入社祝い金100万円は高くないよ
タクシー会社への入社祝い金100万円は高いのでしょうか?
その前に、職業紹介事業者が入社祝い金を支払って勧誘をすることは禁止されています。
入社祝い金って?
祝い金として贈与、それとも入社後の労務の対価の一部なのでしょうか?
例えば、企業としては、その額を支払っても入社してほしいのでしょうから、元は取れる、のでしょう。
ということで、「入社祝い金100万円」という広告について少し考えてみました。
図1.歩率別収益表
グラフの説明
まず初めに、図1の説明からします。図1は、
- 損益分岐点が営業収入60万円で歩率60%で0
- 1の状況で、歩率を50%~55%に下げると
- 毎月どれくらい利益がでるか
を表したグラフです。
① 600,000 -(600,000×0.6)=240,000
②{600,000-(600,000×0.5)}-240,000=60,000
①は
- 営業収入が600,000円
- その60%(360,000円)が運転手の月例賃金分
- 経費が240,000円
- 利益が0円
②は
①と同じ条件で、運転手の賃金分である歩率を60%から50%に下げた場合
- 50%(300,000円)が運転手の月例賃金分
- 経費が240,000円と同じなので
- 利益が60,000円
歩率について
運転手の賃金=営業収入×歩率ですが、この歩率が事業者によって違います。違ったとしても、臨時給(ボーナス)や退職金としての名目で、何パーセントかを積み立てている事業者もあります。
月例給50%+臨時給5%+退職金積み立て5%=60%
つまり、単純に歩率だけでは賃金の多寡が解りにくいのが、タクシー業界です。そのことを揶揄して「知恵の結晶」と言ったりします。
入社祝い金100万円は高いか
入社祝い金も同じで、営業収入に対する歩率を調整し、それを入社祝い金として支給するのならば、事業者の腹は痛みません。
図のマーカー部分は折線グラフ上の100万円に到達した位置です。
- 歩率50%では17か月目に到達します。
- 最も遅い55%では34か月目です。
入社祝い金の条件
例えば、100万円を一括ではなく、入社3年目までに支給するという条件ならば、55%でも3年目で元は取れる計算です。
損益分岐点を費用240,000円にしたのですが、200,000円だったら、利益はこの数字に毎月40,000円が加算されます。
または、営業収入が60万円以上なったら、(営業収入 * 60%) – 600,000 = A
Aの利益が加算されます。
利益を出す3つの方法
- 歩率を下げる
- 経費を削減する
- 損益分岐点より営業収入を上げる(足切りを上げる)*足切り≒ノルマ
が考えられます。
1は40%~60%の間に設定されます
2はどこの会社もやっていることでしょう。ただ労働集約型産業なので、1でその結果を出そうとします
3は「売上をやってこい」と管理者が指導したり・・・。あるいは、足切(ノルマ)で調整します。
良い会社?
このように、100万円の入社祝い金は高くはありません。結局、入社後の労務の対価として支払われ(たとして)、その対価は歩率により決定されるからです。
それどころか、支給条件が離職への歯止めになります。離職率の高い業界なので、長くいてもらいたいという狙いもあります。
タクシー運転手の賃上げは歩率を上げることにほかならないのです。
トヨタ期間従業員の場合
図1に、トヨタ自動車の期間従業員に支給されている、慰労金と報奨金を加えたのが、次の図2です。
図2 歩率別収益表とトヨタ期間従業員慰労金・報奨金
支給される額は次の図3です。
トヨタの場合、月例給とは別に2年11か月で300万円超支給されます。
このことをどう捉えるかは別として、ボクがタクシーではなく、トヨタを選んだ理由もこれです。
例えば坂下さん
ブログ記事一覧|期間工ブログ ネオ期間工 坂下 貯金1,165万円達成!!!
坂下さんは、期間工2年で800万円貯金をしています。
このように、100万円、につられて入社する人もいるかもしれませんが、よく調べると、あるいは入社して分ったんだけれど、なんてこともあるかもしれません。
でも、タクシーの場合、賃金制度が分りにくいこともあって、その金額が高いのか安いのか、よく分らない、と思ったほうが・・・。
それならば、自動車工場で3年勤めれば、なんてことになるのではないでしょうか?
ということで、タクシー業界の入社祝い金100万円は高くないよ、です。