トンネルじん肺訴訟

悲しいことばかり思い出されますね。
17日、日曜日は父の日でした。

トンネルじん肺訴訟 / 西日本新聞
トンネルじん肺訴訟で国と原告側との和解合意に向け安倍晋三首相は18日、首相官邸で原告の元作業員らと面会した。首相はお見舞いと哀悼の意を示した上で「訴訟提起から4年が経過し、大変な苦労があったと思う。早期に解決しなければならないと判断した」と語り、和解する方針を伝えた。午後に関係省庁と原告側が和解の合意文書を交わす。

ボクの父親は50歳後半から入退院を繰り返していて、還暦を迎える頃にはもう遠出も出来ない身体になっていました。「ポチ」と呼んでいた携帯酸素の量だけの距離が、父の行動範囲でした。

病院で死ぬということ
眠りからさめたのは、父の夢を見たからです。父は数年前に早すぎる死を迎えました。その前10年ほど、入退院の繰り返しで、後半は病院で過す時間のほうが長かったのです。所謂労働災害での病気で、戦後の高度成長期の日本では、労働衛生とか安全とかよりも企業の利益、そして国の発展が優先された時期だったように思います。
働くということが命がけの時代でもあったということも言えるでしょうし、それはそのまま家族のためという自明の理があったと思います。働くと言うことが複雑に語られるようになったのは、その命をかけて働いて人たちの子供たちの世代から、のように思います。
陽水の歌「人生が二度あれば」に出てくる父と母が、そのままボクの父と母でした。

父もじん肺で、その合併症の肺気腫や気管支炎などで、死の直前は肺や気管支にはチューブが差し込まれていました。
トンネル工事への出稼ぎは高給だったのですが、落盤事故、爆破事故、振動病、そしてじん肺など、命がけの仕事でした。削岩機で穴を何本も掘り、それにダイナマイトを詰めて爆破、それを繰り返すのですから、狭いトンネル内は数メートル先も見えないほどだったということでした。
労災の手続きと認定に数年を要して、それまでは咳に悩まされても働いていましたから、そういう無理も祟って病状が悪化したのだろうと思います。トンネル現場で働いていたとしても、そしてじん肺の症状が出ていたとしても、管理区分というランク付けがあって、そして、いろいろな条件があって、当時雇われていた会社も存在しないという状況で、とうとう悪化するまでは認定されなかったというのが父の場合でした。
トンネル工事への出稼ぎ労働者も九州や東北、北海道の人たちが多かったようです。愛知へ期間工として来ている人たちも、やはり九州や東北、北海道の人たちが多いですよね。
多分、ボクのような出稼ぎ2世の人や、3世といった人も多いのだろうと思います。
貧困、そして、格差なんて突然現れたように言う人がいますが、地域間格差なんてのは、戦後からあって、それに何も手をつけてこなかった責任を覆い隠しているのではないかと思っています。政治家も官僚もです。
確かにアフリカほどの貧困はないのかもしれません。誰もが平等に義務教育を受けられるし、餓死する人はいないかもしれません。でもね、その格差が、げんに、人を殺してるじゃないのですか?そしてそれが国家のあるいは日本の経済のためにです。
和解なんてことではなくて、裁判になること自体間違っていると思いますが、多くのお父さんが、そしてもう亡くなったお父さんが、少しはうかばれるのかなあ、なんて思っています。

7件のコメント

  • blank

    >えーちゃんさんへ
    アスベスト問題で騒いでいたときに、その除去工事のバイトがあって、かなり高賃金でしたよ。それとか原発の仕事とかあったかなあ。
    結局、除去工事を請けた企業の従業員は誰もやりだがらないで、バイトか派遣に、ってことになったのでしょうね絵。
    ボクは、行きませんでしたが…。
    >山頭火さんへ
    心はライン作業のようになって、なんだかモラルも低くなっているようにも感じます。
    もう少し、頭の良い政治家とか官僚だったら、少しはましなシステムにしていただろうと思います。頭のいいというか、まともな、と言った方がいいかな。
    年金問題なんかそうですよネエ。
    秀吉の辞世の句ですよね。
    >北斗星さんへ
    お久しぶりです。
    年金問題は、なんていうか、国を信じられないということになってしまったようで、おっしゃられる通り民主主義とうか、国家を管理できない、ま、せいぜい藩ぐらいの単位しかシステムとしての管理ができないんじゃないかと…。
    えっと、特別手当はですね、実はその時期に延長する人もいただけるらしいのですよ…。(これは秘密の話なんですが…。って、ここで書いたら秘密じゃなくなるか。)
    田原でも、組み立てじゃなくて、ボデーとかだと、少しは…?それに田原寮か吉胡寮に希望して…。
    えっと、面接はなしですが、受入れ教育はありますよ。でも、あの受入れ教育の一週間って、給料もらえるから…。ボクは好きですけれど…。田中和風寮に住めるチャンスですよ。って…。
    215で忙しくなるから、一課かも?毎週100人越えての入社があるんですけれど、それでも足りないんだろうなあ。恐るべし田原。

  • blank

    お久しぶりです。
    年金問題が毎日報道され、呆れ返るばかりですが、考えてみれば明治維新後の急速な富国強兵政策、敗戦後の急激な復興と経済成長は、いずれもこの国の大事なところに大きな歪みを生じさせてきたのかもしれませんね。その歪みが看過できないくらい大きくなってしまったような、そして今さらながらに本当の意味の民主主義はこの国には根付いていないと思うようになりました。
    さて、トヨタから再赴任のお知らせがきました。7/9~9/3の入社は10万円ボーナス支給とのことですよ。
    満了後三か月以内に再赴任の場合は面接不要なんですね。。知りませんでした。と言うことは入社時の教育もないんですかね?
    ボーナス出るならまた行こうかなとも思いましたが、時期的に間違いなく田原でしょうね(笑)

  • blank

    エントリーやコメントを見ると、日本て幸せな国だなぁと痛感しますね
    この国の政治家も大変だねぇ

  • blank

    美しき国かー
    鬱くしき国…
    「露と落ち、露と消えにし我が身かな、なにわの事も夢のまた夢」
    あの麦わら帽子と日本の原風景はどこに行ったのでしょうか?

  • blank

    まったくその通りです。色々問題山積です。日本の政治家は何をやっているのでしょう?!
    政治家でなく、政治屋、このままでは‥
    お金と政治…企業と…官僚…ん-
    少しずつ解決し進むしかないかな‥それか半馬鹿のままいるか。
    拝金主義の蔓延、効率・合理主義だけかなこの国は
    日本人の心はライン作業のように無機質になったのでしょうか。
    僕の食事の時間もJust in TimeそれともJust on Time‥
    “うたた寝のしばし楽しさ”

  • blank

    同感です。僕も、最近の仕事で、責任者に「ここの作業は、石綿だからマスクして」と、紙製のマスクのみ手渡された事があります。
    こんなに、世の中が いわゆる、アスベスト問題で、さわいでるのに。いいかげんというか、無責任というか。信ぴょう性は無いにしても。
    他にも、仕事してて (これは、危険だな~)と思うこと、結構あります。この国の労働における、安全衛生なんて、今も昔も あまり変わりないのかも、と思えてしまいます。自分の身は、自分で守るしかないか。
    どうしようもない、こともあるけれど。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です