観光地とタクシー・蒲郡市の交通空白地対策

蒲郡市を例に、観光地とタクシー、地方の移動問題を考えてみます。

タクシー不足は地域住民の移動に影響を及ぼしているだけではありません。例えば、観光客のホテルと駅や観光地への移動にも影響がでています。

蒲郡市について

Wikipediaでは次のように紹介されています。

蒲郡市（がまごおりし）は、愛知県の東三河地方にある市。

三河湾に面する観光都市。ボートレース蒲郡、リゾート施設のラグーナテンボスやテーマパークのラグナシア、西浦温泉、三谷温泉、形原温泉、蒲郡温泉の4つの温泉街などがある。また温室みかんで知られる蒲郡みかんの産地である。　蒲郡市 – Wikipedia

人口は78,348人¹ 面積は56.92km2です。ごま油の竹本油脂、アイシン蒲郡工場は、愛知県に来る前に知っていました。

著名人では「青年よ再び銃をとるな」の第2代日本社会党委員長　鈴木茂三郎氏、作家の宮城谷昌光氏、平野啓一郎さんの生まれたところでもあります。また、ニューヨーク・メッツの千賀滉大投手、鼠小僧次郎吉は神明町の生まれだとか…。

そして、蒲郡クラシックホテル（料理旅館常磐館、蒲郡プリンスホテル）² は小説の舞台にもなっています。最近では、映画「ゾッキ」³ の舞台にもなりました。

蒲郡のタクシー事情

蒲郡市内にはタクシー会社が2社あります。かねいち自動車と豊鉄タクシー蒲郡営業所です。中型タクシーの所有台数は、かねいちが23台、豊鉄が34台です。したがって、蒲郡市内にはタクシーが57台あるということになります。（あるというだけです）

この所有台数で、仮に稼働率が60％として⁴ 1日に34〜35台程度が動いていることになります。24時間で34台という稼働台数をもとに、2車3人体制の4勤務2休の勤務シフトとして試算したのが次の図です。

図1 蒲郡市内時間帯別タクシー稼働台数　予想

日中は17台〜25台です。そして夜間は22台〜14台、深夜〜早朝にかけて5台〜1台になります。これに時間実車率40％を加えると、空車車両はマックス10台程度になります。そのような状況で、時間予約配車や即時配車が入っていきますので、繁忙時間帯は空車0になります。それどころか、配車も順番待ち、駅や待機場所でも並ぶ、という絶対的供給不足になっていると考えられます。

蒲郡市の交通空白地対策

チョイソコがまごおり

以上のように供給不足は市民と観光客の移動を困難にしながら、交通空白時間帯を作り出しています。しかし蒲郡市も手をこまぬいているわけではありません。2021年には「観光客向け　チョイソコがまごおり」と「新型コロナワクチン接種　チョイソコがまごおり」を運行を行いました。

しかし、使い難いのか、こちらは並んでまで利用するということにはならなかったようです。

乗り合い送迎サービス「チョイソコ」の無料サービス開始！

チョイソコがまごおりについて

コミュニティバス

交通空白地対策として住民の移動を確保するために、コミュニティバスも運行しています。⁵

2018年4月に形原地区支線バス「あじさいくるりんバス」が運行を開始しました。その後毎年1路線ずつ増やし、現在は5路線で運行を行なっています。

2018年4月1日：形原地区支線バス「あじさいくるりんバス」が本格運行へ移行
2019年10月1日：東部地区支線バス「とがみくるりんバス」を運行開始
2020年1月4日：西部地区支線バス「みかんの丘くるりんバス」を運行開始
2021年1月9日：三谷地区支線バス「おおしまくるりんバス」を運行開始
2021年4月3日：大塚地区支線バス「ひめはるくるりんバス」を運行開始

くるりんバス (蒲郡市) – Wikipedia

蒲郡市コミュニティバスの全運行バス停を路線図風に地図表示｜バス停検索

蒲郡市にはJRの三河大塚駅、三河三谷駅、蒲郡駅、三河塩津駅があります。また、名鉄蒲郡線の蒲郡駅、蒲郡競艇場前駅　三河鹿島駅、形原駅、西浦駅があります。それに名鉄バスも運行しているので、へき地にあるような深刻な困窮化とまでは至っていないようです。このような交通空白地対策の効用なのでしょう。

なお、「鉄道 1km 圏域+⺠間路線バス 300m 圏域+支線バス 300m 圏域」のカバー率は 89.7%（72,780 人）になっています。

報告事項(3)交通空白地対策の取組みについて

乗継タクシー

また、北部地区の交通空白地対策として、乗継タクシーの実証実験も始まっています。これは、「コミュニティバス等を利用したいけどバス停まで遠くて利用できないという方のために、乗用タクシー車両を活用して、新たに設定する「タクシー停留所」から決まったコミュニティバス停留所まで送迎する交通サービス」⁶の実証実験です。

この北部地区の交通空白地解消に向けた「乗継タクシー」により、カバー率は90％を超えるのでしょう。それで、市民の移動は充足されたのでしょうか。そして観光客は移動に困らないのでしょうか。

協議事項(4)北部地区の交通空白地対策事業(実証実験)について

自転車、ぐるチャリとHELLO CYCLING

蒲郡市の次の一手は、自転車です。ナビテラス(蒲郡市観光交流センター)で、電動自転車を貸し出ししております。また、蒲郡駅北口にHELLO CYCLINGのステーションが設置されています。

ぐるチャリ

蒲郡駅で借りられる電動アシスト付き自転車

旅行者の方に、ぐるチャリ(電動アシスト付き自転車)8台を貸し出ししております。小回りが利きスイスイ走るぐるチャリで、潮騒を感じながら蒲郡市内の観光を楽しんでみてはいかがでしょうか？
ナビテラス(蒲郡市観光交流センター)にて貸し出ししております。

蒲郡市観光協会公式サイト「がまごおり、ナビ」 » 電動アシスト付き自転車「ぐるチャリ」

料金は1日（9:30〜16:30）1,000円です。貸出し返却とも蒲郡駅構内ナビテラスになります。

HELLO CYCLING

これは、JR蒲郡駅、蒲郡クラシック上と下駐車場の3か所あります。料金は時間制、12時間まで使用すると1,000円だそうだ。蒲郡駅から竹島周辺のホテルや観光地には便利だと思います。歩くには「ちょっと」、タクシーだと「近い」という距離ですし…。

蒲郡市のシェアサイクル｜HELLO CYCLING

観光地とタクシーの問題

これで市民と観光客の移動は困らないのでしょうか。コミュニティバス路線も充実したし、そのバス停までも乗継タクシーで移動できる用になりました。便利になった、そう多くの人が実感しているのでしょうか？

確かに地図上の空白部分は消えつつあります。そして残り10％以下になっているのでしょう。しかし、コミュニティバスは毎日運行しているわけではありません。それに本数も少なく、夜間の便はありません。

夕方になる。蒲郡駅に着く。三谷温泉に行きたい。JRに乗り換えて三河三谷駅に降りる。タクシーはありません。もちろんバスもありません。

ラグーナテンボスに行く場合も同じです。三河大塚駅にタクシーは待機していません。呼んでも、恐らく「30分以上お待ちいただいています」という答えが返ってくるでしょう。

夜、飲食店からホテルに帰る、タクシーはありません。もちろん市民の方も同じです。

ラグーナテンボスのイベントの日、蒲郡競艇開催日、もう絶望的です。

これが地方の観光地の現実です。電車で訪れたら歩くことを覚悟しなければなりません。

森、道、市場2019　解禁しろ！ – 道中の点検にも投稿しましたが、観光地特例を設けて、Uber、自家用有償輸送を解禁してもらいたい、そうタクシー業界にいるボクが考えるほど、多くの人が移動できないでいるんです。

最後にタクシーの役割

これまで述べてきたように、交通空白地対策を行なっても問題は解消できません。なぜならば、公共交通の地域と時間の空白を埋めているだけだからです。どんな施策を行なったとしても隙間はできます。その隙間を埋めるのがタクシーの役目だったのです。いつでもどこでも誰でも、この自由度の高い移動サービスこそ、タクシーの役割であり本分だったのです。

しかし、こうも運転手不足になってしまっては、その役目さえ果たすことができません。さらに、開発された新しい交通手段、例えばコミュニティバスも、チョイそこも、乗換タクシーも、タクシー会社が運行をし、タクシー運転手が運転をしています。増え仕組みなのです。

いくらDX化したところで、限界はあるのです。じゃあ、どうするのか、というと、相乗りも、GO Reserve も、法人内個人タクシーも、なんでもやってほしいと思っています。

さらに、もっと…。そしてやっぱりタクシーじゃないと空白地は埋まらないのです。だからもっとタクシーを、なのです。観光地とタクシーは切ってもきれない仲なのです。観光客対策として、自治体とタクシー会社が手を携えて（資金を投入して）タクシー運転手を増やすことも、必要なのです。