10万円給付、ボクたちと国の約束
一律10万円給付になりそうだ。
タクシー業界という貧民窟の住人のボクたちでも支給率が低いだろうと予想された限定30万円給付案からの一転、一律支給と決まれば慶祝ムードだ。その10万円の給付が決まったからか、この荒天のせいなのか、朝から祝い酒を飲んでいるのだろう欠勤する人が多いのも、この業界の特徴といえば特徴、仕事自体が「一発あてる」ギャンブラー、宵越しの金も持たなければ、まだ見ぬ金で懐も温かくなっている。
リーマンショック定額給付金
2009年のリーマンショック定額給付金は、その年の2月1日に住民基本台帳か外国人登録原票に記録されている人の世帯主に「定額給付金申請書」を送付し、それを提出してから金融機関に入金、という方法で支給された。
4月1日から「申請書」の送付が開始された。我が家に届いたのは3日後の4月3日だった。銀行口座のない人は、直接市役所に行って受給されたようだった。
2か月を要した。年度をまたいだからから。ということがあったにしろ、2か月は長かった。長かったのだけれど、その少なさが、その期待度の小ささが、長さを忘れさせた。というか、忘れた頃にやって来た、と感じた人も多かったはずだ。
あの時も、辞退とか寄付なんてことが話題になり、議論になった。あの時、辞退した人がどれぐらいいたのか公表されたのだろうか?またどれくらい届かなかったか、なんてことが記録に残っているのだろうか。
公表の有無や支給率、不着率なんてことに無関心だったことも、給付金が少なかったことと、期待感も小さかったことが原因なんだろうと、今思う。
あの頃、ボクは失業していた。だから、その1万2千円は確かに必要だった。1か月の食費ほどの額だったのだけれど、「どうでも良いよ」なんて、辞退も寄付も考えていなくて、それとて待ちわびていたわけでもなく、忘れた頃にやってきた・・・そんな感じで銀行に行ったことを憶えている。
10万円給付は3か月分の家賃です
1万2千円、そして今回の10万円給付。今は失業していない。そしてその10万円は家賃3か月分+1か月の食費という高額だとしても、今月の給料も、来月の給料も、その次も支払われるという未来が、それは少し先の未来だけだとしても、約束された現在に生きているので、あの時と大差がないように感じる。いつかは、それは今夜かもしれないけれど、消えてしまう、それぐらいのの金額という感覚。
金額の多寡を言っているのではない。ボクたちが本当に国から支給されたいのは、ボクたちが本当に必要なものは、明るい明日、希望の未来なのだ。その約束が欲しいのだ。
そうして実は、その約束の手付金が1万2千円や10万円だと思う。
その本気度を見たいのだ。だから、すぐに、今にでも、「大丈夫ですよ」とボクたいを安心させる約束手形として10万円をくれよ、そう思う。
30万円じゃあ、とか、布マスクでも、なんて国民を疑うようなことをするから、ボクたちは信じられなくなる。国民と国家の信頼関係が崩れる。
ケチケチするな、というボクたちの声の、本質のところは、その信頼関係ということにある、ということを、理解してほしいと思う。貧乏だからではなく。希望や夢のある未来があれば、みんななんとか踏ん張れるのだ。
2009年 定額給付金申請書