哀しみの在りか

月曜日と木曜日が生ごみの日で、少しだけ朝は忙しい。
その2回が一週間の長さ。
月曜日と水曜日と金曜日に水汲みに行くので、夕方は忙しい。
その3回が一週間の長さ。
日曜日は生協の卵の特売日、それが始まりの合図。
その繰り返しが、今のボクの全てだったりする。
その繰り返しが、今のボクの幸せだったりする。
火曜日が資源ごみだったり、水曜日が埋め立てごみだったりする。少しだけ前日は忙しい。一週間に一度だったり、二週間に一度だったりするから、その日を逃すと、たとえば、寒い季節の海の家のシャワー室や、冬枯れた風景の中の蝉の脱殻のように、切り取られて置き去りにされ、ホルマリンの中にぷかりと浮かぶ深海魚の哀しき目で、重量感を増してゆく。
狭い部屋では、同居人ほどの湿度を保ってしまう。デッドロックの状態のまま、次の週、あるいはその次の週を待つことになるのだけれど、それまでにも木曜日や月曜日は当たり前のようにやってきて、そのホルマリンの中で暴れだしはしないかと、何度か、というよりもいつも、そこにいることを確かめようとする、ボクの小心さが、ますます嫌になっては、更に湿度を上昇させていくのだ。
腐敗しないという事実がたとえあったとしてもだ。
……。
昨日の朝のテレビで「格差だと言っても餓死者が出ているわけじゃない」なんて言っていた人がいたのだけれど、毎年3万人も自らの命を絶っていて、その自殺者が現在の雇用問題、格差問題に起因する(直接的に、あるいは遠因する)餓死者ではないと、どうして言い切れるのかと、どうしてそこを考えないのかと、ボクは少し落ち込んでいた。
確かに「蟹工船」の時代とは違う。(その小説がテーマとして扱われていたのだけれど)
過酷な労働が原因で死亡する人や、身体を壊して働けなくり食べることもできなくなる人は、その頃よりかなり少なくなったのかもしれない。だけれど「なくなった」わけではないし、ホームレスとなって、あるいは難民となる人は増加しているのではないのだろうか。そして絶望からの自殺…、そのことを検証もせずに「餓死者が出ているわけではない」と言う。
ボクは、小林多喜二の時代よりも、犠牲者は増えていると、考えていた。
……。
また、今朝のテレビでは「仕事はいくらでもあるのに選び過ぎ」なんてことを、まだ言っている人がいて驚く。九州や東北、北海道、いや大都市圏以外での雇用問題を分かって喋っているのかと、ボクは、考えていた。
「年齢制限」を原則できなくなった求人状況では、確かに30代後半や中高年者層の求人倍率が上昇したように見えるのだけれど、企業が実際に雇用するかと言うのは、また別問題なのだ。求人倍率だけを見て「仕事はある」と言う間抜けな評論家。
……。
と、それでも、ボクの月曜日の朝は、ごみ捨てが最重要課題なのだけれど。
冷蔵庫横のボクの4日分の性格のカスを、それがボクの生活の履歴ではあるのだけれど、それを入れた袋の中に、朝のお茶がらや卵の殻なんかを入れて、封をする。それはあと2時間とか3時間のうちには、パッカー車の中へと詰め込まれては、削除される。
その繰り返しが生きるということなのだろうと思う。
それでも、それでも全ては捨てきれないで、そして捨て忘れたものも多くて、あのホルマリンの中にぶかりと浮かんだ深海魚の哀しき目で、ボクをいつも見ているのだ。ちょうど冷蔵庫うの横で。それがボクの哀しみだったり、哀しみの在りかだったりするのだけれど…。
さてと……。

こうなると、も少しエロい。

6件のコメント

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    まっ外資のやり方その物だな

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    ゴミも有料化の時代なのかもしれませんね。
    >liveintaharaさんへ
    「ところで水汲みって、あの水汲みですか?」
    そうそう、ジャスコとかにある、一回買えば無制限ってやつです。湧水ってなると、遠くなるし…。

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    ごみの日は忙しいですね。
    自分は好きなような嫌いなような・・いえ好きです。ごみの日。
    管理人さんが書いているように自分の抜け殻は捨てたい衝動にかられます・・・いつも。
    毎日・毎朝捨てたい。
    重いごみをステーションに捨てるとすっきり。
    だからごみの日が好きです。

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    うをっ、劇的にエロい。(^u^)
    東北を狙ってますよ、ヨタグループ。
    合言葉は、15万で雇えるですが・・・。
    調査しました。(適当)
    定年退職者は元気ですよ、老後の生活に不安も有りませんし。
    栄豊会ツアーで海外旅行三昧とか、儲かりまんな碧海観光。
    まぁ、この方達は良きヨタ時代を過ごされた方ですからね。

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    こんにちは。
    ライン作業とまではいきませんが、ある程度の決まった作業の繰り返しも、精神衛生上いいもんですよね。
    さて、残りの勤務日数も9日となり、未だに延長が確定なのかどうかわからないままとなっています。
    自分のことなんで、聞けばいいんでしょうけど、なんか、負けのような気がして聞きたくありません。
    そこまでしてトヨタで働かせてもらわなければいけないのか・・・・?
    と自問して卑下してしまうから・・・
    さて、延長雇用通知はいつ来るでしょう?
    賭けにしたい気がする。
    昔と今を比較すれば、今の方がたちが悪いのではないですかねー。
    昔は、それこそマルクスではないですが、労働者よ団結せよ! と搾取する資本家と搾取される労働者という明確な対立するものがありました。
    今は、建前としては労働者の権利は守られていることになっていますからねー。
    だからこそ、雇用状況とか勤労状況の改善とかいうものは労働者の手を離れ、一握りの労働組合幹部とか法律関係者とかでしか扱えない複雑怪奇なものになってしまっているような・・・
    餓死者がいないから昔より今の方がいいんだ、ですか。
    笑えますね。
    アマルティア・セン氏によれば、餓死は民主的な国家では起きにくいそうで、雇用というよりは社会的なシステムの問題だそうですが・・・
    毎年3万人の自殺者。
    そしてこれは誰も統計を取っていないでしょうが、トヨタのライン作業従事者の定年後の平均余命です。他産業の数値と比べて確実に短いはず!
    1週間ごとの反転した生活。毎日毎日秒刻みの同じ作業の繰り返し。マスクが半日で茶色く変わる中での作業。飯を味わうこともできない45分の昼食休憩。休日さえ会社の行事に強制参加・・・
    体を酷使しているのは当然ですし、ボケも早そうだし。
    トヨタマンの定年後の羅病率とか平均余命とか、どこか調べてくれないかな?
    きっと面白い結果になると思うんですけどね。
    組合こそ、そういうことを調べるべきだと思うのですけど。
    ところで水汲みって、あの水汲みですか?
    ジャスコで無料の飲料水を汲む・・・ようなものですか? それとも、湧き水とか?

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    トヨタが唯一ありがたかったのはゴミですね。特に富士見はアバウトでしたから、とても楽でしたし、いつでもゴミが捨てられる。
    こっちに帰ってきて、うっかりゴミを出し忘れると、次の収集までいっしょに暮らさねばならない。
    札幌では、来年から家庭ゴミも有料化されます。なんのためのバカ高い地方税なんだか…。
    北海道そのものが、総「夕張」化してきてますね。
    仕事はありますよ。ただ、総支給額15万では、生活できません。冬は暖房費もかかるし、食料品は愛知より高い。
    だから、みんな仕方なくトヨタに行くんです。
    地元で平穏に暮らせるなら、誰もあんな会社に出稼ぎには行きませんよ。
    誰も何もわからぬまま、この国は荒廃してゆくのですかね…?

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