配車による実車率の改善について

タクシー事業の運行収入について概観します。そして配車と実車率について考えてみます。

最近問題視されている供給不足を引き起こす原因は、実働率の低下です。実働率とは動いている車両ですから、タクシーの所有台数が変わらない状況では(減車休車で減少はしますが)、運転者数に影響されます。

実際には時間実働率で正確な値を求めるのですが、ボクたちがよく目にする実働率は台数実働率(実働台数/所有台数)でしょう。

運転手不足が実働率(稼働率)を押し下げ、その結果運行収入が戻らないタクシー業界が何をしなければならないか、少し考えてみます。

事業者の運行収入

事業者の運行収入は(1台当たりの(客単価×回数))×(実働率×所有台数)になります。客単価×回数が運転手の運行収入になり、その集合が会社の運行収入です。

客単価

運賃を値上げしたから客単価も上がっただろう、と言う人がいます。しかし、そう考えるのは早計で、利用者を選別できない状況下では確実ではありません。

ではどうするかというと、初乗り運賃、迎車料金、予約配車料金、待ち料金を課金する、あるいは、それら料金の値上げをすることで客単価は上がります。

回数

新人の頃、管理者から「もう一回やって帰庫」なんて指導されました。確かに回数は増えるし、時間実働率も上がるのですが、長時間労働を誘発し効率的ではありません。しかし方法はないわけではありません。配車により回数を加増させます。回数が増えるだけではありません。実車率が上がります。

概説します。

ただ単に走っているだけでは実車率は上がりません。例えば、乗り場から乗車して空車になる、そして乗り場に戻る、そういった繰り返しでは実車率50%がやっとです。

では、どうするかというと、配車を利用することです。空車になった場所に配車があればいいのです。そして空車、実車の連続にする。そうすると実車率100%に近づきます。こうした配車による実車率の向上こそ必要です。あるいは配車があるところに、実車で走れば良いだけのことです。

タクシー実車率100%図
図1 実車率100%のイメージ図

https://kixxto.com/10215/

実働率

これは運転手を増やすことが最も効果的な方法です。

今回の一連の運賃改定の目的に労働条件の改善があります。労働条件が改善されれば定着率が高まり、入職者が増え、実働率が上がる、と言うことです。しかし、そう簡単にはいきません。運転手不足による実働率の低下は、タクシー会社の収益率を低下させ、運行収入を押し下げています。

図2は、車当たりの実車率、運送収入は2019年度比で100%に近づいているのに、会社の実働率と総英修は80%台のままです。

三河地区2022年9月度タクシー実績2019年度比
図2 三河地区2022年9月度タクシー実績2019年度比

実働率を分解してみます

1台のタクシーが1日どれぐらい動いたか、それが時間実働率です。実働率は台当たりと時間当たりがあります。1台のタクシーを6時間稼働させるのも、20時間稼働させるのも同じ1台動いたということになります。これが台当実働率です。

この台当実働率を上げると言っても、とりあえず1日1回走らせれば良いというものではありません。1台の車両の実動時間を実車率の高い時間帯に使うということが課題になります。

それには、交番の効率化や勤務体制の見直しを行い、実車率の高い時間帯に実動台数を増やすということになります。

1車2人制、2車3人制という交番の仕組みは、運転手の多い時代に車両をいかに24時間365日稼働させるかということで考えられました。

運転手不足の現況では、いかに忙しい時間帯に稼働率を上げるかが課題になります。ということから、1日の勤務時間を朝と夜の繁忙時に分けるという「中抜き勤務」も必要だと考えています。GO Crewのように分業も、繁忙時間帯に実動率を上げる方法でしょう。

所有台数

これは規制がありますので、増やすことはできません。やはり実働率と実車率を上げることが肝要ではないのでしょうか。ただし、一回当たりの乗車人員を増やすことで同じ効果が獲得できます。相乗りタクシーやMobi、NearMeがそれです。

配車による実車率の改善

これまでのことから運行収入は

客単価×回数×(実働率(実働時間×実車時間)×所有台数)になります。

運行収入を上げるためには、これらの要因ひとつひとつ改善することです。

この数値改善に最も必要なのが配車です。

配車に係る料金を上げる。配車で回数と実車率を増やす。繁忙時間帯を配車で創作する、など、配車を効果的に使うことにより、運行収入は上がるはずです。

配車回数 対2018年比 2019年から2022年
図3 2019年から2022年各年の配車回数対2018年比

しかし、配車による運行収入の改善と言いながら、運転手不足、実動率低下による影響で、配車回数は80%程度に落ち込んでいます。

落ち込んだ配車回数、そのために、迎車専門のGO Crewが登場しました。こう考えると、GO Crewは考え尽くされている、そう思うのですが。いや、事業者の運行収入のためではなく、公共交通としての責務を果たすために、供給不足解消という大義のために、配車がある、そういうことです。

流しという営業スタイルは、実は、効率が悪いのです。そして危険でもあります。事前確定運賃という配車システムでは、地理や運賃に関するトラブルが激減します。乗り逃げが発生するのは、主に流しではないですか?

営業効率と運転手の安全のために、やはり、配車は重要なのです。そして待機場所の拡大細分化により、配車を中心とした事業に変換する時期なのです。図2の実動率、実車率を創り出せば良いのだと考えています。その話は次にします。

業界課題である乗務員・供給不足の解消へ | GO株式会社

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA