病院で死ぬということ

16時のバスで帰ってきて、風呂、ご飯を食べて眠ってしまいました。起きるともう日付が変わっていてこんな時間に。二直の人が帰る前にまた風呂。1時前の風呂は貸切状態。大雨警報が出されています。外はもちろん雨。強くはありませんが降っています。

眠りからさめたのは、父の夢を見たからです。父は数年前に早すぎる死を迎えました。その前10年ほど、入退院の繰り返しで、後半は病院で過す時間のほうが長かったのです。所謂労働災害での病気で、戦後の高度成長期の日本では、労働衛生とか安全とかよりも企業の利益、そして国の発展が優先された時期だったように思います。

働くということが命がけの時代でもあったということも言えるでしょうし、それはそのまま家族のためという自明の理があったと思います。働くと言うことが複雑に語られるようになったのは、その命をかけて働いて人たちの子供たちの世代から、のように思います。

陽水の歌「人生が二度あれば」に出てくる父と母が、そのままボクの父と母でした。

入退院の繰り返しというか、入院生活が長くなるとどうしても里心みたいなものが湧いて、少し良くなると自宅療養をしていました。ある日一時退院した父を実家につれて帰る道すがら、ツバメの巣からその子供が道路に落ちているのを見つけました。ボクではなくて、父が見つけたのです。車は少し通り過ぎたのですが、戻ってツバメの子供を巣に戻しました。軒下の巣まで届かなかったので「車の上に乗れば届くだろ」と言われたままにそうしました。

その時の夢を見ました。あの時ボクは「ほっとけよ」と言いたかったのだろうと思います。でも、それはそのまま父に向けての言葉のようでもあると感じたのでしょう。命ということに敏感な時期だったのでしょうし、それはどんなものの命であったとしても、等価なもののように思えていました。

父の症状は改善されることなく、実家に戻るということも出来なくなりました。母はずっと付き添っていました。ある意味それは二人にとってとても幸せな日々だったのではないかと、今になってみれば思います。二人だけの時間が結婚以来始めて訪れた時期でもあったように思います。

父の病状の悪化とともに病室を個室にしました。それは「炊き立てのご飯が食べたい」という父の願いを叶えるということもありました。母は毎食時に炊飯をしました。病院側は見て見ぬ振りをしてくれました。そうして病室は家のように感じるようになりました。それはボクたちの巣のように感じました。

ボクたちは病院で生まれて、病院で死んでいくのでしょう。病院というのは、ボクたち現代人の巣なのかもしれません。

2件のコメント

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    けーたろうさんこんにちは。
    今日は昼前に起きて13時のぐるりんバスに乗って市内まで出かけていました。そして16時のバスで帰りました。来週は田原凧まつりだとかで、町中にポスターが貼られていましたね。
    今日、東海テレビ18時30分からの「感動、俺流ごはん」は単身赴任を取り上げていますね。ボク思うんですが、単身赴任の人の大変でしょうが、期間工や出稼ぎ労働者の人たちも毎日「家族と一緒に住むということ」をどれほど考えているのかと思うと、企業の単身赴任者よりももっと大変だと。
    電話も毎日かけたいのだけれど、もったいないしと思ってなかなかかけられないですよね。子供のために食費を削る人もいますよね。町に出ると、どうしても家族連れに目が行くので、街に出るのも億劫になる。
    ボクの知り合いのSくんもそうです。ジャスコで買い物すると、例えば大根にさえ家を思い出す。残してきた娘のことを思い出す。連休も帰らないで寮にいたそうです。
    本当はどんなことがあっても、家族というのは一緒に住むべきなのでしょうね。でも、けーたろうさんの痛みは、きっとお子さん達や奥さんに伝わっているのだろうと思います。そして、けーたろうさんやボクがいまだに父親に感謝しているように、お子さん達もそう思うのだろうと考えています。

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    はじめまして、最近ここのブログを見させてもらっています。僕もトヨタの期間工として勤めています。よろしくお願いします。
    僕の父親も早くに亡くしました。仕事の為に無理をし続けたのが原因で、結構入退院を繰り返していました。父は自宅で療養中、夜中に倒れそのまま帰らぬ人となってしまいました。その時僕は自室で眠っていたのですが、母が父親の異変に気付き、「お父さんが・・・お父さんが・・・」と僕を呼んだあの言葉が今でも覚えています。病院で亡くなる人が多い中、自宅で最後を迎えられた事が父親としては良かったのであろうと思っています。
    家族の為に自分の体を痛めながら働く事が本当に良い事なのか?
    そんな事を考えながら僕も家庭を持ち、妻や子供達の為に体を痛めながら働いています。

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