帰郷・岡山駅泊(12月27日)

夏に糸魚川に行ったときに出逢った少女のことを思い出していた。南小谷駅で出逢った少女もボクの隣の席に座って、そして眠ってしまった。今度の岡山駅新幹線改札口前のベンチでもそうだった。その少女の頭とボクの頭は椅子一個分で、寝息さへもが届いてしまう距離だった。
日本海へ(3)

「冬枯れた路地裏の恋は、いつも寒さに打ち震えていて、ボクが唯一できることは、ただ、ただあなたを寒さから守るだけで。そしてあなたは、それが人生で一番うれしいと、いつもボクに笑いかけてくれる。それがボクたちの全てで、それがボクたちの支えてくれる唯一のもの、ちょうどボクたちが眠っていたベンチの背もたれのような幸せだったよね」なんて、これぐらいの状況で想像するのが、詩人ってもんだろ。って、オレは詩人じゃないから、もっとエロいこと考えたんだが…。あ、ごめん。
まったくあの時と同じような場面で、普通は、てか、これからなにか発展があって、これほど近い距離で寝ている者同士があまりの寒さに「んじゃ、割勘でラブホでも行って寝ようか」なんてことが起きることを想像するってもんだが、まったくそんなことにもならないで。というか、えっと、「なんでオレのところに来て寝るかなあ」なんて思っていたのですよ。
でもね、ま、ちょっとはうれしいというか、「そうか、お姉ちゃんたちは、オレの側で寝たいんだね。そうか、そうか、やっぱり安心するか。前の兄ちゃんも、後ろのおじさんも、どう見ても列車は鈍行だけれど、風俗はファーストクラスみたいな顔してるもんなあ、うんうん、そっか」なんて、思っては、クスクス笑っていたのです。って、ま、ボクたちの前後に座っていた野郎共、許してくれ。
「ま、そのかわりというか、用心棒代として写真は撮らせてもらうぞ」と、パチリ。ま、考えてみたら、この状況で足をボクの頭のほうに向けたとしたら、それはそれでエロいですよね:)そうか、頭を向けるってのは、ま、最後の恥じらいみたいなもんで、「灯りは消してね」ってなもんなのかもしれないな。
と、京都を後にしたボクは岡山駅にいたのです。岡山から先、福山や三原まで行けたのですが、駅泊ということを考えると、大きな駅の方が安心だし、寒くてもうどうにもならなくなった場合にもネットカフェがあるような街でないと不安ですもんね。それに岡山駅新幹線改札口のベンチというのは立派なもので、「いくらですか?」なんて聞いてしまいそうになったんだから…。マジで。
岡山にも福山にも知人がいて、特に福山の知人には昔お世話になって、そしてよく飲んだ仲なのですが、突然「あ、もしもし、オレオレ」なんて言うと、オレオレ詐欺と間違われて、そうしてそんな疑惑を一度抱いたまま会話を続けて「お久しぶりです。今、福山駅にいるんですが、あれだったら少し会えませんか」とか「どうも、お久しぶりです。夕ご飯でもご一緒に」なんて言っても…。
それで、ま、仮にそういうことになって一緒にご飯食べて飲んだとしても、別れる時になって「じゃまたね、どこに泊まってんの?」って聞かれて「駅っす」なんて言うと、いっぺんに酔いもさめて…。「んじゃ、うち来る」と言われて「はいはい、待ってましたよ」って感じで、それも出来ないですよね。
いくらボクが「いえいえ、お家に今からお伺いしても、奥様もご迷惑でしょうし、ボクも明朝早いですから、今回はここで」と言っても、相手がかなり気にしてしまうのではないかと考えると、なかなか気楽に「今、福山駅にいるんですけれど」と電話もかけにくいのですよ。大人になるといろいろと考えるのですよ。
それに、寺やベンチや川原や路上に座ったり寝転んだりしているので、洋服もかなり汚れていたし、下着は最後の一枚を二日着ていたし、手や足や髪も少し汚れていたので、それが気になっていて、それでも「その前にシャワーを浴びさせて」なんて言うのも、かなり変だろうし…。やっぱり大人になるといろいろ考えるのです。
ま、結局ボクは隣のお姉ちゃんの寝息を聞きながら、そして寒さに耐えながら、寝ているような起きているような状態の頭で「割勘が嫌なら、オレが全部出すから、なんならラブホで一緒に寝ないか」なんて…、考えていた、と思うのが普通ってもんだよ。
「ジャパンの純情」かあ、よくそんなこと書くよなあw

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