そういえばあれから2年なんだね

あれからボクたちは…。

田原工場配属
その風車が殺伐とした工場の風景に起伏をつけいて、ボクには火葬場の煙突を想像させるものでした。夕方、寮に帰るバスの中から見える夕陽を浴びた風車は、そこで何かを生産しているというよりも、モニュメントのようにそこにに佇んでいるだけのように思えます。
それを見ている無口な期間工の集団は、いったい何を思うのでしょうか。故郷に残してきた恋人のことでしょうか。親や兄弟、嫁や子供のことでしょうか。それは「別離」に関わることであり、その深重な思いや空気によって、多くの人がその風車が煙突に見えているのではないかと考えました。そして沈黙こそが精神的なバランスを保てる方法なのかもしれないと。

2年前の2月、ボクは初めて田原の地を踏んだ。そしてそれはボクにとって2度目のトヨタでの期間工生活の始まりだった。
工場への送迎バスは、いつも、悲しみを押し潰して運んでいるようで、北門第一停留所でドアが開くその時までは、かろうじて故郷のにおいや家族のぬくもり、それに縋ろうとする人間らしさや、過去を振り返る優しさみたいなものが、ボクたちの心の中に押し留まっているように思えた。
始業のベルが鳴り、そしてラインが動き始めると、ボクが誰であるかなんてことをボク自身が忘れてしまうような時間が、タクトタイムという単位で流れていく。標準作業なんていう自己崩壊システムの中にボクたちは没してゆく。ただ、ただ。
風車は、結局、ボクがボクを葬り去るための火葬場の煙突だったのかもしれない、と思っている。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA