さよならを言えない火曜日の午後
2007年3月13日
「○○さんですね、荷物をまとめて来ていただけますか」
入社研修2日目、火曜日の風景。今日も何人、いや、何十人かが田中和風寮を後にしたのでしょうね。
健康診断、特に血液検査で不合格になる人たちは、寮事務所に呼ばれて不合格になった理由を聞かされる。多くの人はその日のうちに豊田市を去って行く。
トヨタという選択をした時点では、まだ希望を残していたのでしょうが、一瞬にして絶望と変わる。その瞬間、もうほとんど泣き出しそうな顔、苦痛に歪んだ顔、信じられないといった顔、苦笑い、やり場をなくした憎しみの瞳、逃げ場のない怒り…。
あの瞬間、帰る人びとの背中を見送りながら、多くの人は安堵の溜息を漏らす。笑い声も聞える。合格したことへの喜びは、これまで、そしてこれからの不安と相殺されるのだろうか。
「在りし日のビーチ」 横枕義郎作
土橋駅行きのタクシーがないのも火曜日の午後。
乗り合いで土橋駅に行くなんてことは、近親相姦にも似た不埒なことで、孤独ということだけが唯一の救いなのかもしれない。
健康診断で不合格になった人たちは、誰にもさよならを言えないで、田中和風寮を、土橋駅を去って行くのでしょうね。それは、ほんとうは、自らが出来なかった最善の選択だったのかもしれないし、それは本当は、喜ぶべきことなのかもしれないと、ボクは、あの時、ボクは、そう感じていたのです。
さよならも言えない火曜日の午後。「荷物をまとめて」というその荷物さえも、本当は、もう必要のないものなんだけれど、まとめなければならないというその行為こそが、残酷なことだと、そして、そのまとめた荷物は、きっと土橋駅のゴミ箱に葬り去られる運命だと思うと、ボクは、あの時、ボクは、そして今日も、火曜日の涙を流していたんだよ。
こんにちは。
いや、きっと何人もいたでしょうね。ボクは怯えてなくて、やっぱり「叩いてくれ」ってほうでした。好きで来たわけでもないですから…。どっちかというと、仕事がないし、取りあえず、っていう感じの人も多いですからね。
スパイラルの人も、そんな感じで、どこかで終止符を打ちたいひとも多いかも?
嗚呼、いっその事、俺の肩も叩いてくれ。って思っていたのはオレだけかな?火曜日のあの状況に怯えて過ごすの結構、精神的に正直しんどいですよね。