ロイヤルリムジン社の全員解雇について

4月6日、東京の法人タクシー、ロイヤルリムジン社が事業休止し、全員解雇を発表した。ネットでも話題だ。

社員にあてたメッセージには

この度、政府より緊急宣言が出されることになりました。それに対して、当社は生き残りをかけ、一旦事業を休止することを決断しました。
具体的な方策は現場より説明致しますが、混乱の中少しでも早く、皆様が円滑に失業手当をもらえるために決断した次第です。また、政府からの30万円の給付金もしかりです。
タクシー事業の休業補償は歩合給と残業の給与体系のため、失業手当より不利なためこの選択をしました。

とある。

タクシー会社ロイヤルリムジン コロナ口実に退職強要 しんぶん赤旗
コロナ口実に退職強要/国制度を活用し雇用守れ/自交総連が要求

失業給付のための解雇は正しいのか

ネットでは賛否両論、中にはこの「英断」に「涙する」人もいる。

レイオフ(一時解雇)的なものなのだろうか?「一旦事業を休止する」というだけで、再開の目途さえ立っていない。このコロナショック次第では、1年以上の長期戦になることだって想定できる。

次に「皆様が円滑に失業手当をもらえるために決断」した、ということなのだが、雇用保険の被保険者だった期間が1年未満だと90日分、1年以上5年未満だと90日分(45歳未満)〜180日分(45歳以上60歳未満)と、5年間勤務した人でも、最長6か月しか支給されない。

「政府からの30万円の給付金」も、貰えるのか貰えないのか分からない「混乱の中」にある。

途中入社の多い業界なので、おそらく180日分までの人が大半だろう。そうなると、円滑に失業手当をもらったとしても、途中で息切れをしてしまう。そのあと、生活保護でももらえというのだろうか。

タクシー事業の休業補償とは

そして多くの人が誤読している「タクシー事業の休業補償は」とは、「タクシー業界」という意味ではなく、あくまでもロイヤルリムジン社の母体、株式会社アイビーアイの中の「タクシー事業」ということだ。「歩合給と残業の給与体系」だけではなく、労働時間×最低賃金を営収0円でも支払っている事業者も多い。というか、歩合給だろうが、固定給+歩合給だろうが、給与体系に関わらず、労働時間分の最低賃金を支払うのは労働基準法で決まっている。

タクシー運転者の最低賃金 厚生労働省

要するに「(ロイヤルリムジン社の)タクシー事業の休業補償」が「失業手当より不利」なのは、「歩合給と残業の給与体系のため」ではなく、失業給付というのが、離職日までの6ヵ月間の賃金(賞与除く)の合計を180で割った数字(賃金日額)の50〜80%で、上限8250円という規定があるので、休業補償として支払われる基礎日額(直前3か月間にその労働者に対して支払われた金額の総額を、その期間の歴日数で割った、一日当たりの基礎賃金額の100分の60以上にあたる金額(「賃金」には、臨時的支払われた賃金、賞与など3か月を超える期間ごとに支払われる賃金は含まれません)よりは低くなる(人がいる)というだけのことなのだ。

休業補償の計算方法を教えてください。|厚生労働省

失業給付より休業補償のほうが高い

一時帰休させて休業補償をもらうほうが有利になる人もいるというのが事実なはずだ。おまけに東京のロイヤルリムジン社だ。地方のタクシー運転手とは違う。どちらかというと休業補償 > 失業給付という人が多いはずだ。

また、一時解雇して再度雇用するにも、いくらタクシー運転手がジョブ型の職業だとは言え、一度解雇した人たちの持つ職能でなければやっていけない、ということではない。タクシー運転手がその企業特有の技術を有しているとは言い難い。それは「業界内の転職」が多いことを考えればわかるはずだ。

会社のために解雇

整理解雇とどこがどう違うのだろう・・・。というか、解雇だろ?それも早すぎる決断。乗務員のために、なんてことではなくて、グループの生き残りのため、だけのように感じる。

このコロナショックが長引き、失業給付も終わり、それでもその「約束」をあてにして待ち続けるのだろうか?それとも、失業給付が終わった時点で再雇用するのだろうか。そうだとすれば素晴らしいことだ。でも、事業再開前に再雇用して、どうやって賃金を支払うのだろうか?再開ということにして休業補償を支払うのだろうか。雇用調整助成金をもらうつもりだろうか?

現時点で考えられる正義は、雇用を継続し雇用調整助成金を利用し一時帰休を行い、休業補償を支払うことだ。その休業補償が失業手当よりも不利ならば、その不利の分を会社が補てんすることを選択することだ。簡単に一時解雇されたんじゃ、オレたちは困る。これからどれほどの雇用状況が悪化するか分からない時に、解雇されるということがどういうことか。

ロイヤルリムジン全員解雇の影響

これが許されるのならば、全ての業種で、全ての事業者が、休業補償が失業手当より不利ならば解雇していい、なんてことになってしまう。派遣切りや雇止めなんてのは、やっていいことになってしまう。

どうか、ロイヤルリムジン社が、今回解雇した人たちの失業給付が終わった時点でなんらかの方策を行って彼ら/彼女らの雇用と生活を守ってくれますように。

そうして、この解雇の風潮が全国のタクシー会社に広がりませんように。

ロイヤルリムジン社の全員解雇について(2)
ロイヤルリムジン社の全員解雇について(3)

一時的には「失業手当より不利」かもしれないが、失業保険って #倒産 解雇でも、加入時期が1年未満だと90日、最長でも330日だよ。失業が長期になればなるほど「休業補償より不利」になるんじゃないの?

 

この時期、辞めて他社に転職も難しいよ。
本当は、休業補償=失業手当分+会社補償が吉

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