期間従業員を積極登用なんて提灯記事にこの国の終焉を思う

「雇用の調整弁」として非正規雇用が存在するなんてことを言う人がいるのだが、この国の実態は調整弁ではなくて調整なんてしないただの廉価な使い捨ての労働力という位置にある。

生産量によって常に増減が行われて、その労働力不足を補うために期間工や派遣社員を一時的に雇用するということが、本来の調整弁という意味なのだ。それがいつのまにか、例えばトヨタ自動車などは一時的ではなくて常に数千人の規模で非正規労働者を使用していて、季節的に調整するどころか、奴隷化しているというところに問題があるのだ。そのことは何度も書いてきた。

期間工、季節工、あるいは出稼ぎ、そう呼ばれていた時代は労使共、利益が一致しこの国の発展に有効作用していた。農閑期や一次産業従事者が一時的に秋から春にかけて繁忙期の企業で働いていたのだから、それは現在のように国家全体の雇用問題に悪影響を与えるどころか、農水産業、林業なんて一次産業の保護にも繋がっていたし、地方の、例えば過疎化や少子化の防波堤にもなっていた。出稼労働者援護対策という施策もあって、ボクたちの雇用、いやそれどころか、「非」なんて呼ばれることもなく人権が守られていたのだ。

常時数千人も労働力が足りない企業がどこにあるというのだ。その足りないという数千人(あのリーマン前は一万人規模だ)を調整として一年中使うということが、本当に許されるのか、という企業モラルを問うているのだ。

その数千人のうちの100人を正社員に登用しただけで「積極登用」になるのだろうか?100人どころか、あのリーマンショック後でさえ1000人は調整弁として非正規雇用を使い続けていたのだから、もうそれは調整弁ではなくて、ただの廉価な使い捨ての労働力なのだ。

正規社員の雇用を守るために、非正規社員の人権が切り捨てられてゆく。その労働力の二極化こそが、実は過労死や過重労働の問題の本質だということには触れないで、ただただ「調整弁」という耳障りの良いコトバで労働者は恫喝されている。「雇用を守るために」、経営側だけではなくて、組合もそのコトバを使う。そして非正規社員を雇い、残業を行い、中にはサービス残業という忠誠心をもって賃金コストに貢献する。正規雇用を守るために、同胞が切り捨てられても良いなんて思うようになったこの国の国民のモラルを問うているのだ。

派遣切りや雇止めの贖罪も済まないうちに、また人手不足と言いながら今度は外国人労働者を調整弁として使おうとする国家と企業。そしてそれを煽るマスコミ。

実は企業の利益のために、廉価な使い捨ての非正規社員や外国人労働者が不足しているだけで、企業はせっせと内部留保を貯めこむ守銭奴となってしまって、その金欲しさに為政者も「おぬしも悪よの~」と越後屋よろしく悪政を行っているのがこの国の実態で、マスコミという陳腐な存在は、そのおこぼれを拾うために提灯記事を書くだけの飼い犬に成り下がってしまっている、ということだ。

国民が、実は、調整弁とされていて、そのうち国家のためには欲しがりません勝つまでは、なんて簡単に言ってしまうようになる。もうすでに経験しているのだけれど、また歴史は繰り返されようとしている、そうボクには思えるんだが。

トヨタ、期間従業員の正社員登用5年ぶり100人超: 日本経済新聞

台風一過

5件のコメント

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    ついでに、労働組合も、ですね。

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    さといもさん、どうも。
    いるにはいるでしょうね。
    ただ、評論家や企業家が労働問題という文脈のなかで「非正規と言う働き方をしたい人がいる」ということを言うのは間違っているのです。

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    「非正規労働者」に必要以上にこだわる方が居るのも問題なような気がします。
    勿論皆が皆正規労働を希望しているとは限りませんがどういう方向に持っていくのが最大公約数なのかは難しいです。
    出稼ぎと呼ばれていた頃に追加しますと当時は今よりかなり手取りがよかったようなので債務の返済や開業資金といった手っ取り早く稼ぐ意味でも利用価値は大いにあったと思われます。
    また募集がなくなったらなくなったで何で募集しないんだ?どんな形でもいいから雇用を生み出せ!等と苦情が入る事もあるらしいですし・・

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    dさんへ
    どうも。リーマン前のあの賑わいはなんだったんでしょうね。野依寮なんてのがその遺産として残っていて、なんとなく懐かしかったりします。

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    リーマン前にギリギリ若者の端っこに引っかかってた者逹は何を思うのか
    そのうちの一人であるワタクシは鼻から溜息

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