maas、centxについて考えたこと
maasとcentx、升と銭湯ではない。maasの複数形でmaass。それと3月26日にリリースされた名古屋鉄道のエリア版maas(エリア版maasというのもへんだよね)centxについてなのだ。
maasとは
maas(マース:Mobility as a Service)とは、地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービスであり、観光や医療等の目的地における交通以外のサービス等との連携により、移動の利便性向上や地域の課題解決にも資する重要な手段となるものです。
centxとは
名古屋鉄道の「エリア版maas」アプリ
- 乗換案内・ルート検索
- おでかけ情報
- Webチケット
- マイ駅・マイバス停
- タクシー配車
- 交通系IC残高
- その他
などの機能を搭載している。
もともとあった名鉄Touchが生まれ変わって「名鉄Touch機能に加え『地点検索、マルチモーダルルートの検索』各種チケットの購入・決済」が出来るようになった。
地点検索、マルチモーダルルートの検索は、これまでYahoo!やGoogleと言った検索プラットフォームやNAVITIMEなどの乗換案内のサイトやアプリでも可能だったので、それほど目新しくもないものの、カーシェアやシェアサイクルも含まれているのでマルチ感はある。
しかしタクシーの利用となると、名鉄系のタクシー会社だけになるので、使いにくい。
プラットフォーマーの細分化により利用者の利便性は落ちる。鉄道やバスの基幹路線についてはmaas化しやすいのだろうが、例えば駅まで、駅から、というファーストマイル、ラストマイル(タクシーが受け持っている範囲)をどう組み入れるかが、今でも、そしてこれからも難しい。
centxも名鉄(系)タクシーのみ、となると、徒歩~バス停~出発駅~到着駅~目的バス停~徒歩、という組み合わせしか出来ないことが多くなる。
タクシーの役割と事前確定運賃
そのファースト・ラストマイルを担っている/担っていたのがタクシーだが、maasに組み入れるには
- 繁忙期、繁忙時には供給できない
- 降りるまで料金が分からない
という問題を抱えている。
供給不足は時間予約で解決できる。2についても事前確定運賃で解決できる。
事前確定運賃については「乗客の不安を取り除く」「外国人観光客らが安心してタクシーを利用できるようにする」のが狙いだったのだが、実はそういったことよりもmaas「複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービス」にするために必要不可欠になっている。
移動の分野で料金が時価なのは…タクシーだけだ。
centxは便利になった
確かにcentxは便利になった。そしてボクは不便になった。
というのは、これまでYahoo!乗換を使っていて、それで十分だったのだが、こういったアプリが出ると、いったいどのアプリをどう使えば便利でスムーズなのか迷っているからだ。
要するにmaasがmaassになって、「移動サービスを一括で行うサービス」が複数あって「一括」ではないからだ。
名鉄のエリア版maas、次はJR、JR東海、つばめ、豊鉄……各社のエリア版が出て、そして全国版や日本版も出て……。配車アプリの時がそうだったように。
いつまでたってもcentxでは名鉄(系)タクシーしか呼べない。名古屋はいいとしても、同じエリア版と言われるエリア内でも使えない場所が出てくる。その前に「エリア版」「日本版」「地域版」「東海版」……maasって……。
プラットフォーマーの乱立、アプリの乱発、利用者の混乱
ボクは、どのアプリを使おうとも利用者が望んでいる最適なサービスが受けられる、あるいは選択できるのが、maasだと思っていた。
例えば質問形式で入力すると最適な解が出てくるような…。
黎明期とはそういうものなのか?乱立し淘汰されてゆくのか?そうなると、開発者の人間性とか開発思想なんてものが求められるのか?あるいは強力なリーダーシップとか。
結局、利便性とか生産性なんてものに内在されている非人間性から目を背けずに、サービスの本質である人と人の関わり合いに注目する、そんな設計、そんな開発思想、そんな装置になってほしいと思ったりする。
だってmaasってのは、Man as a social animal の略なんだし。違う?
リリースの日には名古屋鉄道の株価も2021年6月ぶりの高値を付けたんだけれど、それからど~んと落ちているのはcentxへの落胆を含意してる?