災害時のタクシーの役割
災害時のタクシーの役割について考えてみます。
「災害時における緊急輸送業等に関する協定」を地方自治体と締結しているタクシー会社、タクシー協会もあります。ただ、その協定の内容の有効性について疑うところもあります。具体的には、「被災者の輸送」「被災対応に必要な要員の輸送」についてです。その「輸送」が、災害時にできるかどうかです。つまり、被災者であるタクシー運転士が乗務できるのか?ということです。
- 運転士の安全対策が可能か
- タクシー車両は使えるのか
- 燃料を確保できるのか
- 道路は使用できるのか
- 運行管理ができる設備が壊れていないか
など、考えられます。また、
- 地域外運行は可能なのか
- 運賃、料金は
- 拘束時間、走行距離は
などの法的な問題もあります。つまり、規制の限界をどう乗り越えるのか、ということです。これらのことについては、3年前にも同じことを書いています。


緊急事態時にタクシーが動ける制度を
特にタクシー事業に関しては、先日より書いている交通圏やメーターも関係してくる。複雑化した移動制度が移動の妨げになっているのだから、災害時には潤滑に支援できるシステム設計が必要だ。それには、運転手よりも事業者の意志が最も必要となる、としても、動ける制度の構築をまずやってくれないと、動きたくても動けない。
あれから、何か変わったでしょうか?確かに、ライドシェア反対という文脈の中で「交通圏」が議論されます。そして「災害時」ということが、ついでに付け加えられていました。
タクシーの限界
おそらく、被災地の被災者であるタクシー事業者、運転士が災害時の輸送を担うのは難しいでしょう。となると、被災地以外から救援応援運行が有効になります。交通圏、運行管理などの道路運送法を一時解除しての運行です。
いやその前に、そもそもの話なんですが、タクシーに何か求められているのか?ということです。何も求めれれていない、のではないのでしょうか?(さらに、「荒天時、週末、忘年会シーズンは待つのが当たり前」という声の多い業界です)
そのことについて、消防の動きを見ていると、さらに考えさせられます。
県の指示を受け、各地で編成された緊急消防援助隊が1日夜から順次、救援に向かった。西三河では岡崎市消防本部の水陸両用の特殊車両「レッドサラマンダー」や資機材搬送車など5台17人をはじめ、豊田市や西尾市、幸田町など各市町から出動した。東三河では豊橋市消防本部の水陸両用車や救助工作車など5台18人のほか、豊川市や新城市など各市から派遣した。
タクシーに何ができるのか?ということが、議論されないということも問題でしょう。タクシー運転士がSNSで呟くのは、長距離運行での高運賃、高収入、という始末。台風や雪に休む人も多いのに、災害時に出勤してなんてことは望めない、という現実…。繁忙期、荒天時には並んで当たり前…。運転士が悪いのではなく、仕組みも悪いのですが…。
ライドシェア解禁という災害時の輸送
自家用有償輸送が認められるには次の2つのケースがあります。1
- 交通空白地有償輸送
- 福祉有償輸送
この認められるケースも限定的です。それに緊急性にも疑問があります。
緊急時の移動をどうするのか?タクシーに何ができるのか?ということ、タクシー規制を考えるより、ライドシェアによる善意も含んだ輸送の方が災害時には有用有効ではないのでしょうか。
「人のため」という労働観があります。いえ、多くの人は人生観として他人の役に立ちたいと考えているはずです。労働とは別にです。だから、災害が起きると寄付金が集まり、ボランティアが集まるのです。
ところが、時間的金銭的な理由から、あるいは、何ができるだろうか、という能力的な理由から、参加できない人もいるはずです。とすると、ボラバイト的に移動サービスで復興の手助けができる方法を探すことも必要ではないのでしょうか。
そのひとつの方法として、自家用有償輸送(ライドシェア)による、人や物の輸送が考えられる、ということです。
タクシープラス
タクシーだけでは無理なんです。それに、タクシーの存在自体が移動サービスの邪魔になることさえあります。2
需給ギャップは埋まらない。そして、特需には対応できない。災害時には役に立たない。それが「当たり前」という人もいます。でもね、繁忙期、週末の夜、荒天時にも移動がスムーズに行くほうが良いんです。利用者が並ぶ、というのが常態化しているから不満が出るんです。その解消を、果たして、タクシーだけでできるのか、ということです。
そして、災害時の移動なんてことを考えると、まあ、ライドシェアもありかなあ、なんて。そう言うと、怒られるんですが…。
突然の横揺れと縦揺れ、広場には涙する人々 タクシー待ちには長蛇の列、金沢駅で地震に遭遇(京都新聞) – Yahoo!ニュース
オーバーツーリズムによる課題解消に向けたタクシー活用『ニセコモデル』 3月19日まで札幌・東京の8社11台25名にて始動開始 | GO株式会社
これぐらい待機車両ができると、運転士は「余ってる」感じがする。ところが、利用者はタイミングによっては「待つ」ことになる。(2023年11月12日19時豊橋駅東口タクシープールにて)
- 自家用有償旅客運送ハンドブック 国土交通省自動車局旅客課
- 例えば、交通空白地の定義の問題があり、空白地でなければ自家用有償輸送もできない。つまり、タクシーがなくなり空白地になれば、行政が何かする。その存在自体が妨げになっていることもある、ということです。