三河地区のタクシー運賃値上げについて、賃金は上がりますか?
三河地区のタクシー運賃値上げに関する、運賃改定要請が刈谷交通から7月8日に提出されました。それから、約2か月が過ぎました。
内容は次のとおりです。
初乗運賃:1.0kmまで 620円(現行1.178mまで 600円)
加算運賃:229mまで 100円(現行251mまで 90円)
この要請を受け、他の事業者も申請しているようです。
同地区は63者で所有車両数が2,270両。このうちの7割の1,589両の要請で運賃改定要否の判断を行うことになります。
昨年からの各地の値上げの状況から考えると、来年の3月までには改定が行われる見込みです。
運賃は高いが賃金は安い
申請内容をグラフ化し、先日発表のあった東京地区の新運賃とともに比較表を作成しました。
図のように、多摩地区と尾張・三河地区の現行運賃と、東京特別区・武三地区の新運賃が同程度です。今回申請された刈谷交通のものが最も高くなります。
タクシー運転手の賃金は出来高給なので、運賃の改定が賃金に反映されます。三河地区のタクシー運賃値上げが、ボクたちの賃金に反映されるということです。
ただし、運賃が高いから賃金も高い、ということではありません。
賃金=売上×歩率ですから、同じ売上でも歩率の高低で賃金差が生じます。例えば、三河地区だと50%前後なので、都市部の60%という10%の違いによって、運賃差は結局は近似していきます。それが次の図です。
このように、運賃差があっても、歩率次第になります。
そしてこのことが、タクシー会社を選ぶ基準になったりします。ボーナスや退職金、福利厚生の違いがあるので、単純に分率だけで選べないのですが……。
遅いんだよ〜(運転手の思い)
というのも、北九州は今月から値上げが行われます。東京も11月には実施されるでしょう。
おそらく、値上げが年末の繁忙期からのほうが、賃金が上がったことを実感できたはずです。会社も身入りが多かったはずです。だから、北九州、東京、名古屋…多くの地域が昨年から申請をしたのですよ。
しかし、来年3月なんて閑散期になると、その賃上げ感は薄い……。
高いんだよ〜(利用者の思い)
利用者にとってはどうでしょう。
社会全体の賃上げがないまま、物価だけが上昇するというスタグフレーションの経済下では、タクシーという高額な移動手段が避けられる可能性も高まります。
確かに、タクシーは価格弾力性が低いのですが、それは代替手段がないからです。
バスや鉄道の減便や廃止により、公共交通空白地、移動困難者が増えている中で、タクシーという最後の砦まで利用が困難になる。
公共料金の14%の値上げは大きいです。
特に地方の利用者の多くは高齢者です。
もうダメだ〜(事業者の思い)
タクシー会社はどうでしょう?
労働集約型産業ですから、このまま運転手不足が続くと、運賃が上がったとしても、収支は改善されずに倒産する中小零細タクシー会社も出てくるはずです。
公共交通空白地の拡大により移動手段が多様化しています。例えば、NPOによる自家用有償や、自治体によるデマンド交通、コミュニティバスなどです。
その環境整備にタクシー会社が参加できれるかが、生き残りの鍵になります。きっと。
運賃は上がったけれど、会社がなくなった…、という悲劇も起こり得ます。
とにかく、コロナ禍で弱ったタクシー業界の体力は回復しないまま、運転手不足によりさらに弱っていて、コロナ禍4年目になる2023年3月まで持てばいいけれど……そんな感じです。
タクシー会社の廃業倒産は、地域住民の移動の困窮化につながります。ボクが見てきた地方のことを考えると、Uberを含めて自家用有償あり、じゃないとどうすんの?です。
以上、少し思いついたことを書いてみました。
尾張・三河地区のタクシー運賃改定要請のお知らせ 中部運輸局自動車交通部