観光地のタクシー不足

観光地のタクシー不足が深刻化しそうです。すでにタクシー不足が社会問題化しているのに、これからはさらに観光地での移動が難しくなりそうです。

なぜならば、中国政府が日本への団体旅行を8月10日に解禁したからです。

中国政府は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて制限してきた、中国人の日本への団体旅行を10日から解禁すると発表しました。中国から日本への団体旅行が再開されるのはおよそ3年半ぶりです。

 

中国から団体旅行客が再びやってくる どうする日本 | NHK | 観光

これから、この国の移動に何かが起きそうです。そして何かを起こす人が増えてきます。タクシー不足、移動に関する問題がさらに深刻化します。タクシー業界の命運を分ける秋になりそうです。

観光地のタクシー不足

この地域(東三河)の観光地で起きていることをまとめてみます。

西浦温泉、蒲郡市の場合

蒲郡市には西浦温泉や三谷温泉があり観光に力を入れています。ところが西浦温泉は西浦半島に位置し、蒲郡駅より10キロほど離れています。現在タクシー不足は深刻化していて、その10キロ先の配車を困難にしています。特に深夜帯は2台しか運行していないので、市内で飲食した観光客がホテルに帰ることもままならない状況です。

また、ラグーナテンボスにある、変なホテル、ラグーナベイコート倶楽部の宿泊客の移動にも影響が出ています。三谷温泉に宿泊すると市街地へもラグーナテンボスへも移動手段が徒歩になってしまっています。

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観光地とタクシー・蒲郡市の交通空白地対策

伊良湖岬、田原市の場合

「鷹ひとつ見つけてうれしいらご崎」芭蕉の句でも有名な伊良湖岬ですが、田原駅から30キロ弱の距離です。陸からだけではなく、鳥羽から船での観光客もいます。10キロほど田原市寄りの保美町に豊鉄タクシーが1台待機しています。それ以外は田原市内からの配車になります。

1台待機しているだけで、利便性とはかけ離れていて、言い換えれば「タクシーがあるだけまし」の状態です。タクシー運転者も当番制で、地域貢献のために、なんて声を聞きます。

さらに困ったことには、田原市内のタクシー会社は24時で営業を終了します。親が危篤だ、急用だ、なんてことになったら、どうしているのでしょうか?

田原市伊良湖半島のタクシー事業 観光地のタクシー不足

鳳来寺山、新城市の場合

NHK大河ドラマ「どうする家康」でも紹介されている新城市です。近くには鳳来寺山、奥三河、自然豊かな観光地がひかえています。その新城市内のタクシー会社は1社だけです。住民の移動はすでに難しい状況になっています。そのため公共交通空白地自家用有償旅客運送を行っています。1

そのほかに、コミュニティバスを運行して住民の交通権の確保に向き合っていると思います。しかし、タクシーの配車受付時間が22時まで、22時で営業が終了するので、夜間・早朝の移動が難しくなっています。それは、観光客だけではなく住民も同じです。

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交通圏の問題、地方の移動について(2)

 

これまで述べてきたように、観光地のタクシー不足は深刻化していて、これから増えるインバウンドに対応できません。地域自治体は観光に力を入れて観光客の誘致を行っています。宿泊施設の準備はできているかもしれませんが、そこまでの移動や、そこからの移動、さらには観光する移動手段がない、つまり、旅館やホテルに宿泊だけの観光になりそうです。それではリピートもないでしょう。経済効果も半減です。いえ、嫌な口コミが増えるかもしれません。「東三河、二度と行かない、タカも幸せもみ見つけられませんでした」とか。

観光地のタクシー不足解消へ

伊勢市の実証実験

そうした中、伊勢神宮のある伊勢市では、「夜間に走るタクシーの台数を増やして」実証実験を行うそうです。

三重県は伊勢市を訪れる観光客などから、「夜間にタクシーがつかまらない」などといった声が上がっていることを受け、タクシー会社などと連携して、8月から夜間に走るタクシーの台数を増やして、利用者の数などを調べる実証実験を行います。

 

夜間のタクシー台数を増やして実証実験 伊勢市で8月から|NHK 三重県のニュース

この記事によると、伊勢市内でも夜間14台〜16台しか運行していません。いえ、適正車両数がどれほどか分かりませんが、伊勢神宮のある街でこれぐらいかあ、と驚いているのです。というのも、例えば蒲郡市内でも夜間は22台〜14台程度あって、それでも供給不足を起こしているからです。

木曜日と土曜日は現在の14台から5台増やして19台に、金曜日は現在の16台から7台増やして23台運行するということです

需給ギャップの実態

タクシー不足と言われていますが、

  • 実際どれぐらい足りないのか
  • どれくらい待ち時間が発生しているのか

が正確につかめていません。ということもあり、この台数を増やして、つまりチャンスロスを起こさないようにしての実証実験は意味があるものだと思います。他の地域においても、業界が主導し行って実際の需給ギャップを数値化してもらいたいと思っています。

下の図は、2018年の時間帯別営業回数です。この図のように週末の夜間は平日よりも2倍近く需要が増加します。ただ、これは営業回数だけなので、待ち時間や実際の数字は分かりません。なぜならば、これはチャンスロスを起こしながらな数値だからです。

タクシー時間帯別営業回数 週末平日 需給ギャップとタクシー不足

(つまり、今回の伊勢市の実証実験で台数を30%〜50%程度増やして行うことは、正確さを求めるために必要なことなのです)

タクシー不足はなくなるのか

しかし、いくら需要量が分かったと言っても、それに対応できる仕組みがなければ、どうしようもありません。大量生産、大量消費、それができるならば問題はないのです。タクシー運転者はコンビニのオニギリではありません。多くの利用者を見込んで、大量発注し、余ったら廃棄する、それができません。

そして、タクシー業界がこれまで通りのことをやっていたのでは解消はできません。例えば、賃金制度、勤務制度です。これまでも需給ギャップは発生していました。でも放置してきました。いえ、もっと悪いことに「神立ち」「着発」「ゾンビ」なんて喜んでいたのです。供給ひっ迫を嬉々として喜んでいたボクたちにも責任があるのではないですか?利用者目線、当事者意識を欠いていたのです。

問題は「タクシーがない」ことです。「移動ができない」ことなんです。困ってる人がいるということです。移動で人を幸せにできてないことなんです。

https://www3.nhk.or.jp/lnews/tsu/20230727/3070010980.html

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