冬装備、猫カイロ(37日目の2)

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延命寺を13時10分に出発した。雨はもうほとんど降っていなかったし、晴れ間も見えていた。それでも風景はまだ雨の中にあった。

延命寺前から遍路道を通り、国道11号線に出たところでそのまま国道を歩いた。遍路道はその国道に沿って続いている旧道、そして松山自動車道と平行して走っている道路がもうひとつの遍路みちだ。その2本が四国中央市、伊予三島の三島公園で繋がる。ボクは伊予寒川のまで11号線を歩いて、ファミリーマート寒川西店に寄った。15時05分。2時間ちかく歩き続けた。天気が良くなると湿気が身体にまとわりついて汗となっていた。

ファミリーマートから旧道に入り寒川小学校、寒川郵便局を通る県道126号線を歩く。ひよけ大師経由でAコープに進む遍路道を通り自動車道の高架下を抜けた。三島公園、そしてその先にある戸川公園に着いたのは17時00分、もうそこまで夜はやってきていた。

戸川公園の東屋を見つけるとそこに向かった。ひとり、遍路がすでに座っていた。そして「こんにちは」とどちらからとはなく挨拶をする。見るとまだ若い青年遍路だった。「雨上がって良かったね」と言った。「そうですね、ほんと道がぬかるんでいてどうなるかと思いました」「って、どこから?」「あ、ぼく、逆打ちで、今日は雲辺寺から来ました」「そうなんだ、山をふたつ越えたってことか。大変だったね」と話をした。

伊予三島、戸川公園にある東屋のベンチとテーブルとボクの荷物

(伊予三島、戸川公園にある東屋のベンチとテーブルとボクの荷物)

「ここは野宿禁止らしいんですよ」と青年が言った。「その先に看板が立っていて書いてました」と続けた。「え、そうなんだ、どうするかなあ」と少し考えたけれど「ひと晩お願いするか」とボクが言うと「そうですね、もう動けないし」と青年が言った。

青年は食料を持ってないらしくて、近くのコンビニまで行く体力もないということだった。ボクは寒川のファミマで買い物をしていたので、十分ではないにしろ持っていたのだけれど、明日の三角寺、椿堂という山越えに必要だった。

青年はそこから2キロ先のコンビニがとても遠くに思えたのだろう。そして戻ってきて、さらに同じ方向に明日向かうとなると、6キロの行程が無駄になる。そういう気持ちも分かっていた。ボクはピーナツを一袋接待した。「これで500キロカロリーだから、そこの自販機で缶コーヒー飲めばひと晩は大丈夫だよ」と言って渡した。青年は何度も頭を下げた。それからボクはチョコッチプパン8個入りとプロテインバー1個を、青年はムシャムシャとピーナッツを食べて夕食を終えた。

猫が1匹いた。青年はその猫を「今夜のカイロが来ました」と撫でていた。その通り、その猫は一晩中彼の寝袋の中にいたようだった。夏用の寝袋だったので、どこかで買おうと思っていると話していた。まだ始まったばかりの彼の旅の装備にしては、すこしばかり軽いように感じた。これから本格的な寒波がやってくるのだから。

18時30分までは憶えていた。それからどちらとも疲労困憊していたのだろう、いつの間にか眠りに落ちていた。それでも何度か目がさめたのだけれど、静かな公園の夜と1人ではないという安心感からか、いつもよりは熟睡できた。

三角寺への遍路道から見える伊予三島、三島川之江港

(三角寺への遍路道から見える伊予三島、三島川之江港)

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