運転手不足

運転手不足。それが「タクシーがない」「呼んでも来ない」の要因です。台数規制、それによる車両数不足ではありません。現に、タクシー会社の車庫にはタクシーが余っています。


「すごいですね」
隣にいたAさんが言った。そのあとすぐにため息をついた。

「すごいよね」
そうボクも言った。「なんだかね」ため息の代わりに、そう付け加えた。

Twitterでタクシーの売上が、1か月100万円や150万円なんて数字が並んでいるのを見ている時の話です。

その「すごい」状況の中、運転手不足が問題化しているタクシー業界です。そして、タクシーの運転手不足から会社の倒産や合併での再編が起きています。さらに、新しいことへの取組、改革も加速しています。

いよいよ、特定技能制度による外国人運転手の採用も始まりそうです。そんな、運転手不足のことを少し考えてみました。

実働率の問題

まず、タクシーの運転手不足と言われる供給不足について考えてみまます。

タクシーの実車率(実車距離/走行距離、実車時間/稼働時間)の上昇はタクシー運転手の運行収入も上げます。実車率は需要と供給に影響を受けます。運転手不足が原因で供給不足を引き起こし、実車率を押し上げていると言えます。それが「すごい」状況を作り出しています。

ところが、会社(事業者)は、運転手不足により実働率(稼働率とも=実働台数/所有台数)が増加しません。したがって、営収も増えません。ぜんぜん「すごくない」のです。

そして、運転手の賃金はコロナ禍前よりも高くなっているのに、会社の収益は戻ってきません。昨年からの運賃値上げも日車を押し上げていますが、事業者営収が100%になるにはいたっていません。

これが、運転手不足を背景にした実働率の問題です。

タクシーの運転手不足

さらに困ったことには、日車の高騰は運転手各自の実働率を下げます。なぜならば、これまでよりも短時間に「おなかいっぱい」状態になるからです。生産性が向上した、ということなのですが、これも実は「供給不足」によるものなのです。

つまり、運転手不足による供給不足が深刻化している、ということです。そうなると、事業者も困りますが、最も困るのは利用者です。

タクシーがつかまらない、そういった声がSNS上でよく見かけるようになりました。予約も取れません。しかし、運転手は「すごい」という状況になっているのです。

運転手不足 業界の取組

実は、タクシー業界は、この運転手不足をコロナ禍前から予想し、問題視していました。そして「タクシー業界において今後新たに取り組む事項について」において、「労働力確保対策の推進」として次のような施策を行っていました。2016年のことです。その実行がコロナ禍により加速された、ということです。

労働力確保対策の推進

タクシー業界において今後取り組む事項追加9項目
「タクシー業界において今後新たに取り組む事項について」への追 加 項 目

2種免許取得要件緩和

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日本交通の取組

「今後新たに取り組む事項」以外にも、先日開始された日本交通のGO Crew と GO Reserveも、「乗務員不足の解消」には有効な方策なのです。

【ニュースリリース】アプリ専用車『GO Reserve』専用乗務員『GO Crew』が始動 | 東京最大手のタクシー会社日本交通は創業90年、東京最大手のタクシー・ハイヤー会社です。日本交通のタクシーは、24時間365日配車可能です。
【ニュースリリース】アプリ専用車『GO Reserve』専用乗務員『GO Crew』が始動 | 東京最大手のタクシー会社 www.nihon-kotsu-taxi.jp
【ニュースリリース】アプリ専用車『GO Reserve』専用乗務員『GO Crew』が始動 | 東京最大手のタクシー会社

GO CrewとGO Reserveで考えたこと – 道中の点検

これは「雇用の窓口を広げ、運転手不足解消と多様化する働き手の受け皿に」と始まりました。

この仕組みは、地理と運賃トラブルを削減するのに効果的です。そのことは、雇用の窓口を広げるだけではなく、タクシー運転手の離職原因をも縮小させることにほかなりません。

また、日本交通の個人タクシーも、運転手不足解消のために、この時期に行ったと考えています。

【ニュースリリース】「日交個人タクシー」2名と業務提携開始 | 東京最大手のタクシー会社日本交通は創業90年、東京最大手のタクシー・ハイヤー会社です。日本交通のタクシーは、24時間365日配車可能です。
【ニュースリリース】「日交個人タクシー」2名と業務提携開始 | 東京最大手のタクシー会社 www.nihon-kotsu-taxi.jp
【ニュースリリース】「日交個人タクシー」2名と業務提携開始 | 東京最大手のタクシー会社

このように、タクシー業界も手をこまぬいている/いたわけではありません。

しかし人材不足は深刻化する一方です。その隙を縫うように、ライドシェアの話が出ています。ただ、ライドシェアが悪いだけではありません。このような供給不足を起こした、そして起こしているタクシー業界も悪いのです。

離職率の問題

その悪い理由のひとつに、離職する人の多さもあげられます。窓口も広いが出口も広いのもタクシー業界の特徴なのかもしれません。

「2020年までの10年間で平均して年間約1万1000人ぺーすで減少」1 し、「2020年4月~2021年3月末の1年間で2万1177人が減少」した、そのことこそ問題なのです。

外国人労働者採用へ本腰

そして、運転手不足の切り札として、特定技能制度を利用した外国人労働者の採用が行われようとしています。ボクは、来日していただいて、一緒に働くことには賛成です。なぜならば、人材不足だからです。そして昨今の技能実習生制度を考える時、タクシーという職場は悪くないのではないかと思うからです。(利用者からのイジメはあるかもしれませんね)

良い悪いは別として、タクシー業界は「今後取り組む事項」を実行してきました。そして運賃を上げ「すごい」状況の売上になって、さらに個人タクシーの新規枠も拡充したというのに、運転手不足は解消されません。

なぜでしょう?

雇用の窓口を広げること、それとともに、居心地の良い広場を作ることも必要なのでしょう。個人主義、出来高払制の賃金という成果主義、自主的な営業、これが居心地が良いという人もいるのでしょうが、ほんとうは、そこが問題だったりするのではないのでしょうか?どうでしょう?

東京新聞4月17日 外国人採用へ

  1. 全国自動車交通労働組合連合会(全自交) l ハイタク情勢

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