GLORY DAYS

甥がギターを始めたいから、と、ボクに相談があったのは、もう十数年前で、その相談があった次の日にはボクのアパートにカタログが送られてきていた。その時に「松本さんがこれと同じのを持ってるからね」とB’zの松本孝弘さんに憧れていることを何度も話しては、ボクも当然知っていて、その頃の年代にありがちな「熱にうなされた」感じの話をトクトクと話していた。

GLORY DAYS B'zツアー豊田スタジアム

B’z

ボクはB’zも松本さんも、まして稲葉浩志という天才ボーカリストのことも知らなくて、「それはCharよりもすごいのかね」なんてことを言った思う。

甥は「たぶん」なんてことではなくて「そんなもんじゃないよ」というような、かなりバイアスのかかった表現を使って、いかに素晴らしいかを、まだ少ない(それでも中学生としては豊かな)語彙を使って夢中になって語っていた。

ボクは一台のギターを買ってあげた。いかにB’zが素晴らしいかという彼の説得に負けたのだけれど、後になってどれくらい彼が弾けるのか、なんて重要なことを聞き忘れたことを気付いては、その演説の素晴らしさに気付いたのだけれど…。

その少し後にB’zのアルバム(録音したものだったけれど)をもらった。いかに松本さんが素晴らしいかを「きっと分かるから」なんて言われて…。

ZERO

「ZERO」という曲を聴いたのはそれがはじめてだった。

ぎらぎらした街をぬけ さっさと家に帰ろう
思わぬ工事渋滞で 赤いランプを眺めりゃ
また考えすぎのムシがじわりじわりと湧いてきて
僕は僕自身に 一日分の言い訳をはじめる

という稲葉さんの声は、ボク知らない声で、というか、シャウトする音(声ではなくて)は歌というよりもすでに楽器になっていて、微妙にそして強烈に振動する管楽器を想像できるものだった。たぶん、ボクの耳には聞こえない(音ってのはそんなものだから)部分もかなりあって、それがデジタルなんだけれど、アナログの連続性をもって、異常に深く重くしているように、感じた。

今日はいまいち 思いやりに欠ける日だったとか
人の気も知らないで 「おまえは変わった」なんて
簡単に言うやつの うさん臭い顔だとか

3度目か4度目聴いて、そのあと歌詞カードを見たのだけれど、この部分の「~とか、~とか」という感じは、ま、それからボクも随分と使っていたりして、実は微妙に影響されているのかと思ったりしている。
人はどこかで繋がっているのだろうと、思っているのだけれど、その繋がりは見えた時には既に切れかかったりもしていたりするのだろうけれど。

GLORY DAYS B'zツアー豊田スタジアム

 

ボクもずいぶんとお気に入りになってしまって、カラオケではいつもこの「ZERO」を歌った。あの頃も、今はもう半分も歌えないだろうけれど、サビの部分は呼吸過多で倒れそうになりながら、シャウトというか叫んでいたのを思い出している。

ストリートミュージシャン

甥は、中学高校大学とギターを続けて、その間、地元でストリートミュージシャンになったようだけれど、ボクは一度も彼の演奏を聴いたことがない。それでも、あの松本さんの素晴らしさを表現する能力を、ギターの絃に伝えることができれば、とても熱い感じの音楽にはなるだろうと、ボクは思っていた。

音楽というのは、そういうものだから。結局は、技術的なものの前に表現力という気持の振幅度の波動みたいなものが、空気を揺らさない限りは、サラリとした奥行きのない写真のような風景になってしまうのだろうから。

その10年ほどの間に、ボクにも甥にもいろいろなことがあって、5年という時間は逢うこともなく過ぎ去っていったのだけれど、ボクが10年分言い訳をしている間にも、その成長のない日々を過ごしている間にも、甥のほうはと言えば、いつの間にか社会人となって、ミシミシと音がするほどの成長をしているのだろうと思う。

GLORY DAYS

それでも「そう言えばB’zなんてのを聞いたよね」なんて、思い出話になっていなければいいのだけれど。それに、彼がどんな音楽に影響されて、どんな音楽を街角で歌っていたのかということを知らないボクとしては、あの12歳とか13歳のころに語っていた「松本さんのすごいのはね…」なんて理解不能な技術的なこととか、理解しているのかこれまた分からない精神論の深淵にあっては、人の気持ちの在りどころを考えることとか、歌という短い詩の断片を繋ぎ合せて物語を考えることとか、あるいは音楽という表層とはまた別モノの質量のこととかを、いまだに考えていてもらいたいと、思っている。

そして、たまには「そう言えば一台目のギターはおいちゃんに買ってもらったっけなあ」なんて思いだしてくれればなあ、なんて思っている。

そんなおいちゃんは、今だにB’zを聴いていて「相変わらず稲葉の声は、どんな媚薬よりも濡れ濡れだよね」なんて言っていて、コンサートに来ているなんて知ったら、泣いて喜ぶのかなあ、なんて思っているのだけれど…。

GLORY DAYS B'zツアー豊田スタジアム

B’z Official Website|DISCOGRAPHY

NHKスペシャル「20年目のB’z」見た?

5件のコメント

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    >Mさんへ
    ぽんと言っても、そんなに高くないヤツをね。ボクも持っていたのだけれど、それはもう一人の甥に渡っていたから。
    ま、中学生のころは、そんなギター熱みたいなものがあって、結局うまく弾けなかったけれど…。
    B’zよりはウィンクとかが好きだったりもしたのだけれど…。
    >年を経た鰐の元期間工さんへ
    お久しぶりですね。
    神戸に行かれたのでしょうね。
    花火や炎やら。ま、人もあれだけ集まると、なんだか凄いもんですね。
    思い出が重なりますもんね。歌というよりも、そんな自分の思い出の部分に感傷的になりました。新しい曲はほとんど知らなかったので…。
    >考え中さんへ
    ええ、ま、慌ただしく。
    チケットが一枚余ってるって言われて、「タダでいいから」なんて言われて、急きょ行くことになって。アリーナの良い席だったもんで。ついつい…。
    3万7千人ということだったのですが、4万人ほど集まっていたのかなあ。
    んでもおいでん花火はもっと凄いですよね。2004年に行きましたけれど、あの時は、全然動けなかったし…。10万人規模かなあ。
    豊田スタジアム、毎年大物呼んでますよね。初めてスタジアムの中に入りました。スカイホールのあたりも開発されているようだったし…。

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    あらっ、来てたのねぇ~。
    そう言えば、笠山さんって丁度B’z世代では?。
    恥ずかしながらワタクシは、ちょっと上なんですよねぇ。
    しかしまぁ、こんな辺鄙な所でもメジャーが来ると
    ワンサカ集まりますなぁ。
    右側のツアートラック、写真が凄かったですね。

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    先週の土日に行われたスタジアムライブを立ち聴きしていました。なにせ歩いて10分程の所なので乳母車に姪と愛犬のミニピンを乗せスタジアム外の群集に紛れ1時間位感傷にふけっていました。言葉にならない感情が体を駆け巡り花火が霞んで見えました。 お体を大切にしてください。

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    いいですね・・・。
    Bz・・
    そして甥にギターをぽんと買うおいちゃん・・。
    自分もかなり聴きましたね。
    歌詞がいいのが多く・・曲も良い。
    中学高校と今は無きウオークマンで聴きながらバス通してました。
    ブラザーフットとか好きですね。
    ライブも何回か行ったことありますよ。
    ライブジム・・ってタイトルなんですね。
    ・・一体感とエロいかんじがたまらない・・・・。
    また行きたくなりました。
    ・・ありがとうございます。

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