JPN タクシーの不具合
「JPNタ不具合相次ぐ」JPNタクシー不具合に関する衝撃的な見出しですよね。1
トヨタ自動車のタクシー専用車「JPN TAXI」(ジャパンタクシー、ユニバーサルデザイン・LPガスハイブリッド燃料仕様)に、不具合が相次いでいることが6日、東京ハイヤー・タクシー協会(川鍋一朗会長)の環境・車両資材委員会の調査結果で分かった。95%の車両が該当しているようで、部品・箇所別では「インバーター(電力変換器)の故障」や「スライドドアが動かない」などが目立っているという。東タク協はトヨタに報告し、改善を要望する方針。
アンケートの概要
- 東京ハイヤー・タクシー協会に属する322社中205社が回答
- 回答事業者の保有台数11026台中95.3%10511台でなんらかの「不具合」が発生
「不具合」発生個所及び台数と割合
- インバーターの故障 1181台 11.2%
- リアショックの油漏 1010台 9.6%
- スライドドアが動かない 441台 4.2%
- シリンダーヘッドの故障 162台 1.5%
- ウインカー音が鳴らない 152台 1.4%
- フロントタイヤの軸部分の異音 94台 0.9%
- その他 7471台 71.1%
インバーターの故障
最多の故障個所になっているインバーターとはどんなものなのでしょうか。
初めに、インバーターとはなにかを説明します。ハイブリッドカーや電気自動車には、(略)(次の)3つが搭載されています。1つ目が電気を蓄えるバッテリーと、2つ目が真ん中にあるインバーター、そして3つ目が車のタイヤを回すためのモーターです。
このモーターは、交流で使われることが多いので、バッテリーからの直流電流を交流に変換する必要があります。そこで必要となってくるのが、インバーターです。
図3 インバーターとは2
保証期間
JPN TAXIの契約が見当たりませんので、プリウスで比較します。プリウスの保証は特別保証部品ということで「新車から5年または走行距離100,000km」までとなっているようです。3
故障と不具合と経年劣化
記事では「走行20~25万キロくらいになると増えるので、トヨタからは『経年劣化です』と言われてしまう」ということです。
プリウスの保証期間が10万キロです。今回の調査で故障が増えているのは、その2倍、2.5倍の距離を走行してのことです。タクシーは一般車両と比較すると酷使されます。その環境下での2倍、2.5倍の走行距離です。
それは故障なのでしょうか?不具合なのでしょうか?それとも経年劣化?
インバーターはハイブリッド車両だから装備されています。それは燃費と引き換えにされたリスクと言えるかもしれません。
新しい時代
これを「故障」や「不具合」とするのならば、他のハイブリッド車についても「故障」「不具合」とし保証期間を20万キロに延長するのでしょうか。
思うのですが、「20~25万キロくらいになると増える」のならば、そのタイミングで交換する整備制度にすれば良いのではないのでしょうか。例えば、タイヤ交換やバッテリー交換のように経年での劣化に対応すれば良いのではないのでしょうか。
この新しいハイブリッド車両にも、従前の専用車両コンフォートのように10年40万キロという耐久性を求め続けるのでしょうか。
東京新車、名古屋新車
JPN TAXIは新しいタクシー車両と言っても、導入率は東京だけが高くて、地方では珍車扱いです。
導入から5年、そろそろ東京で使用した中古が地方に流れてきます。
いわゆる東京新車、名古屋新車です。東京新車とか、走行距離の割には年式が新しい東京で使用されるタクシー車両のことです。見た目が新車みたいなので、そう揶揄されています。
地方のタクシー会社では、その走行距離20~30万キロ程度の「新車」を中古車を購入して使用するところも珍しくありません。
JPNならまだましで、いまだにコンフォートの中古を購入して代替えしている会社もあります。それが、JPN TAXIの導入率を遅らせている原因でもあります。
不具合車両の地方への流入
上で述べたように、今回指摘されている5年20万キロは、ちょうど地方に流れていく車歴になります。インバーターに「故障」の発生が増加する直前の車両が地方へ流れてきます。
「そろそろ20万キロになりそうだから、代替えするか」なんて話が聞こえてきそうです。
考えられること
- 経年劣化部品として定期的に交換
- 40万キロ程度までは「不具合」が発生しないインバーターの開発
- 不具合発生時に安全に走行できるエンジンシステムの開発
- もうハイブリッド車は使用しない
- 5年20万キロを超えた車両の使用制限
現実的には1ではないですか?
トヨタと、そしてJPN TAXIから撤退できないのではありませんか。
利用者と運転手の安心安全のために
タクシー事業における車両費のコストは高いわけではありません。それならば、整備基準を変更して、故障する前に交換するほうが低コストになりそうです。
図6 タクシー事業 原価構成表4
最後に
今後もJPN TAXI導入にあたっては補助金が支払われるでしょう。1台当たり60万円近い補助金を受給している事業者もあります。
これは、UDタクシー導入という目的のための補助金です。持続可能給付金でも中小企業補助金でもありません。
そして、ユニバーサルデザインという大義は、全ての人が安心安全に移動できるタクシーを目指しているのではないのですか?移動で人を幸せに、ではないのでしょうか。
それらを考慮したうえで、利用者の安心と安全のために、そして運転手の労働環境改善のためになにが最善か考えてください。
早めの交換、それが、とりあえず現状出来得る安全対策ではありませんか?
「不具合」なのか「故障」なのか「経年劣化」なのかよりは、今回の事実が分かったのなら、早めの整備、早めの交換、ということなのです。利用者と運転手の安心安全のために、すぐにでも10万キロ経過で交換と、不具合発生個所の総点検を行ってほしい、そう考えています。
タクシー運転手の労働環境は、車両の良悪なのです。