タクシー事業への新規参入、地方の移動について(3)
タクシー事業への新規参入は困難です。地域によっては不可能だと言えます。この新規参入の難しさが、地方の移動困難者を増やしている、という見方もできます。今回は、このタクシー事業への新規参入について考えてみます。
地方の移動が抱える問題点
1.地方のタクシー事業者が廃業すると地域全体からタクシーがなくなる。
2.その空白地を埋めるにしても交通圏という規制がある。
ということです。廃業する理由は、経営不振よりも経営者と乗務員の高齢化、乗務員不足という労務倒産で、タクシー事業の特徴から言えば、経営破綻は少ないのではないのでしょうか。
以上の問題点とは別に、これからの移動を考える時にさらに問題になるのが、タクシー規制です。
タクシー事業への新規参入
3.タクシー事業への新規参入の難しさにあると思います。
今回の新城市の事例は、旧新城市域は東三河南部交通圏で、この交通圏(豊橋市、豊川市、蒲郡市、新城市の一部、田原市)は、「特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法」いわゆる「改正タクシー特措法」で、準特定地域に指定されています。(準特定地域(中部運輸局管内))
特定地域、準特定地域に指定されると、新規参入はもちろんですが、タクシーを増やす増車も難しくなります。
自動車:タクシー「サービス向上」「安心利用」推進法が施行されました! – 国土交通省
新規参入も増車もできないので、今回の譲渡譲受の形でしか、タクシー空白地を埋める手段がなかったのでしょう。タクシーの需要があり、病院に買い物に行きたい人がいてもどうすることもできない、という状況になっています。それは正しいことでしょうか。
その東三河南部交通圏にある法人タクシー会社(近いところで豊川タクシー、豊鉄タクシー、東宝タクシー、大きいところで東海交通)が新城市に営業所を新設したとしても、増車ができない。そうなると、今度は営業本拠地に影響が出てきます。つまり、車両が増やせない状況では、新城市で車両を増やせば、他の営業所が少なくなるということです。
移動困窮者を救えない制度
タクシーがその地域にある、ということと、タクシーが利用できる、ということとは別の問題なのです。いえ、タクシーがあるから、他の方法手段が出来ません。このことこそ、地方の公共交通の問題なのです。
移動困窮者を救いたいと考えている人がいます。公共交通空白地を埋めたいと強く思っている人もいます。しかし新規参入もできません。その地域のタクシー会社も「その他地域」という交通圏の問題が立ちはだかる。
二重三重の問題が、タクシー事業者にも出てくる。交通圏の問題は、ただたんに地域という線引きの問題ではなくて、料金、メーターの問題も出てくる。
いろいろな問題や壁があります。そして新しいアイデアがあったとしてもできない。移動困窮者は増え続けます。そして今後こういった事態が日本の津々浦々で出てきます。どう解決するのでしょうか……。
- 公共交通空白地、地方の移動について(1)
- 交通圏の問題、地方の移動について(2)
- タクシー・ハイヤー事業への新規参入、地方の移動について(3)
- 地方のタクシー、地方の移動について(4)