性があるのがタクシー事業なのだ。

東三河南部交通圏で2社も廃業するという事態こそ、中小零細が倒産しやすいこの国の姿なのだろう、そう考えているんだけれど……。

東愛知新聞3月11日付 キングタクシー廃業

東愛知新聞3月11日付(東愛知新聞

 

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