実車率の問題なのだ
実車率の話をしたいと思います。
結果から先に言うと、タクシーの収益には実車率が重要な要素になります。
稼働時間に対する実車率(実車時間/稼働時間)、稼動距離に対する実車率(実車距離/走行距離)、どちらも高いほうが効率よく稼げるということです。
さらに実車率が高くなれば走行距離が減り、事故、燃料、時間、など多くのコストが減少します。
タクシーは走ってはダメ、ということです。
長距離 ≠ 高営収
それでは、まず図1を見て下さい。
図1 タクシーの乗車距離ごとの運賃比較表
タクシーの運賃は距離と時間によって逓増します。ですから、いくらスピードを出しても運賃が高くなるということはありません。スピード ≠ 高営収です。
また、一定の距離まで定額の初乗り運賃制なので、その距離までは同じ運賃になります。例えば、1メートルでも1,000メートルでも500円です。長距離 ≠ 運賃も成立します。
ではそのことを図1によって説明します。
黄色の線は、6,000mの距離を一組で利用した場合の運賃逓増線です。初乗り1,096m500円、加算255m100円(東京地区の新運賃を想定)での運賃逓増線です。5,900mあたりで2,500円になります。
次に、緑の線は初乗り距離(1,096m)ごとに一組のお客様をお乗せしたときの運賃になります。黄色の線より早く運賃が上昇するのがわかります。4,400メートルで2,500円になっています。
赤は2,000メートルの距離で5組が乗車したときです。
さらに青は100メートルごと5組が乗車した場合です。500メートルで3,000円になります。
長距離 ≠ 高営収ということです。
タクシー運転手は短距離を(どちらかというと)嫌う傾向にあります。その一番の理由は短距離=低単価だと思います。
しかし、上記のように短距離のほうがコスパが良いのです。500メートルで3,000円です。または、15分程度で3,000円です。
初乗り運賃と迎車料金
上の図のような現象が起きるのは、初乗り運賃制だからです。初乗り距離までは「乗り捨て」という超過支払いが発生します。ただし、利用者にとって「乗り捨て」なのであって、運転手にとっては「乗り拾い」、超過利益になります。
さらに、配車では迎車料金が加算され、運賃は加増します。(図2)
図2 迎車回送料金付き運賃逓増グラフ
迎車回送料金420円加算時にはグレーの線になります。3乗車で2,800円まで急上昇します。
このように、長距離の営業収入が高く、短距離が低いというわけでもないのです。
実車率100%をめざして
図1と図2では距離と営業収入の相関性を概観しました。どちらも連続した実車、実車率100%での仮定です。
実際の業務では図1図2のようなことは起きません。
次の図3、赤い線が実際のタクシー業務の実車と空車(時間と距離)を図にしたものです。
図3 タクシーの実車空車グラフ
タクシー業務は、実車になり走る、そして空車で走る、そして実車、空車、これを繰返します。
空車時間がない(空車距離がない)と青い線になります。これが前項で考えた時間、距離とも実車率100%の場合です。
実車率100%のグラフを平面化したのが、次の図4です。
図4 タクシー実車率100%イメージ図
少し説明しますと、出勤して車庫で乗車→空車・直後の実車→空車・直後に実車、これを繰り返します。空車は最終利用者が降車して帰庫する時間距離の赤い矢印の部分だけです。
こんなことはなかなかありません。が、これが最も効率的です。
次の図5は、よくあるパターンです。
図5 タクシー実車率50%イメージ図
出庫して乗り場に向かいます。乗り場から実車になり、お客様を降ろしたあと、また市街地にある乗り場へ戻ってきます。その途中で配車がある場合もありますが、ほぼ乗り場や繁華街で拾うスタイルです。
この方法だと実車率はせいぜい40~60%です。
車庫待ちなどの営業形態の区域では、50%いけば良いほうで、平均すると距離実車率で40%強、時間実車率ではそれを下回ってしまいます。
さらにこの戻るという行為が先急ぎを引き起こします。スピードを出す、第二通路から強引な左折、あおり運転、事故、この場面で起きます。
タクシーの事故の7割は空車時に起きています。(田原調べ)
配車の時代なのだ
このように、タクシーは時間においても距離においても、50~60%は空車の状態です。そしてその状態において事故や違反が起きます。空車走行=ムダなのです。
実車率100%においては、走行距離=実車距離=収入です。
ということは、効率よく稼ぐには“走るな”ということです。
「いやいや、空車直後にそう都合よくお客様がいないだろ」という声が、こうして書いている間にも聞こえてきています。
そうなんです、が、実車率100%に近づける仕組みを作ることが、業界の課題であり、私たちにも幸せなことなのです。
ではどうするのかというと、配車を主体とした営業形態への変換だと思うのです。ということです。
ということで、さらにタクシーへ帰れなのです。