女性というあらたな調整弁

「女性配送員2万人 ヤマト、主婦活用し5割増」

8月13日付日本経済新聞の一面、最近喧しい「女性活用」という論調にふさわしいタイトルがその一面中央で躍る。この国の成長には女性の進出と活用が不可欠だと、まことにもっともな意見であり、そして誰もが反論できないある種忌諱性を持った話題でもある。

確かに「活用」すれば、企業の効率化は進みだろう。ヤマト運輸のように主婦を大量に投入して自転車や台車で配送を行えばコストは削減されるだろうし、これまたみんなが口を出しにくい「環境」コストも削減される。良いことずくめで、たいそう耳障りも良い。

で、本当にそれは正しいことなんだろうか?

「主婦活用」というならば主婦だけしか採用しないのだろうか?それはそれで「差別」になりはしないかと思うし、逆に主婦だけということにしないと、女性の雇用が今よりもさらに細切れになってしまい、非正規社員を今以上に増加させないかと思う。

要するに当たりの強くなった「非正規」という雇用の調整弁を「主婦」にすり替えがおこなわれているだけの話なのではないかと危惧するのだ。

政府のいう「女性活用」には「人手不足」がセットで付いていて、その「人手不足」には「外国人研修生」なんて人たちもこれまたセットで付いている。女性活用、主婦活用なんて言いながら結局は現在この国の喫緊の問題である労働者不足を解消するために出した(苦肉の)策なのだ。すでに「移民」なんてことも「人手不足」という経済成長戦略の上で語られている。

女性は本当に「活用」されていないのだろうか?「活用」と「優遇」あるいは「差別」なんて意味を多くの経営者は理解できないでいるんじゃないのだろうか?…なんて思う。

週刊ポスト8月15、22日合併号で曽野綾子さんが「昼寝するお化け」にその問題を書いている。

少し引用すると

この政策(安倍内閣の女性活用策)は二つの立場から、自然ではない。現在の日本では女性が社会にでていくのを妨げる要素は何もない、と私は思う。出て行かない女性たちは、別にそんな所に行かなくても、現在の暮らしを好んでいるのだ。(中略)
勤めが好きでもなく、お得でもない女性が、家庭にいる自由が残されているわけで、それが女性の社会進出の妨害の証拠ではない。

国家がわざわざ主婦を「女性活用」なんて美辞麗句を並べ立てて経済活動に参加させてまで企業を成長させる手助けをする必要があるのだろうか。そんなことよりも、キチンと子どもに向き合って、子育てをすることのほうが国の将来のためには重要なことではないのかと思うのだ。

そして「なんでそんなにお金が要るのですか、と聞くと、最大の理由は住宅のローンだという(曽野綾子さん:昼寝するお化け)」、その不釣り合いなローンを組んでまで住宅や車や宝石や洋服なんてのを買わなければいけないボクたちの狂乱の消費スタイルこそが問題の本質であって、成長しなければならないという経済構造に疑問を抱かなければ、いつまでたっても国家戦略、(経済)戦争のために国民が犠牲になる。

「生む道具」に「雇用の調整弁」も加わって、いよいよ女性が道具化するってことに、女性自身が気がつくべきで、気がついている女性なんてのはもうすでに「活用する側」にいるってことなのだ。そして多くの女性はヤマトの女性挺身隊みたいなことをやらなくても、もっと人間的に労働者的に働いているってことなのだ。

というかそもそも「女性活用」なんてこと自体おかしくないか?ま、せいぜい活用されてくれ。

ヤマト、女性配送員5割増の2万人 主婦を戦力に:日本経済新聞
ヤマト運輸は配送の効率化に向け、女性配送員を今後3年で5割増やし2万人体制にする。3~4人がチームを編成し荷物を届ける仕組みを新たに導入、ドライバー単独での配達から切り替える。

伊那谷

2件のコメント

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    ようするに、消費五段活用ってところでしょうね。

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    今日の一句
    「活用って サ行五段じゃ あるまいし」

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