埼玉県横瀬町のコミュニティバスが3月末に廃止され、デマンドタクシー（事前登録・予約型の乗合タクシー）に切替えるという報道があった。しかし、そのデマンドタクシーも利用しやすいかというと、決してそうではない。そのことについて、令和2年に豊川市で行われた「睦美・三上デマンドタクシー実証実験運行」（第４６回 豊川市地域公共交通会議 資料）をもとに少しだけ考えてみた。

デマンドタクシー実証実験について

実証実験の結果で考えられる問題点として次のことがあげられる。

1. 実証実験場にコミュニティバス千両三上線が運行している
2. 乗降場所が少ない
3. 1乗車500円の運賃
4. 1便（8時30分始発）2便（10時00分始発）については前日20時まで、その他の便については運行2時間前の予約制

以上4つについて考えてみたい。

コニュニティバス運行地域である

1については、地図（図1）のように、デマンドタクシーの乗降場所がコミュニティバスのバス停と同じ場所にある。さらに運行時間帯も近いという設定だ。「コミュニティバスを利用できたのでデマンドタクシーを利用しなかった」という回答が見受けられたという報告のように、この実験の方法と精度自体に問題があるように思う。

図1

乗降場所が少ない

2については、どのエリアも乗降場所が少ない。そして遠い。そのため利用しなかった理由に「乗降場所が自宅から遠い」「降車場所が目的地から遠い」が27％、35％と高くなった。そのことが「自家用車を利用できたから」の回答が46％と最大にした。（図2）

運行路線上周辺の住民には便利であっても、「遠さ」に不便さを感じるため自家用車を利用することになる。タクシーの小型で機動力のある移動性能を活かしきれなかった。すなわちタクシーでやる意味が半減してしまっている、と感じる。

（図2）

運賃が高い

3については、コミュニティバスが200円に対して、その2.5倍の500円の料金は割高に感じる。

利用して良かった理由として「料金がタクシーよりも安いこと」が75％と高い回答率になっている。しかしそれはタクシー運賃と比較してのことだ。同じ公共交通空白地政策であるコミュニティバスとの比較すれば、2.5倍の値段差には違和感がある。（図3）

料金については、エリアが4つあるのならば、もう少し細かい料金設定も必要。たとえば、次の3通りの運賃設定はどうだろう。

• エリア内・隣接するエリア間は200円
• ひとつ跨ぐと300円
• 2つ跨ぐと400円

また、アンケートの「利用してよかったと思うこと」（図3）の回答の理由の75％が「料金がタクシーよりも安いこと」で、「利用したい曜日に運行していること」が75％という回答も、そりゃ「曜日」というくくりで、月曜から金曜日まで運行していれば70％の数字はいきますぜ、旦那。

特筆すべき「利用して良かったと思うこと」がなかった、ということに論結できませんか？

（図3）

予約制という利用方法

4の「予約制」の不便さだが、豊橋市内で運行しているデマンドタクシー「愛のりくん」でも同じだ。その予約制に不便さから利用者が増えない。「利用しなかった利用」の27％が「予約が必要である」（図2）という結果と、「利用して不便だと思ったこと」の50％の人がその「利用には予約が必要であること」をあげている。

（図4）

1回で終わる事前登録には不便さを感じない。しかしこれが毎日、毎回、乗るために「電話→予約」は面倒くさい。ここがボトルネックになっている。（図4）

以上4つの問題点をあげ考えてみた。そして、毎度のことながらデマンドタクシーの

• 「事前予約」の不便さ
• クシーの機動性を活かしきれない運用方法

ここに問題があるようだ。

空白地政策の順番、つまり

路線バス→コミュニティバス→デマンドタクシー

この順番で不便になっている。

このことは、「あったら良いな」とか「あったほうが良いな」ということよりも、「ないからなあ」というネガティブな発想で解決しようとするところに問題がある。

不満出まんぞタクシー

もちろん予算や運行するタクシー事業者の乗務員不足にも問題がある。としても、移動という自由を、予約や時間、つまりシステムで制約していることが問題。だから、不満が出まんぞ、になっていると、思うのだが。

利便性狙いタクシーに　横瀬町。コミュニティーバス廃止へ　２月から無料で実証運行　／埼玉 – 毎日新聞

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