名古屋タクシー運賃改定
名古屋市のつばめ自動車が運賃改定を中部運輸局に申請し、名古屋交通圏1でもタクシー運賃値上げになる可能性がでてきた。
タクシーのつばめ自動車(名古屋市)は一日、名古屋地区の初乗り運賃などを値上げする運賃改定を中部運輸局に申請したと発表した。申請は三月三十一日付。同社は新型コロナウイルス感染拡大の影響や原油高に伴う燃料費高騰が経営を圧迫しているためと説明している。
北九州のタクシー運賃改定申請が認められたのが3月11日。そして、東京特別区・武三交通圏の運賃改定申請が受付られ、国土交通省関東運輸局が改定要否の判定に入ったのが3月24日。値上げの季節。
コロナ禍でのタクシー運賃値上げについて
その内容は次のようになる。
- 価格が上下する燃料費は運賃に上乗せしないで、サーチャージ料のような制度で調整する
- JPN TAXIの導入で燃料使用量げ減少している
- コロナ禍での総走行距離減少で原価構成比が変化している
- 燃料代高騰が経営を圧迫する仕組みにしてしまうと賃上げができない。(変動する価格を賃上げできない口実にされる)
- 「災害、その他の理由で異常な原価」での計算は正当性がない(101号通達2とは相反するのではないのか)
- 1台当たり14万円もの石油ガス税を支払う税制の改善
それに、愛知県は「タクシー事業者燃油価格高騰対策支援金」3として「乗合バス・タクシー事業者に対して価格上昇分に相当する額を支援」している。その額、1台当たり26,000円。
さらにタクシー事業者への燃料費高騰に対する支援措置4も決まっている。それなのに、燃料高騰分を運賃に上乗せすることに利用者は納得するのだろうか。
タクシー離れへの懸念
価格弾力性が低い産業なので、運賃値上げで需要が減少することはない。そう高を括っているのだろう。しかし支援されながら運賃にも上乗せするということは正しいのだろうか。
ボクは「燃料高騰」を理由に値上げをすることの是非を問うているのである。「運転手の労働条件の改善」を値上げの第一目的としてもらいたいのだ。
北九州ブロックでの値上げの理由が、第一交通産業(北九州)の「運転手の労働条件改善やキャッシュレス決済への投資」としたようにだ。
コロナ禍でボクたちが社会の公器として必死にやってきたことに対して、賃上げという形で認めてもらうことは、正しいことだと思う。
そして賃上げし運転手の労働条件を改善しなければ、業界は生き残れない。
それなのに、見よ、この低賃金を、長時間労働を。
図1 タクシー運転者の月間労働時間・年間賃金水準推移5
地方のタクシー運転手はこの表より長時間労働、低賃金になっている。すでに最低賃金という底に住みついているのだ。
タクシードライバーの離職
そして、賃金が上がらないで物価だけが上がってゆく。ワーキングプアと言われるタクシー業界の低賃金と、利用料金の高騰は、まるで「資本論」における搾取の構図ではないのか。そのうえ資本家は歩合給で威喝する。
今、賃上げを第一義に運賃値上げをしないと、この国で起こっているスタグフレーションに、ボクたちはいよいよ貧しくなる。
もう一度言う、運賃値上げが運転手の労働条件改善を理由に、コロナ禍でさらに貧困化しそれでもエッシェンシャルワーカーとして踏ん張っているタクシー運転手の命を繋ぐものにしてもらいたい。
ただね、業界が再編されることを願っている人たちもいて、タクシー業界の崩壊、新しプレーヤーの登場、というシナリオを描いている人もいる。本当に業界が生き残るために、タクシー会社が生き残るためには運転手の賃上げが必要なのだ。
タクシー業界の終わりの始まり、つばめがもうやってきて巣作りを始めた4月なのだ。
図1 つばめ自動車運賃改正申請案と現行のタクシー運賃比較表
中日新聞記事により計算
つばめ自動車によると、初乗り運賃を現在の「一・〇三一キロで四百五十円」から「一キロで五百円」に値上げを求める内容。加算運賃も「二百三十一メートルごとで八十円」から「二百十二メートルごとで九十円」とした。
図3 愛知県乗合バス・タクシー事業者に対する燃料高騰支援
原油・原材料価格高騰対策の実施について – 愛知県
図4 原油価格高騰に対する緊急対策
- 名古屋交通圏(名古屋市全域・瀬戸市・津島市・尾張旭市・豊明市・日進市・愛西市・清須市・北名古屋市・弥富市・愛知郡・西春日井郡・海部郡)
- 「一般乗用旅客自動車運送事業の運賃改定要否の判断基準」の「災害、その他の理由によって異常な原価が発生し、当該地域の原価の標準を算定するために適当と認められない事業者」
- 原油・原材料価格高騰対策の実施について – 愛知県
- ①0302-3燃料高騰対策PR資料 国土交通省
- TaxiToday in Japan 2021 全国ハイヤー・タクシー連合会