交通圏の問題、地方の移動について(2)

交通圏の問題について考えてみます。(前回公共交通空白地、地方の移動について(1)の続きです)

愛知県内2番目の広さ499km2(名古屋市が326km2)で、人口43651人(2021年1月1日推定)の市を、わずか9台のタクシーでカバーしていた、新城交通(ツジムラタクシー)が3月末で事業を廃止することになったのだが、その後のタクシー空白地(公共交通空白地)を埋めるために、豊橋市の豊鉄タクシー(名鉄タクシーHD)が、新城営業所を新設し所有台数5台で運行を始める準備をしている。

新城交通(ツジムラタクシー)廃業による豊鉄タクシーよる譲受計画案
ここで、前回も書いた交通圏が問題になる。

市町村合併と交通圏

新城市、作手村、鳳来町の三市町村が2005年に合併し、現在の新城市が発足した。タクシー事業を行ううえで、法令に定められた営業区域、交通圏がある。新城市の交通圏は旧新城市域(合併前の新城市域)のみが東三河南部交通圏(豊橋市、豊川市、蒲郡市、田原市と旧新城市域)にあたり、旧作手村、旧鳳来町は「その他地域」という交通圏のくくりで指定されている。(図1)

ツジムラタクシーが廃業するにあたり、例えば豊鉄タクシーが事業を継承するとしても、その方法によっては、営業区域の引継ぐ範囲が異なってくる。合併すれば、そのまま図2の営業区域が新しい事業者に引き継がれるが、譲渡となると譲受側の営業区域が適用される。

豊鉄タクシーへの譲渡

今回、新城市の地域公共交通会議の資料を読むと譲渡譲受になる。譲受する豊鉄タクシーの現行の営業区域「東三河南部交通圏」である旧新城市域が適用され、その地域でしか営業ができない。そのため図3の「新たな営業区域」が提示され、作手地区(旧作手村)、鳳来地区(旧鳳来町)での営業の許可をしなければならなくなった。

また、ツジムラタクシーの営業区域外だった「山吉田ふれあい交通」の地域が「営業区域外旅客運送地域」として含み、これまで以上に範囲を広くし新しい営業区域とし申請されている。このことは、交通空白地解消のために好ましい。そして、そのためにタクシー事業の継続が求められている。

ややこしい。

交通圏の問題

こうして書いてみて、このタクシー事業のややこしさが、過疎地の公共交通空白地の問題を悪化させているのではないかと思ったりもする。

道路運送法第20条の「営業区域外旅客運送の禁止」は、住民にとっては不便このうえない。市町村で区切られた交通圏があるためにタクシーの利用が難しくなったケースも多い。良いことよりは悪いことのほうが多くなった。

何度か書いたが、堀江貴文さんの「乗車拒否された」問題も、実はこういったケースかもしれない。例えば、千葉のタクシーが東京まで来ていて、堀江さんが手を挙げた。しかし、営業区域外だったため素通りした、ということも考えられる。東京と千葉ならばナンバーも違うだろうが、例えば岡崎も幸田町も豊橋ナンバーだ。

交通政策は正しいのか

このように、法が公共交通空白地をつくり、そして、法がタクシー難民を増やす。公共交通政策の弊害なのだろう。

さて、新城問題。地方と都市の移動の格差。相乗りタクシーや、コミュニティバスだけで解決解消できる問題でもないように思う。いや、いまはそれでなんとかごまかせても、いずれは限界がやってくる。

移動の問題は「国土の問題、国家の安全保障上の問題にもなる」という。だとしたら、すべてを含めて(移住や農林業、テレワークなどの労働問題…)なんとかうまい方法はないものなんだろうか?(つづく)

    1. 公共交通空白地、地方の移動について(1)
    2. 交通圏の問題、地方の移動について(2)
    3. タクシー・ハイヤー事業への新規参入、地方の移動について(3)
    4. 地方のタクシー、地方の移動について(4)

参考資料 令和2年度新城市地域公共交通会議:新城市

旧新城市。旧作手村、旧鳳来町 地図 令和2年度新城市地域公共交通会議資料

3市町村合(2005年)図1

新城市全図 現在の営業区域図

ツジムラタクシーの営業区域図 図2

新たな営業区域図 令和2年度新城市地域公共交通会議資料 図3

新しい豊鉄タクシーの営業区域図 図3

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