ナツガキタ

キミとボクがウラブレた部屋でイチャイチャと愛を確かめ合っていた午後にも窓の外にはキチンと夏が来ていた。夕立の生臭いニオイとともに夏が来ていた。そのニオイはムザンにもその夕立によって叩き落された花びらの死臭で行き場を失くしてドス黒いアスファルトに今度はその居場所を定めていた。ちょうどボクたちの混ざり合った粘液のニオイだったりちょうどボクたちのフクロコウジの愛に似ていてなんだか哀しい。

閉ざされたカーテンの薄暗い空間の中でボクたちは遠くに夕立の音を聞いている。26℃に設定されたそのウラブレた部屋は一年中キミのいう「コイビト」というボクたちの関係とそとの季節、それだけではなくセケンあるいはチツジョあるいはジョウシキなんてものとは絶縁関係にある。とにかくボクたちはここにいる間は「コイビト」なのだ。季節に関係なくここにいる間中「コイビト」なのだ。

キミが部屋を出てゆき階段を下りる。ボクが窓を開けベランダへ出る。ちょうどビルの隙間に夏の衣装のキミが見える。ほんの1秒ほどキミが振り向く。辺りはすっかり夏だ。ウンザリするほどの夏だ。ボクはその夏を避けるように急いで部屋に飛び込む。まだボクたちのニオイが残っている。

ナツガキタ
花びらを落として憎し夏の雨(笠山)

4件のコメント

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    キカン子さん、どうも。
    日焼して痛い。
    スガシカオさんもカタカナを使いますね。「夜空ノムコウ」とか。名前もか。カタカナって、微妙に違うポイントを想像するかな。

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    なんだかスガシカオのような世界観ですね。

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    前田2丁目さん、どうも。
    「ウロボロスの偽書」は知らないんだけれど、タマゴボウロは知ってる。
    う~ん、読んでみたいと思わないのは、きっと1回で理解できないから。
    最近は仕事がらみの本しか読まない/読めないのが残念です。

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    あ、どうも。毎度(2回目)おなじみ前田2丁目です。「ナツガキタ」を読んで、ちょい懐かしい記憶がreplay.「ウロボロスの偽書」ってご存知ですか?著者は竹本健治。デビュー作の「匣の中の失楽」は“作中作の中の作中作”っていうのか、1回読んで理解できたら作家レベルだと思います。僕は3回目でやっと落ち着けました。話が前後しました。「ウロボロスの偽書」はとんでもないです。読みたくなったでしょ?あ、ひょっとして知ってる?

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