タクシー運転手の改善基準告示改正について

2024年に改正される、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)について概観してみます。

  1. タクシー運転手の改善基準告示改正について(このページです)
  2. タクシー運転手の改善基準告示改正について(2)
  3. タクシー運転手の改善基準告示改正について(3)

参照元:タクシー・ハイヤー運転者の労働時間等の改善基準のポイント(令和6年4月〜適用)厚生労働省

拘束時間と休息時間の定義

拘束時間

はじめに、拘束時間とはなにかですが、これは労働時間ではなく、運転者が拘束されている時間、すなわち、出社から退社までです。次の図にまとめてみました。

タクシー運転手の拘束時間・休憩時間・休息時間

図1 タクシー運転手の拘束時間、労働時間、休憩時間略図

図の黄色い部分、拘束時間は労働時間+休憩時間(仮眠時間も含む)になります。つまり、出勤から退勤までの時間で、点呼や整備、帰庫後の車両清掃も含まれます。運転している時間ではありません。

この場合、拘束時間=13時間、労働時間=11時間、休憩時間=2時間です。

ここをよく間違える人がいます。例えば、運転日報の出庫から帰庫までの時間を拘束時間(図2)を用いている会社もあった/あるようです。

運転日報 拘束時間

図2 運転日報の拘束時間

つまり、実拘束時間のほうが日報の拘束時間より長くなります。必ず、実拘束時間>日報の拘束時間です。この差は点呼時間、車両点検時間、掃除、納金の合計時間になります。

休息時間

次に休息時間ですが、上記拘束時間以外の会社から解放されている時間です。改善基準には「使用者の拘束を受けない期間」「その処分が労働者の全く自由な判断に委ねらる時間」と説明されています。例えば、納金作業が終わり、終了点呼も終わり、「お疲れさまでした」と帰宅する時間が、休息時間の始まりになります。

1日の拘束時間の計算方法

1労働日は起点の拘束時間の始まりから24時間になります。したがって、その中で重なる時間があれば、起点の日の労働時間に合算されます。そのことを説明したのが、次の図2です。

1日の拘束時間の計算方法

タクシー拘束時間の計算方法
図3 1日の拘束時間の計算方法1

拘束時間、休息時間の変更点

労働時間等の改善基準改正ポイント

図3 労働時間等の改善基準改正ポイント

大まかな変更点を表にしました。さらに詳しく、という方は、厚労省発行の改善基準のパンフレット 2 を見てください。

なぜ拘束時間の短縮と休息時間の延長が問題になるのか

その理由は、使用者にとっては「使用時間の短縮=売上の減少」になるからです。そして、運転手の賃金にも影響します。出来高払制の賃金では「時間の短縮=賃金の減少」」になるからです。

つまり、両者共、売上が減少するということです。運転手の自発的な長時間労働を誘導するタクシーの賃金制度を含めたシステムによって、タクシー事業は成立してきました。

その長時間労働という生産性に最も深く関係する部分に手を入れるのですから、業界にとっては「問題」なのです。ところが、長時間労働でしか稼げないシステムの改善は、実は運転手にとっては「問題」でもなんでもないのです。むしろ喜ばしいことなのではないのでしょうか。

ただし、法定労働時間、例えば月172時間程度の労働時間で、これまで通り稼げるのか、となると難しいかもしれません。しかし、法定労働時間内の賃金で普通の生活ができる、そんな業界にしない限りタクシーに未来はないのではないのでしょうか。

次は、問題点や疑問点も考えてみようと思います。

 

改善基準告示が改正されます 厚生労働省パンフレット

タクシー・ハイヤー運転者の改善基準告示が改正されます!

自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示) |厚生労働省

  1. タクシー・ハイヤー運転者の労働時間等の改善基準のポイント
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