タクシーへ帰れ
タクシー運賃
さて、いよいよ本論です。
初乗り運賃は運送収入(=運転手の賃金)に影響しません。美味しい部分でもあります。
では、なにが影響するかというと、初乗り距離後の加算運賃(爾後運賃)になります。なぜなら、初乗り距離の利用者は6%ですし、平均4km利用するからです。(運送収入を考えるのなら、その4kmあたりから収益が最大化するような賃金設計にするでしょう)
影響しないことの証明をします。
図4は尾張三河地区、刈谷交通が要請した改定運賃(1.0km 620円・229m 100円)と、予定されている東京特別区・武三地区の改定運賃(1.0km 500円・255m 100円)の比較表です。
折線は
⑤=東京新運賃(1.0km 500円・255m 100円)
②=⑤+迎車回送料金(420円)
①=②+時間指定予約料金(420円)
④=尾張三河申請運賃(1.0km 620円・229m 100円)
③=④+迎車回送料金(120円)
④の尾張三河地区の申請運賃の方が、⑤の東京予定運賃より高くなっています。
ところが、これに迎車回送料金が加算されると、その差420円と120円によって、初乗りから2.6kmあたりまで東京のほうが高くなります。その後は加算運賃の高い尾張三河が追い抜きます。
そして、時間予約料金(420円)が加算されると①の傾きになり、基本運賃と逆転してしまいます。
このことは、当たり前といえば当たり前なのですが、これがタクシー運賃の解りにくさです。
配車を制するものがタクシーを制す
下の記事は、東京交通新聞(2022年8月22日付)の「東京のタクシー無線グループ別配車回数(7月分)です。
7月だけで日本交通の配車回数が、1,128,318回あります。これに420円を乗ずると、473,893,560円、5億円近い規模になります。
流しと配車ではこれだけ違うと言うことです。
しかし、運転手は配車を忌避する傾向にあります。
その主な理由は、迎車に要する時間と配車キャンセルのリスクです。
しかし、グラフに見られるように、利用料金の差(②と⑤)を考えると、忌避する理由がなくなりませんか?
運送収入は初乗り運賃ではなく、料金によるところが大きい、のです。
さらには、この無線回数、その金額を考えると、無線配車を忌避しないシステム(例えば、キャンセルになっても初乗り運賃と迎車料金はもらえる)に変えることが必要ではないのでしょうか?
オンデマンドへの回帰
「タクシーは選ぶ時代」になっています。だとすると、配車を制するものがタクシーを制するのではないでしょうか。
付加価値を高めるために、優先配車や車両指定なども行われています。ただし、その料金が運転手に還元されないことが問題です。それが解消されれば、利用者だけではなく、運転手にも価値あるものになります。選ばれる運転手になる、はずです。
「いつ来るのか分からない」
「雨の日は予約もできない」
「イベントのある日は飲みにも行けない」
お客様の声です。
……
乗りたい時に乗れるタクシー、そんなものは付加価値ではありません。それがタクシーなのです。
乗りたい時に乗れるのがタクシーなのです。
本来の定義であるオンデマンドへの回帰。そこを考えることが重要なのだろうと思います。
タクシーへ帰れ、なのです。