春の交通安全週間で考えたこと

「平成28年春は、『子供と高齢者の交通事故防止』を運動の基本とし、自転車の安全利用の推進(特に、自転車安全利用五則の周知徹底)、後部座席を含めた全ての座席のシートベルトとチャイルドシートの正しい着用の徹底、飲酒運転の根絶を全国重点として」、4月6日から15日まで春の交通安全週間だ。4月10日は「交通事故死ゼロを目指す日」だった。

春の交通安全週間 平成28年 ポスター

先日の世田谷での4人死傷事故のように、どんなに厳罰化されても飲酒運転事故はなくならない。だから、自動運転の前にメーカーがやらなければならないことは、今起きている事故をなくすという社会的責任を果たすことだ。しかし、国もメーカーもシートベルト未装着や呼気によるアルコール検査でのエンジン始動装置を、いますぐにでも義務化できるはずなのに、しない。人命よりも経済のほうが重要だと国家もメーカーも、そして消費者というボクたちも考えているからに違いない。

という、経済ゲームのジレンマみたいなものについてではなくて、ボクたちタクシー運転手が事故を起こしてはいけない理由を少しだけ書いてみたいと思う。それはただ一点、自動車運転のプロだからだ。

そうしてその安全性をタクシー利用者が最も重視しているからだ。(*1)

ライドシェア問題でも安全性を疑問視している人が多く、ボクたち業界もそれをタクシーのアドバンテージとして考えているのならば、事故を起こさないことこそが業界を守ることであって、国の規制にしがみついてデモをするぐらいでは、いつかはタクシー業界が消滅する。それぐらいの覚悟をもったほうがいい。それぐらいのことは考えたほうがいい。

タクシーは一般車よりは安全であるにちがいない・・・。なんてことは妄想にしか過ぎない。事故に限れば、全自動車の倍近い事故を起こしている。(*2)

タクシーと全自動車の交通事故増加の推移グラフ

「タクシーと全自動車の交通事故増加の推移」(*2)をグラフ化してみた。タクシーの事故は全自動車と比較すると圧倒的に多い。「走行距離が長いので事故も多い」なんて言う人もいるが、そうではなくてとにかく多いのだ。

「これじゃあ、白タクを解禁してもらったほうが安全」という白タク解禁論者の論拠にもなりかねない。(いや、ボクだってそう思っている)

タクシーの事故の増減と2002年の規制緩和を関連付ける人も多いのだけれど、実はそうではなくて、その前から増え続けていたのだし、それはもうひとつの業界の人が好む「タクシー運転手の年収」という関連性にも乏しく、ただ岩盤規制の上にあぐらをかいて殿様商売をしていただけで、なんら事故に対して効果的な対策をしなかったから、なのだ。規制緩和され、業界全体が危機感を抱くようになって、事故や違反、接客に対して普通の思考(例えばコンビニチェーンがやったような)をするようになると、事故が減少傾向になった、そう考えられる。(そうみんな読み取っているのだけれど、中の人たちは「緩和」と「年収」で思考停止している)

あるいは「雇用(の受け皿)」なんて大義名分を持って世間を脅していた業界の甘えの構造が事故を減らせない原因のひとつだったに違いない。(この脅迫はどの業界も同じなのだけれど、これも思考停止させる要因だろう)

そう、ボクたちが事故を起こしてはいけないたったひとつの理由は、安全こそがボクたちの最大の優位性であって、それを顧客が最も望んでいて、それが業界の存続を握っている、要するに、安全な移動=タクシーなのだ。それがなくなれば、別に白タクだろうがUberだろうが、なんだって良いのだ。

ということを早朝に考えながら、自戒している。なによりも、事故なんてのは誰も幸せにしないからね。本当はそれが、たったひとつの理由なんだろうけれど・・・・・・、でも、でも、自動車メーカーは喜ぶか?そこの労働者も喜ぶか。それに経済っていう怪物もか。巡り巡って消費者という称号を与えられたボクたちも幸せになるのか・・・・・・。

交通安全週間かあ。やはりボクたちは、怪物に操られている、のかもしれない。

さてと・・・。

(*1)「タクシー革新プラン2016」(新しいタクシーのあり方検討会)のアンケートより
(*2)自交総連データ集

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